第35話 強化魔法
平らになった地面を歩き、他の住居を確認したが、それはそれは無惨な姿だった。時には、大きなドラゴンが倒れていることもあって勝手に動悸が激しくなった。
「ドラゴン、あっちは確認終わった。そっちは?」
「お、こっちもようやく終わったとこだ。あと、途中で岩とかなくなったんだが…あれはティーナが?」
「邪魔だったから減らした。」
「そうか…」
町全体に作用できるまでに進化してたんだなー、私。2年近く魔法使ってないから鈍ってるかと思ってたけど…逆に進化してた…?
ドラゴンに背を向け、地面に手をつく。地表よりもずっと奥深く、そこに意識を集中させる。
なんだろう、これ。めっちゃデカい何かがある…ずっと動き続けて、奥深くに引っ張られていくような…
地震の原因は…おそらくこの地面のプレートのようなものだ。
「大地魔法展開、ユニーク魔法『強化』展開。」
…プレートみたいなのを消去して別の地層を作るべきだったかな?まぁ、取り敢えず耐震性能をつけることに集中しよう。
で、さっさと帰らせてもらいたいものだ。
「なぁ、さっきの…ユニーク魔法ってなんだ?」
「…私と、先代の稀代の魔女様が創造した…どの属性にも属さない、でもどの属性にも属する全く新しい魔法」
「…つまり?」
「…自分で考えてくれる?頭別に悪くはないんでしょ。で、ドールさんはどこ?」
先ほどから見当たらない。というより、この町での存在が確認できない。空に飛んでいるなら確認できないのは当たり前なのだけど。
「確かに見当たらないな。1時間前には隣にいたんだが…」
「まぁいいよ。地面強化はしたし、避難状況もなんとなく確認できた。あとは避難先の決定と…物資調達かな。それと復興支援要請を城に送って…」
「待て待て、なんでそんなに早く考えられるんだ?」
「まぁ昔似たようなことがあったから。いいから近隣の町…できたら三つくらいの避難先見つけてきて。」
「わかった、物資も途中で集めてくる。ティーナは一度戻って城に伝えてくれ!」
さて、じゃあさっさといくか。クリスタルの箒を取り出して跨り、できる限りのスピードで飛ぶ。早く終わらせたいんだ、こっちは。
でもこれ、目乾くな。風圧でもうローブとか気にしてられないし。こういうのどうにかする魔法、あとで考えよ…
「ごめんなさい、緊急の用事があるから開けてくれる?」
「ティーナ様!承知しました、おい!開けろ!」
門番に声をかけると、すぐに扉を開けてもらえた。そんなにすぐ信用して平気なのかねこの国は。
玉座に腰掛けている陛下と、その前で喋る偉そうな奴がいる。…いや、構ってられないね!仕方ないだろ許せ!
「陛下!炎の砦の地震によりほぼ砦は壊滅状態です。現在避難指示を出していますが、復興の目処は全くと言っていいほど立っておりません。支援を要請します!」
久々にこんなに流暢な敬語使ったな。
「なんだね君。魔法学園の生徒か?今陛下は私と…」
そうだった。焦ってローブも外していないんだから普通こんな反応か…違うのはどうせ髪と目の色だけなのにね。
私はフードを降ろした。随分とよく、紫と緑が見えるでしょうね。
「魔法学園Aクラス、首席…ティーナ・エフェクターです。陛下、お願い致します」
「…!?紫の髪…緑の目…首席…?」
あんまりこの肩書きを言うのは好きじゃないけど。こう言う奴らを黙らせるのにはこれが一番効果的。
「…大臣、下がれ。詳しく聞こう、ティーナ」
大臣は何か言おうとしたが、すぐにどこかへ走って行った。王宮で走るのは緊急時以外不敬に当たるんだけど。
「…先ほどの敬意を感じられる話し方も好きだぞ?」
「もうしませんけどね?はいはい、じゃあさっきの頼みます。炎の砦の地中に動く地層が見受けられたので取り敢えず地面強化しておきました」
「動く地層…確かに前からあるとは言われていたな。…で、ティーナ。一体、君はどんな推理をしている?」
「私別に探偵じゃないんですけどね。地震が突然何度もくるなんておかしいと思い、強化をする前に地面を全体的に調べたんです。」
「ほう?」
「…大量の魔力が見受けられました。おそらく、何者かが地面の深くに魔力を流し込み、大地魔法によって揺れを起こしているものだと思われます。」
大量の魔力…私の最大出力の魔力を0.5秒放出した時とほぼ同じ程度だった。かなり驚いた、私の他にあんな力を持つ人がいただなんて…
「…成程、であれば髪色も瞳の色も…かなり絞られそうか?」
「そうですね…髪色は最低でも桃色、瞳の色は金程度あるかと思います」
「…わかった、こちらでも探しておく」
早く戻らないといけない気がする。箒のスピードだと今から戻ったら朝になってしまう。
頭の中で公式を組み立てる。どうにかして、ここから向こうまでの距離を早く…
「いや、違うか。」
「ユニーク魔法『転送』展開。術式、術者共に影響、オープン。」
空に裂け目が現れる。箒でそこまで向かい、ジャンプしてその隙間に入る。もし成功してれば、向こうについているはずだ。
「…うん、成功かな」
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