365 ドラゴン狩り
「これでクリーブランド様が援軍を派遣することはあるまいよ」
マルス・フランシス邸を出るとロムが言った。
「そうですね。先に俺たちが呼ばれるでしょうから、そしたら俺たちが敵を倒せばいいんですもんね!」
頷くロムとホド。これ以上の調査は必要ない。あとはドラゴンをサクッと狩ってホームに帰ろうと、気分が軽くなる。三人はその足でカチカ山の火口を目指す。
ギルマスのコンノにもらった地図を頼りにカチカ山を確認、それは西にそびえるこの辺りで一番大きな山で山頂にある火口から煙を噴き上げていた。中で活発な火山活動が行われている証だ。
空を飛びながら眼下に火口を見下ろす。
「このまま侵入しますか?」
キルがロムとホドに視線を送る。
「そうじゃな!」
頷くロムとホド。三人は高度を下げて火口を目指した。
キルの皮膚に熱気が伝わる。一気に噴煙を突っ切り火口に侵入し、下へと降りていく。真下に真っ赤な溶岩が小さく見えた。
どこかに横穴かドラゴンの巣が無いか周囲を見渡す。索敵にドラゴンの気配は無い。ここに巣があったとしても今は留守に違いない。
捜索の結果ドラゴンの巣らしきスペースを発見した。抜け落ちた鱗が散らばっている。やはりドラゴンは外出中だ。落ちている鱗が見慣れたものより少し大きいようで気になった。
「ここは暑いから、外で帰りを待ちませんか?」
「そうじゃな! 戦うにしてもここは戦いづらそうじゃ。」
空中戦ならスピードでも旋回性能でもこちらが上なので、広い空間で戦った方が有利である。狭い火口内より外に出て大空で戦うべきだ。
三人は外に出て、ドラゴンの帰りを火口付近で待つことのする。
小一時間待つと強力な魔物の気配が高速で接近してくる。ドラゴンに間違いない。
「来ましたね!」
三人が顔を見合わせて頷いた。戦闘開始だ。大空に飛び出す。
ドラゴンも三人の気配に気づいている。向かってくる三人にドラゴンブレスをはきつける。散開してブレスを避ける三人。
大きく翼をはためかせて、上昇するドラゴンを追って三人が囲むように追いかける。
上空で仁王立ちになったドラゴンが大声で吠えた。
ギャーーオーー!
大きな翼、長く太い手足には鋭い爪、頭部に生えた二本の角は銀色に輝いている。ただのエンシェントドラゴンより一回り大きな黒い体は強固な鱗で覆われ、いかなる斬撃も弾きそうだ。
「まさか!」
キルはドラゴンの鑑定を行う。
『エンシェントドラゴン変異種』
鑑定結果はエンペラードラゴンではなかったが、それでも今まで戦ったことのない強敵に違いなかった。
「気おつけてください! エンシェントドラゴンの変異種です。今までの エンシェントドラゴンとは比べ物にならない強さです!」
「分かっておるわ!」
ロムもホドも一眼でそれは見抜いている。
上空でホバリングした三人が武器を構えて三方向からエンシェントドラゴンを囲んだ。
正面にキルが立ち、ミスリルの大剣をドラゴンに向ける。
「たーー!」
ドラゴンに突っ込んでいくキルにドラゴンブレスをはきつける。キルはそのブレスの周りを渦巻上に回転しながら避け、ドラゴンに迫る。
「えーーい!」
キルは大剣をドラゴンの頭部に叩きつける。ドラゴンは瞬時にエネルギの障壁を展開してキルの大剣を受け止めた。
ゴガーーン!
弾け飛ぶエネルギー障壁。
凄まじい衝撃音が響き渡りドラゴンは落下するが、途中で羽ばたいて体勢を立て直した。
ギャーーオーーン!
ドラゴンの体が強い光に包まれる。身体強化ーードラゴンのステータスが跳ね上がった。
キルもすかさず身体強化を三重がけする。ミスリルの大剣もさっきより強く輝いていた。ミスリルは魔力の伝導に優れた金属だ。キルが魔力を流すことにより、その強度も爆上がりしていた。どちらもこれからが本気の戦いだった。
ドラゴンの周りに多数の魔法陣が展開された。そして発生した炎が黒い弾丸に収束するとキルめがけて放たれる。
キルはその弾丸をミスリルの大剣で斬り飛ばす。
ドカーン! ドカーン! ドカドカーン!
ドラゴンが突撃をかけ右腕の爪がキルを襲う。
キルがシールドを展開しながら大剣で爪を受ける。
ガシーーン!
爪と剣のぶつかる大きな音と共にキルが後ろに飛ばされた。だがキルはすぐに持ち堪える。
ロムとホドが手を出せずに顔を見合わせる。額に汗が流れていた。
キルが右手を前に突き出し魔法陣が展開される。
「アダマンタイトマシンガン!」
魔法陣に膨大なエネルギーが流れ込み生成されたアダマンタイトの弾丸が連射された。
ドラゴンは魔法で防御障壁を展開したがその障壁に次々と弾丸が命中しヒビが入り割れて弾け飛ぶ。そしてドラゴンの肉体に弾丸がぶつかる。
ガガガがガガガガガガガガガガガガ!
ドラゴンの硬い鱗が割れて弾け飛び、続いて血肉が弾け飛ぶ。
グワーー!
たまらずドラゴンが悲鳴を上げた。だがすぐに治癒魔法を展開し始める。
キルはすかさず大剣を握ってドラゴンに突進し、出血するドラゴンの胸にそに大剣を突き立てた。
治りきる前の胸の傷に深々と剣を突さして、その剣におもいっきりエネルギーを流し込む。
ドラゴンは、体の内部から光を発し、粉々に爆発した。
「なんとか勝てたかーー」
ほっと一息つくキルは、ドラゴンの素材を売ってくれるように頼まれていたことを思い出した。ドラゴンは爆発して四散して地面に落ちていった。
「首だけでも探さなきゃ!」
それから爆散したドラゴンの頭部と尻尾、羽など大きな破片を回収するのにかなりの時間を要した。巣に落ちていた鱗も回収して、マルス・フランシスには、なんとかそれで我慢してもらおうと思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます