323 ザロメニア城塞の攻防 12
「それじゃあ、出かけようか」
グラが皆んなに出撃をうながした。
キルは密かに戦いを楽しみにしている自分に驚いていた。獣人は強い。星7相当の実力者がたくさんいるし、星8相当の者もいるかもしれない。自分はどれくらい強くなっているのだろうか? 星8相当の実力者と戦っても勝てるだろうか?ワクワクする。負けないぞ…と思う。
「キルさん。行きましょう。緊張してるんですか?」
クリスがキルに微笑んだ。
「武者震いってやつっすか?」
ケーナもクリスの背中に抱き付きながらキルに微笑んだ。
「ははは、そ、そうだな。そ、それじゃあ行こうか」
キルは笑って誤魔化しながら歩き始めた。
「クリスさんもケーナさんも綺麗で良いなあ…」
エリスが呟く。
「エリスだってとっても綺麗だよ。ウフフ! さ、行きましょう」
ユリアがエリスに抱きついて言った。
『15の光』はペロロバンの邸を出るとそこからフライで空を飛び、西に向かった。
少し飛ぶと遠くに此方に伸びてくる線が見える。獣人軍の行軍が長い線となって近づいてくるのだ。
「あれが獣人軍に違いない。全員戦闘準備!」
グラが全員に聞こえるように大きな声わあげる。
『15の光』はすぐに獣人軍の上空に達した。
「攻撃開始!」
全員が自分の持つ遠隔攻撃で攻撃を開始ししようとする。
「面倒だわ。一気に片付けましょう! エクスプロミンネン!」
サキが究極の爆烈魔法を唱え、天から高エネルギーの柱が立つと巨大な爆発と共にキノコ雲が立ち昇った。
一帯が吹き飛ばされて、後にはクレーター状の大地が残る。
そこには焼けた匂いと煙が立ち上っていた。
いきなり広範囲の魔法攻撃で先頭を行軍していたピートキャストの軍の前五分の一が消滅しただった。
「良い感じね。私もその魔法を使おうかしら。エクスプロミネン!」
クリスもサキに倣って爆烈魔法を唱える。また巨大な爆音とキノコ雲が立ち昇った。
「それ良いね。俺もそれを使おう! エリスプロミネン!」
キルも二人に倣う。
「あ! 三人に任せれば良いっすね。少し休んで出番を待つっす」
ケーナに倣って三人以外は攻撃を中止して三人の攻撃を見守った。
次々にキノコ雲が立ち昇り、獣人達が散り散りに逃げ始める。ピートキャストの軍は完全崩壊であった。
「クソ! 撤退だ」
ピートキャストは素早く逃げて軽傷で済んでいる。ジョンソリッドも生き延びた。流石に幹部クラスの獣人はこの位の攻撃にはなんとか対応できるのだ。
ピートキャストの第一軍は六発のエクスプロミネンで肩がついてしまった。
「次に行きましょう!」
サキが続いてやってきたケントギルガメスの軍を攻撃し始めた。
「エクスプロミネン!」
立ち昇るキノコ雲。爆音が響き渡る。地面が揺れる。
キルとクリスもそれに続いた。
「「エクスプロミネン!」」
ケントギルガメス軍も大混乱だ。
「空軍が出てきたぞ!迎撃しよう」
見れば後方の軍から敵の空軍が飛びだったようだ。ここからは空中戦だ。キルは地上に四匹の神級精霊を呼び出して地上の敵軍を攻撃させた。そして本人は敵空軍に相対する。
「待っていたっす。サウザンドアロー!」
ケーナがニッコリ笑って出番だとばかりにエネルギーの矢千本を敵空軍に射かけた。マリカも魔法で光の矢を千本放つ。
そしてその攻撃は三度繰り返された。合計6000本の弾幕だ。200人の獣人空軍が次々に撃墜されていった。
心配していた敵空軍にヘキサグラム以上の者は配属されていなかったようで、弾幕をくぐり抜けてキル達のところまで辿り着ける者はいなかった。
眼下では神級精霊にケントギルガメスの軍が蹂躙されている。ただ風精霊にだけ三人の獣人が有効な攻撃を繰り返していた。その三人はケントギルガメスとその副官二人に違いなかった。三人による集中攻撃で、神級の精霊を一体ずつ倒そうという訳だ。
神級風精霊がもう少しで倒されてしまいそうだ。かなりのダメージが蓄積している。
キルは剣を抜き一直線に飛んでいった。
流星が落ちてきたかのような光速の一撃。その一撃はケントギルガメスを両断した。
ケントギルガメスを切って落とすのにただの一刀で事足りた。ケントギルガメスがその攻撃に気づいた時にはもうすでに切られた後であったのである。
「グフ!」
ケントギルガメスが袈裟に斬られて二つに分裂した。
キルはそのまま走ってアベルギブソンに近づき剣を横に一閃する。
アベルギブソンがケントギルガメスが切られた事に気がつき振り返った時にはキルは彼の横を駆け抜けていた。
「まさか!」
胴を切り離されたアベルギブソンの上半身だけが地面に落ちた。
「う、うわー!」
コリンマックスが悲鳴をあげる。一瞬の内に信頼する二人が斬り殺されていたのだ。二人の強さが自分より上だという事をコリンマックスは分かっていた。その二人が反撃一つ許されずに斬り殺されてしまったのだ。
コリンマックスの体が恐怖で硬直する。コリンマックスは初めて恐怖というものを知ったような気がした。
そして次の瞬間それは彼の後ろにいた。そう。すでにコリンマックスは斬られていたのだ。
一人の剣を手にした少年が此方を向いたその瞬間、コリンマックスは彼を見失っていた。そして自然に視線が滑って行った。そして地面が目の前にあったのだ。薄れゆく意識の中でコリンマックスは自分が切られたのだと認識した。
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