第34話 炎の砦

 まぁ、なんとなくわかってたことだ。次の任務先が、炎の砦になることくらい。どうせあのドラゴンがなんか言ったんだろうけど。


 内容は、地震の原因を調べること。そもそもこの国には地震が少ないから、全く設備が整っていないのでそこも私がどうにかするとのことだ。


 しかも今回は兄もホタルもコリンもいないので、マジで一人らしい。最悪、あのドラゴンとドールさんってこと?クソすぎる。


「まぁ一旦行ってやろう。城下町でまずはポーション買わないと死ぬかな…」


 私といえど流石に人間なので、なんの装備もなく行けば普通に考えて死ぬ。炎の砦は基本的にマグマが流れ続けているから、下手したらドボンで死亡。


 毎年数百人の死亡件数を叩き出す場所だ。


「おや、お嬢さん水系ばっかり買うってことは…南の方かい?」


「いえ、炎の砦に」


「人間が…!?あぁ、魔法学園のAクラス様か…気を付けていくんだよ?」


「はい、頑張ります…」


 街中でこうして心配されるくらいには、地獄みたいな場所。行きたくねぇ…


「!ティーナ。あの…炎の砦…」


「任務先になったよ。…ねぇ、この時期に転校生っておかしいとは思ったけどさ、もしかしてそんなにヤバい状態なの?」


 ただ地震が起きるだけなら、わざわざこんな遠いところまで留学する必要はない。けれど、建物が崩れて何人も死んでしまったなら、疎開してもおかしくない。


「…建物の多くは、無事だったんだ。でも、王宮が一番に崩れて…王様が亡くなって、津波が来て…生き残ったのは、その時間に寝てなかった奴だけだった」


「寝てなかった…?」


「最近、悪夢が酷かったんだ、みんな。だから時間さえあれば寝る習慣ができて、そしたらこんなことに…」


「…悪夢?」


 そうだ、私が図書館にいた理由は悪夢が酷かったから。そういえばクラスメイトも悪夢がなんとかって言ってた気がする。


 何故、突然?今は平和で、誰も何も心配しなくてもいいような時なのに。集団で突然悪夢、そんなことがあるのか?


 只事ではない予感がする…


「…わかった。じゃ、行こうか。案内お願いできる?」


「その必要はない」


「は?」


 すると目の前でそいつはドラゴンになり、私を乗せた。確かに、これなら案内の必要はないけれど。


 ていうかドラゴンに乗るの久々すぎる…昔はよく乗ってたっけ…




 うん、ギャーギャー言ってた思い出しかないわ。まだ箒にも乗りなれてない頃だったから高いところとか馴染みなくてずっと騒いでた。


「もう着いた…」


「お疲れ、ここが炎の砦だ」


 そこは酷い惨状だった。一面水浸し。マグマは流れ続けているのに、津波が来たというのがありありと伝わってくる。


 王宮は無惨な形で倒れていて、頭が痛くなった。ところどころ溶岩が固まった黒い岩が落ちており、歩くのも一苦労だ。


「…確かにこれはまずいね。王の代理とかは?」


「ここにいるドールが王女で、一人娘なんだ。ただ、ドールを王にすべきか他の者が就くべきか…まだ決まっていない」


「ドールさんって何歳?」


「18です」


 じゃああと少し遅くこれが始まっていれば間違いなくドールさんが王になっていたはずだ。私の二つ年上…見えないけど。


「わかった。まずは避難指示かな。炎の砦の避難状況は?」


「建物が崩れてたりする者はすでに避難が完了しているが、平民はどうなんだろうか…」


 おそらくかなりお偉いさんなこのドラゴンがわかっていないとなると、多分ドールさんでも理解してないはず。


 まずは全戸回るのかな…探知魔法でいい気もしてきたけど、万が一ってこともあるし行くしかないか。


「ドラゴンとドールさんは西側確認よろしく。私は東行くから」


「ティーナ…一人で平気か?」


「信用ない人と一緒に行くよりマシ。じゃ、よろしく。」


 棘あるよね。ごめん…岩場をジャンプで飛び回り、瓦礫をどかしつつ色々な家を回った。形をとどめているものもあれば、全くと言って跡形もないような家も。


 平民の殆どは逃げられていなかった。ただここで助けを待っていたらしく、なんだか辛くなった。


「助けてください…!このままでは…」


「わかってる。でも私一人じゃ何もできない…とにかく、周りの住民の住んでる場所教えて。あなたはまず西の方に行って緑の瞳をした赤髪のドラゴンに助けを求めて」


「わかりました…!」


 ここはどう足掻いてもドラゴンの場所。私が深く干渉するべきではない。けど、あまりにも酷い惨状を放っておけるほどじゃない。


「大地魔法、地盤改良開始。」


 地面を元に一気に戻す。さっきからジャンプするの疲れるし、見栄えもよくしないと。それと溶岩はどうしよう…どの魔法に含まれるんだ…?


 溶岩ってあれだよね、岩が地中で高温のせいで溶け出てるやつ。岩っていう点では大地魔法、でも熱なら炎…液状のもあるから水魔法の可能性もある…のか?


「まぁいいや。全魔法展開、溶岩移動」


 一体どの魔法が作用したのかは全く分からないが、溶岩はもともとの通り道に戻って行った。あ、そういえば地震についても聞いたな。


「大地魔法展開、地面強化…」



「違うな、これはまだすべきじゃない…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る