333 ザロメニア城塞の攻防 22
「見つけたぜ! 此処にいたのかよ。将軍さん」
ゴメスキメラがニヤニヤと笑う。2mの大女だが顔が虎なので顔で男女の区別はつかない。身につけた装備と大きなムネがこいつが女だと分かるポイントだった。いわゆるビキニアーマーという奴を身に付けていたのだ。
「やばいな…」バットウはマリクゴドラとの距離を取ろうとするがマリクゴドラの剣戟はそれを許さなかった。バットウはマリクゴドラの剣撃を受け続けた。
「く!」
マリクゴドラの剣撃を受け続けるバットウはゴメスキメラにも注意を向けないわけには行かない。
案の定ゴメスキメラが大剣を振り上げたと思うとその大剣がバットウを襲った。
「グワー!」
バットウはすんでのところで大剣を躱わす。
「俺の獲物に手ェ出すんじゃねー!」
ガッツドゴラが怒鳴る。
「こんなの早いもん勝ちだよ! 我儘言ってるんじゃないよ! 二対一でさっさと殺すの! 敵はこいつだけじゃないいんだよ!」
不敵な笑いをゴメスキメラがガッツドゴラに向ける。
「チェ!」
ガッツドゴラがバットウを睨みつける。
ゴメスキメラが大剣をブンブンと振り回して始めた。バットウを睨んで斬りかかる隙をうかがう。
ガッツドゴラが斬りかかり、その剣を躱わすバットウにゴメスキメラが大剣を撃ち込む。
激しい剣戟を躱し続けるバットウの額に汗が流れる。ジリジリと下がりながらこの厳しい状況をどうしのごうかと考える。
ガッツドゴラとゴメスキメラの攻撃を避け続けていても勝つことはできない。
起死回生の一撃を放てる時まで二人の剣戟を躱し続けなければならない。そしてその瞬間を、必殺の一撃を加えられる隙を見逃さないように神経を尖らせる。
ゴメスキメラが大剣を振り下ろす。ガッツドゴラが双剣で連続技を繰り出す。バットウはその全てを受け、或いは躱した。剣と剣のぶつかる音が鳴り響く。バットウは守りの集中し、反撃の時を待った。
バットウには一秒が十秒にも感じられた。
「オラオラオラ!」
ガッツドゴラがバットウを攻め立てた。
「このままではやられる。クソ! 流石に二人は厳しすぎる」
激しい二人の剣戟を避けながらやっと繰り出したバットウの剣撃は虚しく空をきる。守るのがやっとで、攻撃を繰り出す時間が取れない。対して、ガッツドゴラとゴメスキメラは余裕だった。
その時バットウに思わぬ救いの手が差し伸べられた。
「手を貸すよ! 剣王バットウ」
そう言って現れたのは剣を手にしたグラとホドだ。隣の戦場でバットウの戦いを感じ取り応援にかけつけたのだった。
「頼む! 一人ではとても敵わなかったんだ」
バットウは素直に助けを受け入れた。
グラがガッツドゴラに斬りつける。ホドはゴメスキメラの前に立ちはだかった。
新たな組み合わせで二つの戦いがはじまった。バットウは剣を地面に突き刺し膝をつく。
グラの剣がガッツドゴラの二つの剣を圧倒した。繰り返される剣撃にガッツドゴラの防御した剣が弾かれる。そしてバランスを崩したガッツドゴラに次の剣撃が襲いかかる。ガッツドゴラが防戦一方になっていた。剣の間合いから外れようとしてもグラの追い足がそれを許さない。
ガキーン!
大きな剣撃の音と一緒にガッツドゴラの剣が飛んでいった。ガッツドゴラの剣が折れて飛んでいったのだ。
しまったと思った瞬間、剣の行方を追ってしまった視線のズレが、刹那の隙を生んだ。
その隙を見逃すグラではなくガッツドゴラの頭上にグラは剣を振り下ろした。
「兜割!」
受け止めようとしてもう一本の剣を出した時にはすでに、強い光を帯びエネルギーに包まれたグラの剣が大上段からガッツドゴラの頭に振り落とされる。
ガッツドゴラの剣は一瞬遅く、グラ剣はガッツドゴラの頭をとらえていた。グラの剣は、そのままガッツドゴラの剣を押しきりその頭を二つに割った。
血飛沫が飛び、ガッツドゴラが膝をついて、前のめりに倒れ込む。その背中にグラは剣を突き立ててトドメを刺すのだった。
ホドとゴメスキメラは睨み合いを続けていた。二人の頭の中でいくつもの剣が振り下ろされ、薙ぎ払われ、先に剣を振った方が斬られてしまう仮想の映像が繰り返される。二人が迂闊に剣を振り出せないで睨み合っているのだ。
だがホドがにじり寄るたびにゴメスキメラが後ずさる。ややホドの方が推しているのだろうか?
そして遂にゴメスキメラが剣を振り下ろした。
グラが左足を半歩また、ずりとにじり出したその圧力に耐えきれず、ゴメスキメラが剣を振り下ろしたのだ。
だがその剣の軌道は二人の脳裏に描かれた予想映像通りの軌道を描き、ホドはその剣戟を一寸の見切りで躱し、その体はゴメスキメラの右を通り抜けながら剣を横に薙いでいた。
ゴメスキメラの腹から血飛沫が飛び口から血反吐をドバッと吐き出す。そしてゴメスキメラはばたりと倒れた。
ホドが倒れたゴメスキメラを一瞥する。その冷ややかな視線はまるでつまらない物を切ってしまったとでも言っているように見えた。ホドの口の端が僅かに動いた。
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