第二章『幽霊館』
第8話 親友
悪夢といっても、バリエーションがある。例えば忘れ物をする、遅刻をする。お化けに出会ったり、火事に巻き込まえたり水に沈んだり橋から落ちたり。
あとはあれよね、思い出したくない経験思い出すやつ。あれ地味に1番くるものがあるよね。
けど悪夢にくっついて、昔のこと思い出したりするよね?
私、友達がいた気がする…
クズって思うかもしんないけど、これ本当今気付いた。
「てことでキリさん、誰か知らない?」
「友達くらい覚えとけよ…」
休日に食堂で軽く食事をしながらそう問いかけると、正論が返ってきた。
2年も引きこもりしてちゃあ忘れることもあるよね、自分の席とか。それどこの騒ぎじゃないけどね?
「多分金髪の子で、瞳は…青だったと思うんだけど?」
「しかも光の子なのか…」
光の子。それは金髪碧眼に生まれた人の証。闇の子とかもいるらしいけれど、一番人気なのがこの光の子だというのは随分前に聞いた。
「心当たりある?」
「って言ってもなあ、俺寮の管理人ってだけだから生徒の情報なんて全く知らないんだよな。わりぃな。」
「ううん、全然平気。ちょっと森の方まで出掛けてくるね」
町から大きく逸れたその森は、真っ暗だ。ランタンを持ってこなければきっと、大の大人でも帰ってこれなくなる。
けど、この森を抜けると…
「久々にきたなあ…」
沢山の花が咲く丘に出る。日が当たって水辺はキラキラしている。私はこの光景が大好きだ。
白いワンピースのまま、ローブを脱いで寝転ぶ。勿論花は全部避けながら。暖かくて、どうしても眠気が襲ってくる。どうせ人はやってこないのだから、このまま眠っても誰にも怒られない。
「ミャオ…」
「ああ、人はやってこないもんね…」
まさかの猫ちゃんでした。動物は好きだから見つめていると、膝に乗ってきてくれた。自然と口角が上がる。真っ白な猫。
可愛い…!
「さくら〜どこ〜?」
その声に全身の神経が反応する。この声…知ってる。2年前聞いた声だ。…いや、違う。何回も聞いている。
一年前も聞いた。キリさん以外で、たった一人。
「ホタル…?」
「えっ…ティナ…なの?」
金髪碧眼、そしてこの声は間違いなく。私の友達だった、ホタルだ。私の名前を短縮形で呼ぶたった一人の友達。
どうして、忘れていたんだろう?
体に衝撃と暖かさを一気に感じる。抱きつかれたようだ。
「ティナ…!遅いよ、2年も待ったんだから…!」
「ごめん…ホタル。でもごめんちょっと…すごい勢いで肩が濡れていくんだけど、水魔法使ってる?」
「泣いてるの!!」
ホタルがずっと泣いている。すっごい申し訳ない気持ちになってくるから泣き止んでほしいけれど。泣かせた本人なのでどうしようもない。
「ごめんねホタル。もう勝手にいなくなったりしないよ」
「うん…じゃないと地獄まで追い詰めてボコボコにするから!」
「君ほんとに光の子?」
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