第81話 出資
翌朝になり、本日は通信ラインの工事の最終日だ。おれも工事に立ち会いたかったが、現実世界側の資金調達は喫緊の課題なのだ。なので、現場をクマイと熊村さんに任せたおれは軽トラで勇者の泉から現実世界に戻り、
朝早く出たので渋滞にぶつかることも無く、無事に
事前に電話した際、「パワーポイントでのグダグダした説明なんか要らないから、書面にまとめてこい。」と言われていたので、おれとクマイの作ったパワポの要点を取り出して再構成した書類を作った。確かに現実世界の人間に「鉄道とは何か」の説明なんか必要ない。「計画の概要と採算見込みをしっかり紙に落とし込んで来い。」とも言われたので、おれはこれまで作ったパワポを、遅くまでかかって紙に改めてまとめたのだった。
ドアをノックすると、「入れ。」という声がした。緊張した面持ちでおれは
しばらく無言で
「クロイ… おまえ、いい仲間を持ったな。」
意外な親父の言葉におれはびっくりした。
「この企画書の中の、技術部分とか、あとはマーケットリサーチの部分は、お前ひとりでは出来ないだろう。ひとりで出来る事、ひとりの能力には限界がある。だから、信頼できる仲間を手に入れてそれを補う事がビジネス成功の秘訣のひとつでもある。」
「お前は、ひとりでは出来ないことに気づいて、ちゃんと信頼関係のある仲間を頼ったんだな。それは本当によくやった。必要なだけ出資してやる。利息と期限は気にしなくていいから、かならず返せよ。」
おれはさっきからの緊張がとけて、ヘナヘナと
「また、ドヤされるんじゃないかと思ってきたんだけど、あっさり承知してくれたんで逆にビックリしたぜ…」
おれは、以前にも不動産事業とか、ドングリ食品工場の新設とかの事業を考えては
「
「…………………………。」
しばらくの沈黙のあと、
「それは、お前が最初から俺の出資を当てにしてきていたからだ。」
「親族で借りた金で事業をする場合、どうしても、失敗しても許してもらえるという「甘え」が残ってしまう。それが、事業を失敗に導く原因となる。今回、お前はもう異世界で他人から出資をうけて、責任をもって事業をやる腹をくくってるだろうし、成功させる責任も負っているわけだ。お前がそういう成長を見せたから、それならばいいだろうと思ったんだ。」
「………そうだったのか………。」
おれは
「それに、さっきも言ったが、どうもお前は良い仲間を見つけたようだ。だったら、お前だけじゃなく、お前とそのお友達を応援したいと思ってな……。」
「ああ、クマイはもちろん、異世界や現実世界のやつら、神様から死人までいい奴らが山ほど集まってるぜ。鉄道が完成したら完成式典をやるから、
「ああ、楽しみにしている。そう決まったら
「おう!!」
おれは力強く叫ぶと、
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