第4話 現着

 「ねえ、クマイさん、なんでクロイさんは警察にあれこれ指示できるの?」

 「うーん、細かいことはボクにもよくわからないんですが、なんかクロイさんのお父さんが県内の有力者みたいですよ? ぶっちゃけ、少なくとも県下ではローレシア王よりは権力がありそうです。」


 ローレシア王の権威がないと、なんか自分の立場も弱くなったような気がしてちょっと嫌な気分がする。ロトのウサギの末裔と言っても、警察はうさん臭い目で見るだけで、何もいう事は聞いてくれないのだった。まあ、蒲田は東京都内だしな…


 「周りに民家が無いのは幸いですねぇ。」

 「市民への被害は気にしなくて良さそうだな…だけど、遮蔽物がまるでないから近づくのが難しいぜ…」


 問題の農業倉庫は、見渡す限りのキャベツ畑の中にポツンと立っていた。もう少しよく見ようと立ち上がると「パン!」と軽い音がして、僕の持っているロトのウサギの盾に衝撃があった。


 「バカですか!頭を低くしてください!」


 珍しく語気の荒いクマイ氏に怒鳴られて、僕はあわててその場に伏せた。ロトのウサギの盾をみると、直径2センチくらいのへこみがついていた。貫通されなかったのはさすが伝説のロトのウサギの盾だなと思った。


 「この距離で当ててくるか。もしかして、ライフル銃も持ってないか?」


 クロイさんのつぶやきを聞くと、近くにいた鑑識の警察官が、ロトのウサギの盾をピンセットでほじくった。しばらくすると、ポロリと弾丸が出てきた。僕は先祖伝来のロトのウサギの盾に凹みができたのをみて、自分の心もすこし凹んでいた。


 「詳しくは鑑定の必要がありますが、サイズから見て22口径のロングライフル弾ですね。ライフル銃から発射された場合、初速が高く、殺傷力が強いので注意が必要です。」

「めんどうくさい得物えものばかり持ってやがるなぁ。」


 現場の周囲200メートルはほぼキャベツと大根の畑で、東側に屋敷森を挟んで住宅地がある。西側には大きな研修所施設があり、その他は特に何もない。ここら一帯は鎌倉時代から戦国時代にかけては、和田氏の城があったそうだ。


 県警は西側の研修施設の表の電灯をすべて落とし、狙撃部隊を配置した。相手がライフルまで持って乱射して来る以上、もしもの場合は射殺する構えなのだ。この建物は規模が大きいため、会議室を借り切って県警指揮本部を設置した。神奈川県警捜査一課長を本部長として、特殊事件捜査係が投入されることとなった。クロイさんは本部で幹部たちとなにやら喋っていたが、しばらくすると僕たちのところへやってきた。


 ※近況ノート どうぶつクエスト:現場地形及び配置図 を参照ください。

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