391 指名依頼 8
「三人ともテムジは反撃してくるだろうから油断しないで三人であたってくれ! 場合によっては俺も加勢する。それじゃあ空爆を始めるぞ!」
キルが達が近づくとテムジ軍から迎撃の矢が放たれる。三万の騎兵が連射しても届かない高さにいれば問題にならない。十分な高さを飛行するキル達に届く矢をいかけられるのは数人しかいなかった。
ほとんどの矢が放物線を描いて自然落下しているし、時々飛んでくる矢をモレノが槍で弾き飛ばすのでキルに矢が届く心配は無い。キルは一方的な攻撃に入る。
「アトミックインパクト! アトミックインパクト! アトミックインパクト!」
閃光と大爆発、そしてキノコ雲。一気に攻撃は止み地上の兵は逃げることに終始する。予想通りテムジが空を駆け上って向かってきた。
キルは三人に目配せするとまた空爆を繰り返す。
ユミカとルキアとモレノがテムジを迎え撃つ。
「ロケットランス!」
「飛竜権!」
モレノとユミカが遠距離攻撃スキルを使い先制攻撃、だがテムジも弓のスキルで反撃する。
「サウザンドエナジーアロー!」
黒く輝く毛並みのバトルホースは王者の風格を漂わせテムジを乗せて軽々と跳躍し攻撃を回避。ルキアが拡大シールドでテムジの矢を防ぐ。キルも身軽に矢を躱しながら空爆を中止し空中戦に加わることにした。
キル達四人は、相手が神級ということもあり獣人戦の時のように四つの魔法で強化している。『トリプレットスキンシールド』、『マキシマイズオートカウンター』、『グラビティフィールド』、『オートマチックハイヒール』の四つである。
だが、これはあくまで保険的な意味合いだ。敵の攻撃を気にせず受けて良いわけではない。敵の攻撃は躱わすのは当然なのだ。
テムジが油断ならない敵なのはその攻撃力、回避力を見れば一目瞭然だった。だからキルは自分もテムジとの戦闘に参加することにしたのだ。
テムジが反りの大きな大剣を抜きモレノに斬りかかる。この反りの大きな剣は馬上で振るのに適しているため北方騎馬民族に好んで使われる剣の形態である。
「デーヤー!」
ガキーン!
剣と槍が大きな音を立ててぶつかりあう。モレノが大きく飛ばされた。
「ター!」
ユミカが正拳を突きたてる。ドラゴンナックルが唸りを上げる。テムジは体を折り曲げてユミカの正拳突きを躱わすと剣を振りかぶり反撃の態勢を取る。ユミカもすかさず反撃に備えた。
「ヘイトテイカー!」
ルキアが強制的にテムジの剣を向けさせる。それに続くのはシールドバッシュだ。
「シールドバッシュ!」
ガキーーン!
シールドバッシュで反射された攻撃でテムジが馬ごと後退した。
ルキアの盾から煙が上がっている。強烈な衝撃で一瞬発火したのだ。
キルが飛び込み様に大剣を振り下ろしテムジが剣で受け止めた。
バキーン!
テムジとバトルホースが一気に地面まで叩き落とされ地面にめり込み土煙をあげた。
「ク! やるな。魔法だけでなく剣も一流か!」
キルを見上げるテムジがバトルホースを叱咤して再び空に駆けのぼる。
キルは向かってくるテムジを狙い澄ましたように迎撃する。
「マシンガン爆裂バレット!」
テムジを襲った無数の弾丸が剣で弾いた瞬間に爆発した。剣の制御を失い続け様に被弾し、その弾丸も爆発する。テムジは爆煙に包まれる。
爆煙を突っ切りテムジがバトルホースに乗って姿を表し被弾しながら前進する。スキンシールドがバトルホース共々張りめぐらされている。だがそのシールドも徐々に破壊されて亀裂が広がっていく。
テムジは大きく右に展開してキルの射線から逃れようとした。そして被弾を少なく抑えシールドを再生させる。
回り込んだユミカがテムジの行くてを遮る。
「千手真拳豪衝連撃!」
テムジはユミカの連撃を最小限の被弾で受け流し、大きく距離をとった。
そしてテムジの背後にどす黒いオーラが発生し、それは長い角を持つ黒い羊頭の化け物の形に変わっていった。
「ククククク! 面白い。人間にまだこれほどの者がいたとはな」
テムジの背後で羊頭の黒い怪物が不敵な笑いでキルを見据える。
「ククククク! 少し遊んでやろう!」
キルはその黒い怪物を見るなりそれが悪魔だと予見していた。
「お前は悪魔だな!」
「ククククク! この世界ではそう呼ぶ者が多いようだな」
羊頭の黒い悪魔から出されるどす黒いオーラで周囲の空間が揺らぎ始める。
テムジが両腕を胸で組んで鋭い視線でキルを睨んでいる。
「こいつが出てきた以上、お前達は終わりだ! 残念だったな」
「そいつはどうかな! どうせ名も無い悪魔だろう」
「ククククク! なかなか言うものよ! ではその名の無い悪魔の力を見るが良い」
黒い悪魔が巨大化していく。そしてキルに襲いかかり、鋭く長い右手の爪で切り裂こうとする。
超高速の攻撃をキルが大剣で受け止めた弾き返す。
カキーーン!
「ククククク! 面白い、私のスピードについて来れるのか? ククククク!」
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