第23話 道中
いくら箒の移動は早いとはいえど、流石に時間がかなり経ってしまった。大体の理由は私の村雨で周りがやばいことになって乾かす時間のせいなんだけど。
コリンが優しくて良かったよ。
「そろそろ休も、コリン。ゾンビみたいな顔色だよ」
「…箒飛ばすのも魔力いるからな…」
「そう?今まで短距離しか飛んでないからわかんないや」
多分私の魔力が無尽蔵なだけだと思うけど、流石に顔色が悪い気がする。なんか赤いような…
「まて、今すぐ降りろコリンバカ!!」
私は勘が悪い小説のヒロインじゃないからわかるんだよ!人の顔見るの好きじゃないからここまで気が付かなかったなんて。まじでごめんなさい!!
「…コリン、帰ったら…?」
「まさか熱出すなんてな…」
と、目の前で倒れる始末。とりあえず持ってきた布に寝かせて、頭を冷やさないと。あと、王都に連絡しないとだめかな…
私があわあわしながら色々とやっていると、後ろから足音がし始めた。一人…いや、二人。なんでこんな時に来るんだよ刺客か?
「誰、そこにいるの。ぶっ飛ばされたくなかったら3歩下がって武器を置いて」
「!」
やがて足音が3歩、遠かった。そして大きな杖を置く音が聞こえた。敵意はない…みたいだけれど。
「…もしかして、精霊姫?」
「は、はい。お久しぶりです、ティーナさん」
おずおずと前に出てきたその人は、銀の髪と銀の瞳を持つ髪の長い人物だった。身長は私よりほんの少しだけ高い。
「久しぶりだね、精霊姫。前見た時より髪と身長が伸びたんじゃない?」
「そうですね…あの、ところでその人は…」
「うちのバカ。熱出して倒れた」
そういうと、コリンに駆け寄って熱を測って額に冷たい布を巻き始めた。助かる、私本当に看病とかできないから。
「…そういえば、精霊姫が消えたから争いが始まったって聞いたんだけど?」
「え?なんのことですか…?」
「あー、成程。外出してたとこ誰かが騒いだってとこかな…」
だとしたら早めに誤解とかないとまずいな。私一人でどこまでやれるかは分からないけど。どうせやれって言われるならもうやらないと。
「すみません、水持ってきます」
「ん、回復の泉はあっち」
するとコリンはゆっくり目を開いて、何か小声でボソボソ言っている。嫌な予感しかしないけど、聞いてやりますか。
「…可愛い…好き…」
「だと思ったよアホ。本人の前で言えよ」
「むりしぬ」
「死ね、一旦」
ん?でもコリンってゲイだっけ。精霊姫って、私が知る限り…男なんだけど。精霊には性別の概念がほぼ無いにしても、精霊姫は世界樹様になるから巫女の役割を担うので女の格好をするのが一般的。
でも、確か彼の性自認は男で…体の構造も男だって聞いたんだけど。
「あの…世界樹様までコリンさんを運んでもよろしいでしょうか?そのほうが回復も早まるので」
「あー、うん。お願いできる?」
あー、コリン。まぁ頑張れ。恋に性別と体の構造は関係ないさ。ちなみに精霊姫も選り好みする権利はあるから無理だと思うけどね。
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