第22話 火の精霊

 歩いていると、足元に突然何かが這い寄ってきた。最近生き物が私をビビらせようと画作しているのかな…

 よく見ればそれは火…が丸まったような謎の物体だった。手のひらで持ち上げてみると、ほんのりあったかい。

 森がちょっと冷えるので嬉しい。

「ティーナ、なんでお前火の玉持ってんだ?」

「なんか近づいてきた」

 羨ましいのかな、でも渡せないなこれ。魔導式小型発熱装置…カイロみたい。でももちろん這い寄ってきたってことは生き物らしくてさっきからなんかモゾモゾしてる。

「それ、火の精霊の長の分身じゃなかったっけ」

「うわ今すぐ地面に叩きつけたくなったわ。あげる」

「いらねぇよ!!」

 流石に可哀想。自我があるのかは分からないけど。…そもそも耳とかあるのかな?魔力でできた生命体なの?

「じゃあなんでもいいけど火の玉、水かけられたくなかったら火の精霊がいるとこまで案内して」

「お前は悪魔か?」

「魔女だよ魔女」

 私の声を聞くと突然飛び跳ねて私の手からするりと逃げた。そしてまたジャンプしながら進む。

「意外と速いなアイツ」

「なんかキモい…」

 箒に乗って追いかけると、やがて集落のようなものが見えてきた。焦げついたような匂いがする。

 案の定、そこには衣服だけが落ちていて、火事が起きていた。

 精霊は死ぬと、体は残らず消えてしまう。だから衣服だけが落ちているらしいのだ。

「火の精霊は…既に滅んでいたのか」

「ざっと見ただけで、50近くは死んでる。でも子供の服が極端に少ないから希望はあると思うよ」

 衣服を拾って見てみても、焼き焦げた跡しかない。これ以上、証拠を掴むのは難しそう。火事は鎮火しておかないと…

「水魔法展開<村雨>レベル20、風魔法展開<バリア>」

 私たちの周りを雨で一気に鎮火させる。服とか、私たちが濡れないようにバリアを作っておくと、現場保存にもなるし。

「高台ってあれか?燃えて登れなさそうだけど」

「…まぁ、箒で浮けばいい話だよね」

「わざわざ来た意味…」

 途中から気づいてたんだけどね。あんまりそう言うこと言うもんじゃないかなって思って。二人で浮いてみると、なんとなく集落の場所は掴めた。それぞれの紋章を掲げてくれてて助かった。

「じゃ、次に近そうなのは…大地?」

「そうだな。っていうか、種類で四箇所に散らばってるのか」

「真ん中は世界樹様があるしね。巻き込みたくなかったんでしょ」

 お決まりは真ん中だと思うけど、実際に世界樹様があるならありえないかな?うん、でもどうせすぐ移動できるから大丈夫でしょ。

「じゃ、そろそろ移動しよっか。」

 沢山の衣服の前で祈っているコリンにそういうと、ゆっくり立ち上がった。平和な精霊の森をこんな風にしたアホは一体誰なのかな…

 

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