回想①


 学生のころから、野郎は不謹慎なジョークが好きだった。


「めっちゃ雑談なんだけどさ。海洋哺乳類を保護する団体の人たちって食べていいのかな?」

「は? 食べる? 人を? いいわけなくない?」

「や、あいつらの言い分って、頭のいい生き物は食べちゃダメ、じゃん?」

 イルカやクジラなどの海洋哺乳類には知性がある。知性のある生き物を食べるなんて野蛮だ。確かにそういう言説を聞いたことがあった。

 頭のいい生き物は食べちゃダメ。

 つまり言いたいことは。

「頭のいい動物は食べちゃダメ、つまりバカなら食べていいってことか? 団体メンバーはバカだから食べていいってことか? ダメに決まってるだろ!」

 叫んだ。

「クジラとかイルカとか、陸の生き物だととか、自分が飼っている個体を食べるのが嫌ってのはわかるんだけど、種としては別に食べてもよくない?」

「お前わんわんのこと犬畜生って呼んでるのか?」

「……わんわん?」


 そのあとすぐ野郎は二個下の女子高出身の女の子と交際に至ったので「お前に引っかかるような一女はバカだから食べていいぞ」と言いゲラゲラ笑った。


 最悪なことに、野郎と笑いのツボは同じだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る