第6話 役割
改めて見取図と現場地形図をみると、クロイさんの立てた作戦はかなり合理的なことがわかる。犯人は恐らく休憩室にいると推定される。トラクター倉庫側は窓もなく、外部が見えないし、そもそも床が貼ってなく居住性が悪いからだ。そして、南西側の攻撃ルート方面には窓が無く、犯人に
「現状の作戦としては、ウサちゃんが解体ハンマーで南西側外開き戸の
「いや、突入は僕にやらせてもらえないかなっ!」
僕にも考えがあった。もちろん、ローレシア王に救出を頼まれたのは僕だという自負もあるが、なにより大きいのはさっきの銃撃だった。
「僕のロトのウサギの盾は、さっきの銃撃で犯人の銃から発射された22口径ロングライフル弾に耐えることが証明されている。だから、これを構えて突入するのが一番安全だとおもう。そして、ロトのウサギの盾の扱いに一番慣れているのは僕だから、僕が突入する」
クロイさんはしばらく腕を組んで考えていたが、一言で結論を出した。
「よっしゃ、ウサちゃんに任せるわ」
クロイさんと担当をかわり、作戦内容を再確認すると、僕らは研修施設の指揮本部を出て配置場所に移動することになった。
気づけば日は落ちて時刻は19時をまわっていた。僕らは人目につかないように研修所の裏の森をぬけると、目立たぬよう県警が用意したグレーの普通乗用車に乗り、北側からぐるりと現場を大回りして東側の森へと向かった。現場の東側へ到着すると、避難した住民のうち、ある家が警察に協力してくれて、家を現場指揮所として提供してくれていた。既に県警が床をシートで養生していて、土足のまま入れるようになっていた。人様の家に土足で上がり込むことに若干の罪悪感を感じながら僕は指揮所へ上がった。
リビングには突入部隊用の装備一式が用意されており、ヘルメットや防弾ベストなどが並べられていた。不思議な事に、庭には園芸用の黒土がひとやま、こんもりと盛ってあった。
「なにこの
と僕がいうと、クマイ氏が「あ、すいません、すいません」と言いながら土の上で転がり始めた。どうやら夜目にクマイ氏の白い毛が目立つようなので、土をかぶってカムフラージュするつもりのようだ。顔や手にまで丁寧に園芸用土を塗って、仕上がった真っ黒のクマイ氏を見ると、クロイ氏とそっくりになっているので、僕は思わず笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます