392 指名以来 9
キン! キン! キン!
キルと悪魔の戦いが始まった。
「ククククク! どこまで凌げるかな?」
楽しげに笑う羊頭の悪魔をユミカとルキア、モレノが取り囲もうとするがテムジがそれを阻止するために剣を振るった。
ルキアが盾でテムジの剣を受ける。
ガッシーン!
押されるルキアを助けるためにユミカがテムジに向かう。
「ターー!」
モレノがキルの援護に回って攻撃する。
「ロケットランス!」
「フン! 遅いわ!」
悪魔がモレノの攻撃を躱した隙にキルが懐に飛び込み横薙ぎ一閃、悪魔の胴を切り裂いた。
「グワーー! なんてな。ククククク!」
完璧に切り裂いた悪魔の胴がつながっていく。
「ククククク! きかんなあ!」
キルは、反撃を警戒して距離を取る。
「どういうことだ。異常な回復力だ。これでどうだ、 マシンガン爆裂バレット!」
無数の弾丸が悪魔の体を撃ち抜き爆発してボロボロにしたが、すぐに元に戻っていく。
「ククククク! 無駄無駄 」
「クソ! これならどうだ。ホーリーアロー」
キルが聖属性の攻撃を行った。聖なる光の矢が悪魔を貫いた。
「グ! これが痛みか……だがこのくらいでは俺は倒せんぞ、ククク!」
「やはり聖属性の攻撃が有効か!」
「聖槍エターナルルクナバードに出番ね! 私がこいつを仕留める」
モレノのやる気がぐんと上がる。聖槍という言葉に羊悪魔の目に動揺が走る。
「ククククク! いでよ!我が眷属達」
悪魔の背後に暗闇が広がる。そして闇から羊頭の悪魔に似た無数の影が作られる。
羊頭の悪魔が右手で「いけ!」と合図をすると羊頭の影が爪を伸ばして切りかかってきた。
キルとモレノが襲いかかる影悪魔を切り裂いて抵抗するが影悪魔はどんどんその数を増していく。
「ククククク! さあ、切り刻んでしまえ。我が眷属よ!」
「無限突き!」
「千斬剣!」
キルとモレノが襲いくる眷属達を斬りまくる。
「く! 多すぎる」
いつしかキルとモレノは背中を預けあいながら防戦一方の状態だ。
「サンクチャリーフィールド!」
キルの魔法で聖なる領域が発生して急速に辺りを包んだ。光の領域に打ち消されるように、影眷属が消えていく。
「なに! 我が眷属達が!」
「たーー!」
驚く悪魔に向かってモレノが聖槍エターナルルクナバードの突きを入れる。ルクナバードから伸びる光の刺突が羊頭の悪魔を貫く。
「グワーー!」
大きな穴が悪魔の右脇腹にあいている。さっきまで受けた傷はすぐに治っていたのに今度の傷は治る気配がない。羊頭は傷を押さえて後ずさる。
どうやら悪魔は聖槍エターナルルクナバードで受けた傷は治りづらいようである。
「クク! ここは引くことにしよう。聖なる武器を持っていたとは運の良い奴らよ! 引くぞテムジ!」
テムジもユミカとルキアとの戦いを切り上げる。
テムジの隣に移動した悪魔が黒い歪みの空間を作り出しテムジごと中に消える。
「逃すか!」
ユミカが追い縋ろうとするがキルがそれを押し留める。
「よせ! あの空間の中は危ない!」
キルは、以前揺らぎの空間の中に入って悪魔達に攻撃されたことを思い出していた。あれはきっと地獄……悪魔達の住む世界に違いない。
悔しそうに追撃を諦めるユミカが唇を噛む。
「あの向こうは奴等の世界であるか……」
「テムジって奴は、悪魔との契約者のようだな。あの悪魔はこの前のクモ悪魔と同程度か?」
「クモ悪魔の方が眷属がいっぱいだったよ」
モレノは悪魔を倒せなかったことが残念だという表情でいった。キルもその気持ちは一緒である。
「急いで皆んなと合流せねばならぬな」
羊頭の悪魔の出現ですっかり忘れていたが、集合時間がもう迫っていた。眼下の敵兵もすっかり逃げてしまっている。もうここでするべきことはなにもない。
「そうだね。急いで戻ろう」
四人は集合ポイント目指して急ぐ。合流地点には皆んなもう集まっている。
「キル君遅いわよ」
「すみません。サキさん。追撃の成果はどうでした?」
謝りながら各隊の戦果を確認する。
「私達は一部隊を殲滅してきたわよ」
「わしらもじゃ」
サキ達も、ロム達も敵を一隊づつ殲滅したらしい。
「俺たちも敵一隊殲滅した後で、テムジの隊を見つけて多少の損害を与えました。残念ながら殲滅はできませんでしたが……」
「テムジは強かったということっすか?」
「キルさんが手を焼くなんて信じられません」
ケーナとクリスが互いに顔を見合わせる。
「テムジは悪魔付きだったぞ。羊頭のでかいやつが、たくさん眷属を従えていたである」
「そいつは驚いたね! よく無事だったね」
グラが四人に怪我はないかチェックするように観察する。
「これが役に立ったのさ!」
モレノが聖槍エターナルルクナバードを突き上げる。
「へー、さすが聖槍ね!」
「うん。うん」
「やっぱりー、悪ー魔ってー、神聖なーものーに、弱いーのね」
「今度悪魔が出たらマリカに活躍してもらわなくちゃな。結局敵三隊を各個撃破できたわけだから多分四万近くは削れたのかな? 残りは十四〜五万ってところだろう」
キルは敵残存兵力を推測して眉を顰める。まだまだ敵の兵力は大きいと感じたのだ。おまけに敵には羊頭の悪魔までついている。思っていたより強大だなと気落ちする。
「グラさん、敵がチューリンに向かった形跡はないのですか?」
「大丈夫だと思うよ。キル。チューリンに向かう部隊の気配は感じなかったよ」
「じゃあ、また明日、敵の出方を見てからですね」
「そうだね。 向かってくるようなら叩き潰そう」
グラの覚悟に全員が頷いた。
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