第80話 道床
「北にある、北砂漠貨物駅と、整備工場の役割について教えてください。」
熊村さんから質問が出た。
「日中に環状線を周回した列車は、夜になったら北砂漠貨物駅の付近に作った留置線に引き込んで待機させます。そうしたら、異世界貨物線とローレシア環状線の間のポイントを開いて、現実世界からの貨物列車を通すことにします。夜のうちに各駅で荷物の積み下ろしをして、朝になったら貨物列車は現実世界にもどって、そこで新たな荷物を積み込む形にしようと考えています。」
「なるほど。」
「魚介類など鮮度が重要な貨物については、ローレシア環状線の旅客列車に貨物車を連結することで、日中の輸送も可能になります。その場合は北砂漠貨物駅で荷物を積みかえて、異世界貨物線で現実世界に運ぶことになります。」
今の説明を聞いて、ボクが整備工場の役割を説明する前に、クロイさんがさらに質問をしてきた。
「と、いう事は最低限モーターカーは3両必要ってことだな?」
ボクは整備工場の役割とも関連するので、まとめて回答することにした。
「そうです。ただ、貨車や客車の入れ替え用の機関車や、整備の事を考えると、できれば5~6両は確保したいですね。そして、そのモーターカーの整備をするために、北砂漠の整備工場が必要となってきます。ここには天井クレーンを備えた建屋を立てて、モーターカーの分解整備を可能にします。現実世界側に作ろうか悩んだのですが、用地取得費用が必要ないドラクエ世界側に作った方がいいと判断しました。」
ここで、ボクは工事面からいくつかの懸念点を説明する必要があった。
「実は、工事するうえで難しそうな場所が何か所かあります。まずはリリザ駅の東の「難工事予想地域A」です。基本的に岩山は避けて計画したのですが、この場所には毒の沼地があり、その南をとおすと線路が大きく曲がってしまってスピードを落とさなければならなくなります。だから、ここは思い切って岩山を崩すことにしました。」
「クマイ、崩した岩はどこに捨てるんだ?」
「砕石にして、
「なるほど、そいつはいいアイデアだ!」
鉄道の
「ですから、この岩山は優先工事区域で、重機を入れて早めに崩してしまいます。」
「出来るだけ自然には手をつけたくないが、ここは仕方ないな…」
そして、ボクは続いてもう一か所の難工事予想地域について説明した。
「もう一か所の「難工事予想地域B」は北の丘陵地帯です。岩山ほどではないでしょうけど、区間が長いので早めに重機を入れて
「今度、私が実地で歩いてみて、油圧ショベルが何台必要か見積もってみますよ。」
「熊村さん、ありがとうございます!」
しかし、やはり岩山の難工事予想区間Aがボクは心配だった。どれほどの硬さで、どのくらいの時間で崩せるのか予想がつかないからだ。
「岩山については、削岩機などを投入してやってみるしかないのですが、正直不安が残ります。もし予想外に崩しにくかったら計画が大きく狂ってしまいます…」
「キイキイ!キイキイ!」
予想外の人物(?)から意見があった。ボクはスライムさんにそっと手を当てて、話を聞くことにした。
「岩山の構造や、鉱山や鉱物の専門家を知っている、ですって!?」
ボクは驚いて声をあげた。クロイさんもビックリして声をあげる。
「マジか、名前はなんていうんだよ!」
「お名前は、メタルスライムさんと言うそうです!!」
なんでも、スライムさんの友人で、自分自身が液体金属でできているくらい鉱山や地中の資源に詳しい人物(?)ということだ。
「じゃあ、明日、僕がスライムと車で話をしに行ってみるよ! ちょっと出番少なくてフラストレーション溜まってたし、ちょうど良いかな! ただ、
さらっとメタ発言を紛れ込ませながらウサギさんが協力してくれる。
「さすがクマイだ! 多分これなら親父も納得してくれると思うぜ! 既に蕎麦やヤマイモ、海産物なんかの現実世界への輸出品も
クロイさんも喜んでくれて、ボクも嬉しかった。一日中地形図を相手に、ああでもない、こうでもないと頭をひねっていたボクは、ドッと疲れが出たので、自室に帰るとベッドに潜り込んで寝てしまった。
※ バラストとは線路から来る荷重を分散させ、列車走行の振動を吸収する、軌道の狂いを防ぐ、騒音を吸収する等の目的で線路に撒かれる砕石のこと。
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