335 ザロメニア城塞の攻防 24
「キルさん。私も戦いたいのであるが〜、右翼のリンメイ軍の手助けに行ってもよだろうか?」
ユミカがウズウズしながらキルを見つめた。
キルはリンメイ軍の状況を索敵でわかていた。多分今のままではいずれ冒険者が負けると思う。
少し迷ったが今ここではユミカが助けに行くことは必要な事かもしれない。キルはユミカに頷いた。
「行って良いけど早く帰ってきてね」
キルの言葉を聞いてユミカが嬉しそうに小躍りする。
「流石! キルさんなら分かってると思っていたであるぞ!」
ユミカは右翼に向かって駆け出した。
「まったく最近は皆んなバトルジャンキーになりつつあるんじゃないか? 少しは怖い思いをする必要がありそうだ」
キルは額に手を当てて下を向く。
まあ右翼の敵は王級レベルが二人だから、きっとユミカなら余裕だろうと思い大きくフーと息を吐いた。
左翼から右翼に移動するには少し距離があった。ユミカは軍の後ろを駆け抜けてリンメイの後ろに回った。そして左軍の中に入っていく。リンメイを見つけてその前に回ろうとした時リンメイの前に敵の副官が現れた。
ジョンソリッドは偃月刀を振り回して辺りの兵を切り飛ばしながらリンメイに迫る。
「カッカッカ! どうだー! 見つけたぞ。おまえがこの軍の指揮官だな!」
リンメイがすかさずジョンソリッドに矢を射かけた。
「爆射!」
マイクボンドが偃月刀でその矢を受け止める。偃月刀が矢を受けて爆発したがマイクボンドには当たっていない。
「無駄無駄! そんなものは全て叩き落としてやるぞ」
そこにユミカが割っても入る。
「あなたの相手は私がするであるぞ!」
マイクボンドもリンメイもユミカに視線を向ける。
マイクボンドはユミカのドラゴンナックルを見て驚いた。ドラゴン素材というのは一目瞭然だ。
「装備だけは褒めてやろう。実力が伴うとも思えんがな」
「さて、そうであるかな? いざ手合わせ願おうか。オリャー!」
ユミカが一瞬で近づき正拳突きを放つ。ジョンソリッドが偃月刀を使って受け止めたがパワーに押されて3歩後ずさった。見れば偃月刀の柄の部分にに拳の跡が残っていた。
ドラゴンナックルの正拳突きで金属製の偃月刀の柄の部分が曲げられているのだ。ジョンソリッドが目を見張る。
「おいおい。まじか?流石にドラゴン素材でできたナックルだな」
「いくぞ!」
ユミカの緑の目がキラリと輝く。瞬時に間合いを詰めてまた右正拳突き、続いて左正拳突きそして右のアッパーを撃ち込んだ。
正拳突きを腹に受けてくの字に曲がり、突き出されたマイクボンドの無防備な顎にユミカのアッパーが炸裂した。ジョンソリッドは回転しながら後ろに吹っ飛んだ。
ジョンソリッドは完全に意識を失っていた。
神級の剣士、盾使い、槍使いでもあるクリス、ケーナ、ユミカは四つの神級戦闘職ジョブを持つのでステータスは並の神級冒険者より全然高い。唯の王級並ヘキサグラムでは相手になるはずがないのだ。
「大した事ないであるな。後は頼んだである」
ユミカがリンメイに気絶しているジョンソリッドのことを頼んでもう一人の副官の所に向かう。
リンメイは呆気に取られながらユミカを見送った。
ビルアダムスと聖級冒険者パーティ達の戦いは膠着していた。
ヒッコルトが切り付ければその剣を大鎚で打ち払いヒッコルトが飛ばされる。
そこにトドメを刺そうと大鎚を振りかぶればそこにダネージョが槍で突きを入れる。
ビルアダムスはその突きを飛んで躱わすがそこにファーブルの矢が襲った。
大鎚で矢を受けて体勢を整えるビルアダムス。ヒッコルトもまたビルアダムスを狙っていた。
「ドーリャー!」
ビルアダムが地面を大鎚で蹴散らして土を飛ばし土煙で視界を遮った。
ヒッコルトとダネージョは土礫を躱し隠れたビルアダムスを目で追った。
ビルアダムスは瞬時にヒッコルトの間合いに入って大鎚を振り下ろす。
気づいたヒッコルトが大鎚の軌道から避けるように右に飛んで回転しながら身構えた。
「手を貸すであるよ!」
ユミカの声にビルアダムスは視線を向けた。緑の髪に緑の瞳。ドラゴンナックルを両手にはめた少女が立っていた。
「いくわよ! たー!」
ユミカが一瞬で間合いを詰めビルアダムスに正拳突きを放つ。ビルアダムスは大鎚の打撃部でその正拳突きを受け止めた。
「グワー!」
その衝撃に3歩後ずさるビルアダムス。大鎚の打撃部が拳の形に凹んでいた。
「ク! 何者だ!」
ユミカは黙って攻撃を続けた。
「千手真拳豪衝連撃!」
ビルアダムスは周り中から幾多の拳に殴られてその体が一瞬宙に浮く。
腰を落として膝をつくビルアダムス。意識が飛びそうになるのを根性で引も出す。
「こんな筈は……」
ユミカが回し蹴りでビルアダムの後頭部を直撃すると、ビルアダムスは前に倒れ込んで意識を失った。
三人の聖級冒険者がユミカを見つめて固まっていた。
「私、急ぐので後はお願いするである」
ユミカはそう言い残すと急いで『15の光』の元に駆け出した。
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