第21話 水の精霊

 簡易水源から水を飲んで、また歩き始めた。暫くいくと、精霊の集落が見えてきた。しかし何か、おかしい。

 精霊は精霊でも、水の精霊しかいない。普通はさまざまな精霊が共存しているというのに、何故一種類しかいないのか。

「こんにちは、水の精霊さん」

「ん?あっ、こんにちは。人間のお客人は久しぶりですね」

 そう言って私を見上げてニコリと微笑んだ。水の精霊は青いドレスを身に纏った、水色や青、白や銀の髪色をしている。

 ちなみに瞳の色は精霊は全員銀だ。

「最近この森で異変が起きているので調べに来たんです。何か知っていますか?」

「…実は、精霊樹様のご息女…精霊姫が、失踪されて…」

 精霊姫…それは2年と少しだけ前に私も挨拶をしたことがある。名前はなく、後に精霊樹となる姫だ。精霊から慕われている美しい方だった。

 確か、彼女は…

「そうなんですね…」

「じゃあ、なんで水の精霊しかいないんだ?」

 コリンが水の精霊に近づいて問う。側から見たらナンパかカツアゲだ。すると水の精霊は少しだけ目を泳がせた後に、決心したように答えた。

「精霊姫を連れ去ったのはお前らだろ、とお互いに睨み合っているのです。そしたら水の精霊以外は森にバラバラに…」

 まさか、精霊同士でそんなことが。確かに人間でも起きることだ。気分が悪くなる、同じ種族の争いを見るのは。

「じゃあ第一優先は精霊姫を探し出すことか。その次に他の精霊を見つけて説得する感じかな…」

「え?介入するの?」

 調査だけなら精霊姫が消えたからとだけ説明すればいいのに。なんでそんな面倒なことを…

「そりゃ、可哀想だろ、このままじゃ。それにティーナがついてるなら騎士隊や魔法団より早く解決するだろうしな」

「そーですか…」

 大層な期待をされてるなぁ…嫌な展開になったらさっさと帰ろっと。コリンが言い出したことだし楽勝だね。

「じゃあどの辺から探そうか…」

「あっ、なら北東の方から向かうのがいいと思います。高台があるので…」

「わかった、ありがとう。コリン、この辺守るバリア張れる?」

 魔法式バリアなら流石に張れるよね。それに、他の冒険者とかに殺されたりしたら更に面倒だし。

「オッケー張れたぞ」

「じゃ、ほんのちょっと強化して…行こっか」

 ほんのちょっとの強化と結構な特殊魔法をね。きっと水の精霊たちはこれで安心だろう。

「北東だっけ、高台か…」

「早めに見つけたいところだな。そういえば、森の外は探さなくていいのか?」

「コリンって授業聞いたことある?一般常識以下なんだけど」

 思ったよりアホそう。なんで魔力量も祝福もCかDくらいでバカなのにAクラスにいるのかな…他に何か大きな、それを超える何かがあったのかな。

 ま、埃以下の興味なんだけどね。

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