第5話 作戦

 クロイさんの立てた作戦はこうだった。大方針としては犯人を制圧し取り押さえ、人質を救出することを目的とする。そのため深夜までまって、クロイさん、クマイさん、僕の3名の突撃部隊が闇に紛れて当該倉庫の南東地点から畑に沿って侵入し、当該倉庫に密かに接近する。内部の偵察を行い、竜王が疲れを見せたところで北西側の陽動部隊のパトカーがパトライトを点灯し、あわせて同じ方向から投光器で照射し犯人の注意を引く。犯人が北西方向に注意を向けているうちに接近し、ドアを破って竜王を確保するということだった。ただし、当該倉庫の西側の研修施設と東側の林に狙撃部隊を配置し、もしも制圧に失敗した場合は場合は犯人を射殺する。


 ところで、非常に大きな疑問がある。


 「ところで、県警のプロの人がいるのに、なんで僕らが突入するの?」


 県警の精鋭部隊まで配置するのに、なんで民間人の僕たちがライフルやけん銃で武装した犯人に対して突入するのか、意味が解らない。


 「うーん、正確に言うとな、この事件は県警の管轄じゃないんだよ。」

 「神奈川県内の事件でしょ??」

 「いや、これはあくまで「ドラゴンクエストの世界」の事件なんだ。ローレシアは県警の管轄範囲じゃないし、王様は都民でも県民でも無いからな。結局、この世界のボーダーラインで一番ドラクエ側の世界に関わり合いがあるのが、俺たちって事みたいなんだ。」

 「なんとご都合主義な!」

 「だけど、これでもオヤジに頼んでさ、県警に最大限協力してもらう事にしてるんだよ。異世界の事件だけど、ほっとくと県内の治安に悪影響がでるしなぁ。」


 納得できるような、できないような説明を受けて、僕は渋々作戦への参加を承諾した。でも、よく考えてみると、もともとは僕の世界の「冒険」なんだから、自分がやるしかないのかな、と思った。


 農機具倉庫の持ち主の協力で、内部の状況はかなり詳細にわかってきた。農機具倉庫は農道に面していて、南東側にトラクターを出し入れする引き戸があり、中にはトラクターと整備用具、農機具などが収納されている。一方、隣接した北側に休憩所があり、中は板の間で灯油ストーブと食器棚が置いてあるそうだ。南西側農道に面して外開きの開き戸があり、外との出入り口はここしかない。トラクター置き場と休憩所は引き戸で行き来できるようになっているようだ。休憩所の北東側、北西側の2か所に窓があり、犯人はここから外部を監視できることになる。


 ※近況ノート どうぶつクエスト:当該倉庫見取図 を参照ください。




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