331 ザロメニア城塞の攻防 20
バットウの軍を先頭にロマリア軍が行軍をする事二日、斥候からの情報で獣人軍がこちらに移動を始めた事が伝わった。
バットウは前方に有るザローヌ川の浅い支流を挟んで獣人軍と対峙する事にした。その為に軍の行軍速度を上げ、続く軍にこの事を知らせた。後続の軍も移動速度を早め、全軍がザローヌ川の前200mで陣を敷いたそして簡単な砦を作り始める。
そこは平原といえども河川敷よりやや高くなっている。川から攻め寄せてくる為には僅かな登りがあるという事で有る。
川の水が少ない時期だったのでロマリア軍前の渡河想定場所は深いところでも深さ5〜60cmと歩いて渡れるとは言え、川幅は10m弱は有る。川を渡る時には対岸で攻撃すれば有利だし飲み水の確保も簡単という利点もある。
川を背に戦う時は撤退が困難になる為川を渡って戦うのは不利と言えた。故に川を挟んで睨み合いが続く可能性が高い。簡単なものとは言え此処に砦を築いておく事は戦いを続ける上では有利に働くはずなのである。
「対岸に獣人軍が現れた。半数が渡ったら攻撃を開始するぞ!」
バットウの号令が響き渡る。
ロマリア軍の布陣は中央にバットウ軍、右翼にリンメイ軍、左翼にビッグベン軍、中央後部にキングナバロ軍が予備軍として控えている。
対して獣人軍は先鋒として現れたピートキャスト軍が左翼に布陣。そして右翼にグラムヒューイット軍が並ぶ。その後中央にノートザンギの軍が現れた。その後ろにオリンピアサドニスの軍がいる。
両軍が川を挟んで対峙した。そして罵り合いが始まる。そして獣人からの投石が始まるがロマリア軍に届く石は少ない。そのくらい離れたところで布陣している為だが、中には届くほど遠くに投げられる者もいて多少の被害は出ていた。
「渡れー! 」
獣人達が川に入り始める他ところでロマリア軍の弓矢攻撃が始まった。
「射かけろー!」
最前線の盾兵の頭上を超えて獣人軍に矢が降り注いだ。
矢傷を負いながらも多くの獣人が盾兵に迫る。そして激突した。
「ドカーン」
大きな音と地響きと怒声が当たりを包んだ。
獣人達とロマリア軍が入り乱れて白兵戦が行われる。その頭上を後方から矢が獣人達の渡河途中の獣人達に降り注いだ。獣人達は大きな損害を出しながらもしゃにむに突き進んでくる。
川の中に死体を残して獣人軍全軍が渡りきりロマリア軍の弓隊の攻撃も止んだ。そして陸上戦闘が激しさを増した。五万の獣人軍と十万のロマリア軍、しかも渡河の時に少なくない損害を出している為兵数が違いすぎて獣人軍がロマリア軍を押し込むことができないでいた。
兵士単体では獣人の強さが上回っているが流石に通常兵の攻撃だけでは押し破れないのだ。
特に右翼のリンメイ軍に戦いを挑んでいるピートキャスト軍は渡河時の弓攻撃による兵に損耗が他より多かったせいか兵士の数が少なく苦戦をしている。
だがその分ピートキャスト軍の副官の動きだしが早かった。二人のヘキサグラム、ビルアダムスとジョンソリッドだ。ピートキャストの二つの槍がリンメイ軍を切り裂いた。
リンメイ軍が二箇所から押し込まれ始めた。
「あの二箇所に敵将がいるな、まずあそこから敵将を討ってくれ!」
リンメイが十二人の別働隊、つまり三人の聖級冒険者パーティーに命じた。
「任せろ!」
聖級剣士ヒッコルトが親指を立てて見せた。十二人の別働隊が敵の副官ビルアダムスを討ち取る為に動き出した。
「あそこに居る獣人の武将はかなり強いな。ヘキサグラムというやつか?王級レベルの強さは持っていそうだぞ。油断するなよ!」
ビルアダムスに向かいながらヒッコルトが周りのメンバーを見回した。前方ではロマリア兵が蹴散らされ吹っ飛ばされているのが見える。
「まずは俺とヒッコルトとファーブルで相手をしよう」
槍聖ダネージョがそう提案すると弓聖ファーブルも賛成した。
「特級レベルだと王級の相手はキツすぎる。三人以外には周りの獣人どもを倒して俺たちの戦いの場を確保してもらおうか」
三人以外のパーティーメンバーが頷いた。
別働隊がビルアダムスの前に到着する。ビルアダムスは周りのロマリア兵を大鎚を振り回して弾き飛ばしている。ビルアダムスの周りには弾き飛ばされ動けなくなったロマリア兵が散らかっていた。
異様なオーラを背負いながらビルアダムスが別働隊に視線を向けた。
「少しは手応えのありそうな奴らが現れたようだな!」
ビルアダムスが嬉しそうに舌なめずりをした。その手に握られた大鎚は直径50cmは有る打撃部に2mくらいの太い柄がついている。打撃部もその柄も金属製だ。
「やはり、王級レベルだぞ。気をつけろ!」
ヒッコルトが強張った顔で剣を抜いた。
ファーブルが先制攻撃で弓矢を射かける。ビルアダムスはその矢を大鎚で撃ち落とした。
「これならどうだ」
不敵に笑うビルアダムスにファーブルはもう一度矢を射かけた。
「爆射!」
矢を撃ち落とした瞬間大鎚が爆発した。いや、射かけた矢が爆発したのだ。大鎚は煙を上げながらも無傷のようだ。ただ爆発のダメージをビルアダムスは多少負ったようだ。だがビルアダムスは大した影響はないと言った顔をする。
「ククククク、なかなか面白い。さあ戦おうぜ!」
ビルアダムスが笑った。
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