夏を割る
@mimicmimi
第1話
空をすすむと、夏があった。
たまらない夏が、がんがん鳴る耳から切り取られる音と、水たまりにうつる雲によって伝えられている。それがわたしの、夏だった。
まだ雨に濡れた道を歩いていく。トラックの轍は徐々に流されて、原形をうしないつつあった。舗装されていない砂の道の真ん中に、空を仰ぐ蝉が転がっていた。
わたしが一歩踏み出すと、そのたびにさり、と擦れて地面がきしむ。
足裏に、砂粒が動く感覚がある。泥から脱した砂粒たち。ふくらはぎに飛び散って、歩いているうち、徐々に乾いて落ちていく。
道は真っすぐに何マイルも続いていて、轍もまたずっと遠くまで伸びていた。
雨はあがったばかりだ。徐々に水を締めだしていく砂の道。
道の端は依然として濁った泥水がたまっており、暗い森に流れていた。
なにかはじまる音と確信だけそこにあった。
夏を割る @mimicmimi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夏を割るの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます