第24話 大地の精霊

 箒に乗ってまた暫く飛んでいると、やがて大地の精霊の集落と思わしきものが見えてきた。先ほどとは違って焦げついたような匂いはしない。

 でも、あらゆるところの土が土砂崩れを起こしている。

「何これ…なんでここも?」

 火の精霊だけなら、冒険者に見つかって滅ぼされたとすれば理解できる。ただ、大地の精霊は回復もできるし防御特化なのでありえない。

 なんかまた面倒臭そうだな…コリンでもいいからさっさとどうにかしてくれないかな…

 さっきと同じく、衣服が泥まみれになりながら落ちている。拾い上げると、それはドロドロと溶けてしまった。

 汚ったな…でも火の精霊と同じく子供の衣服はないから…いや、分からないけど。それにしたって異常な光景だ…

 土砂崩れが起きているなんて、まるで同族で争ったかのようじゃないか。

 …それか……大体の予想はできる。けれど確証は持てない。もしもこの仮説が合っているなら次の風の精霊は…

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない、よね。大地の精霊の集落は先程とは違って焼け落ちているわけではない。

 なら、証拠の一つや二つ残っているかもしれない。

「にゃあ…ティーナは本当に賢いのう」

「…なんでこんなところにいるんですか、姫様。綺麗な手が汚れますよ」

 突然、何もないところから白猫が出てきた。それは桃色の瞳をしている、ホタルの使い魔であるさくらだ。

 …実体は、王女様なんだけれど。

「ティーナはおおよその検討がついてるみたいだのう、どれ、聴かせてごらん」

「…恐らく、今までの二つの集落は同族同士の争い、などではないでしょう。また、冒険者のせいでもない。そして共通するのは、衣服だけが落ちていた点と、子供がいないこと。」

 私の言葉一つひとつにしっかりと耳を傾けてくれている。ちょっとムカつく顔だけれど。こうして言葉にすると、頭も整理されていく。

「子供を先に逃がせた状況で、火と大地が消えるような現象を生み出せるのは…そして、最初に風の精霊の集落に向かえなかったのは…」

 私は箒に跨った。最後の精霊の元に向かうために。もしこの推理が合っているのなら、風の集落は恐らく大丈夫だ。無事であるはず。

 銀の杖を取り出して、深く呼吸をする。あのバカ、私に面倒なこと全部押し付けて逃げやがって。

 回復したら文句つけてやるよ。絶対にな!?

「では、行ってきます姫様。あ、森の入り口に死体あるので騎士隊に連絡して引き取らせてください。」

 もしかして私が作った泉の話もした方がいいかな…

 まぁ面倒だしいいや。

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