381 ライガー狩り 4
「午後の狩りといこうかのう」
全員が食べ終わったの確認してゼペック爺さんが立ち上がる。
「午後も頑張るぜ!」
キルケが気合を入れ直す。
キルが索敵の結果でライガーの群れの方向を指差した。四匹の群れだ。
寝転んで油断しているライガーの群れに近づいてゼペック爺さんが三匹、残りを三人で相手をする。キルはその様子を見守った。
バキ! ガツ! ドゴ!
あっさり三匹を倒したゼペック爺さんが、キルの横で三人を見守る。
シキ達三人は雄ライガーと泥試合を続け、最終的には討ち取った。
「はー!」
息をついてしゃがみ込むシキ達は、だいぶ疲れたらしい。
「次いくぞい! 次はわしとキルさんで倒そう」
「分かりました。こっちです。ドロンさん、荷馬車任せて良いですか?」
三人は荷馬車に乗って二人の後からついてくる。
「あれですね!」
二人は走り出しゼペック爺さんが2匹、キルが四匹を瞬殺して荷馬車を待った。
「もう狩り終わってるんですね」
「疲れてるなら次もわしらだけでいくぞい」
苦笑いで見つめ合うドロンとキルケが、小さく頷く。
「いくぞい。キルさん」
ゼペック爺さんの方が三人より全然元気だ。歳をとっていても、ステータスが大きく三人を上回っているせいだろう。
キルは喜んで次の群れの方向を指差す。そして二人は歩き出した。
五匹の群れを片付けて荷馬車の到着を待ち、今度はシキ達三人も狩りに加わる。
そしてまた五匹の群れを狩るのだった。
近距離肉弾戦が多い三人はどうしても運動量が多くなる。一撃必殺の攻撃力がないので戦いはすぐには終わらない。身体強化のスキルを身につければだいぶ戦いも楽になるだろう。
「ふー! なんとか勝てたぜ!」
額の汗を拭いながらキルケが大きく息を吐く。
「そろそろギルドに引き返しましょうか?」
太陽の位置を確認しながらキルは三人の様子を確かめる。今日は普段より何倍も働いているだろうと推測する。
普通、倒した獲物を運ぶのに時間がかかり、戦闘は日に一回か二回になるのが普通の冒険者だ。今日は三人だけでも四体のライガーを倒している。相当疲れているはずだ。
「そうだね。そろそろ帰ろうか」
「うむ。そうしようぜ!」
嬉しそうにドロンとキルケが互いの顔を見合わせる。
全員荷馬車に乗り込んで、冒険者ギルドに引き返した。
「今日はゼペックさんとご一緒できて助かりました」
「本当だぜ! 爺さん強い強いと思ってたがこれほどとは思わなかったな!」
ドロンとキルケがゼペック爺さんに感謝する。
「ゼペックさん、ぜひ俺を弟子にして下さい」
「わしは、暇つぶしに狩りをしてるだけで、本職はスクロール職人じゃからのう。冒険者の弟子といっても困るわい」
荷馬車の中の四人の話を御者台のキルは、黙って聞いている。
「だいたい、おぬしの仲間が困るじゃろう。仲間と一緒に強くなる方が良いぞい」
「そうだぜ! 仲間は一番大切だ。それにゼペックさんに弟子入りするならもっと強くなってからにしろよ」
「そうね。私達だって弟子入りしたいくらいだけど、我慢しているもの」
シキは、二人に睨まれて小さくなる。
「あのね! お金を貯めてゼペックさんにスキルスクロールを売ってもらいなさい。私たちはそうすることにしたの。スキル一つ身につくだけでかなり強くなれるわよ」
「そうだぜ! ドロンの『飛剣撃鎌鼬』はそうやって身につけたんだ。あれがあるだけでだいぶパーティーの戦力が上がったからな」
「なるほど! あの技スゲ〜なと思ってたんですけど、そういう秘密があったんですね!」
「「秘密じゃないし!」」
ドロンとキルケがプンとそっぽを向いた。
「すみません! 気にさわったら謝ります。俺もゼペックさんに良いスキルスクロールを売ってもらえるようにお金を貯めます」
「それが良いぞい。仲間にも教えてやるのじゃ!」
ゼペック爺さんが悪徳商人の顔になっている。御者台のキルは思わずゼペック爺さんの顔を思い浮かべてプッと口を抑えて笑った。
荷馬車が冒険者ギルドに到着し、五人は今日の成果を報告に行く。
『ライガーの毛皮五枚二十万カーネル』
依頼完了の報告をし狩ってきたライガーを買取所にどかりと積みおろす。
「まず二十万カーネルです。残りはちょっと査定してからになりますのでお待ちください」
ギルド内に併設されたバー兼食事スペースを指さされそこに移動する。周りに冒険者に注目されているのは言うまでもない。
「二十万マンは均等に分けましょう。残りの素材はゼペックさんとキルさんが受け取ってください」
ドロンが恐縮気味にお金の配分案を提唱した。
「そうだな。ほとんど二人が倒してるし」
「俺達、四匹しか狩ってませんしね」
キルケとシキも賛成する。
「そんならわしらは素材分だけもらえれば良いぞい。二十万は三人で分けたら良い」
「いえいえ!ゼペックさんも一緒に倒していますし、シチューや荷馬車でもお世話になってます。ちゃんと五当分しましょう」
「そうだぜ! 世話になりすぎじゃあ、次が頼みづれーしな」
「そんならキルさんの分はのいて、四等分でどうじゃ。キルさんは、わしの付き添いじゃったからのう」
ドロンとキルケが顔を見合わせ頷く。
「じゃあ、それで……お願いします」
話はまとまったころ受付嬢が買取代金を持ってきた。
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