315 ザロメニア城塞の攻防 4
獣人グラムヒューイット軍では空からの攻撃に混乱をきたしていた。
「あの空の敵をなんとかしろ!」
グラムヒューイットが副官達に命令した。
このままでは一方的に攻撃されて滅ぼされる。そういう焦りから発した命令だが副官達は頷いた。そして空中ジャンプのスキルを持つ者に攻撃を命じる。そに数は限れれているため大した戦力ではないがその中には副官達も含まれていた。
グラムヒューイットの副官ヘキサグラムのケルヒアイスとフランクウットの二人だ。二人はスキルホルダー二十数名を従えて剣を抜くと攻撃を開始した。ジャンプにジャンプを重ね上空に跳ね上がる。
アーツ『空中ジャンプ』は空中の足場のない空間をも足場にして空を駆け上がれるというものだ。
あくまでもジャンプの繰り返しのため自在に飛び回れるフライのような細かい動きは難しい。
上空に飛び上がった獣人飛行隊が『15の光』に迫る。
だが『15の光』も黙ってそれを座視しているわけがない。当然上がってくる彼らは迎撃対象だ。
ケーナとマリカが万の矢を放って迎撃した。ケルヒアイスとフランクウットは多少の矢を受けながらも大部分を弾き飛ばして上がり続けてきたが特級以下の獣人達は二人の攻撃で見事に撃墜された。
迫ってくる二人の副官を見てエリス達が言った。
「私達が切り落としてくるわ」「うん。うん」
「え! じゃあ私も行く〜」
「では私も」
「であるな!」
エリス、ユリア、モレノ、ルキア、ユミカが飛び出していった。
ケルヒアイスとフランクウットは五人の攻撃を受けて散々に切り刻まれて命を落とした。空中戦ではそもそもフライの自由運動に空中ジャンプでは勝負にならない。その上に星6二人相手に星7が五人がかりで攻めかかったのだからもはやリンチである。
グラムヒューイットは迎撃隊を向かわせたことに後悔を感じていた。無駄に副官二人を含む精兵達をを失ってしまったのだ。
「クソ! なんなんだ、あいつらは? ケルヒアイスとフランクウットが全然相手にならないとは。二人はヘキサグラムだぞ!」
グラムヒューイットは憎々しそうに空を見上げた。
ピートキャスト軍は降り注ぐ無限の矢に大きな損害を受けていた。そしてキルの参戦により副官のマイクボンドまで失っている。そこからキングナバロ軍は勢いづいて反撃を開始していたし、ケインドラグマのの軍は指揮官を失いキルとビッグベンに攻められて消滅寸前だ。もうすぐキル達はピートキャスト軍に攻撃を加え出すに違いない。
ケントギルガメス軍は四体の神級精霊に攻められて崩壊寸前の状態だ。
ケントギルガメスは早々に撤退を開始した。軍の損害を少なくするのは指揮官の勤めである。この軍で神級精霊に通用する攻撃力を持っているのはおそらくケントとその副官の三人だけだ。その判断から早々に撤退を決断したのは間違いではない。
ザロメニア城塞の城壁の上で弓聖リンメイは、神級精霊の出現に驚きつつもどうやら味方の召喚精霊らしいと判断して静観する。そしてケントギルガメスの軍の撤退を見て胸を撫で下ろした。
兵士達がケントギルガメス軍の撤退を見て歓声を上げた。その声は西で戦っているもの達にも響いていった。
ピートキャストも撤退を考えていた。現状では完全に戦える状態ではない。迷っている時間に損害はどんどん増えてしまう。その時、東門でザロメニア守備軍の歓喜の叫びが響き渡った。その声を聞きピートキャストは決断を下した。今日の戦いは負けだ。被害を最小にして再戦にかけるしかない。
「全軍撤退! 全力で戦線を離脱せよ!撤退のドラを鳴らせ!」
撤退のドラが響き渡る。ピートキャストは号令と共に軍を南に移動させる。全速力で戦線を離脱するのだ。キングナバロ軍とビッグベン軍が激しい追撃戦を仕掛けてくる。
ピートキャスト軍の撤退と、ドラの音がグラムヒューイット軍にも撤退の合図としてつたわる。彼らもまたなりふり構わず撤退を開始した。
剣王バットウの軍がグラムヒューイット軍を追撃する。
クリス達も空から獣人軍を追いかけて攻撃を続けた。キルも再びフライで飛び上がりクリス達と合流した。
グラがキルに声をかけてきた。
「キル君大活躍だったね。敵将三人を倒すとは大手柄だ」
「そうね。もし軍人だったら勲章者よ」
「サキさんこそかなり魔法を連発して活躍してるじゃないですか?」
「そうなのよ! なのにグラ達ったらサボってるのよね〜。少しは働きなさいよ。」
サキがグラを睨みつける。
確かにグラとロムとホドは今のところ目立った働きはしていない。剣撃を飛ばして攻撃をするわけでもなく、ただ空中に止まっていただけだと批判されても仕方ない。
「サキ達のことを守ってたんじゃないか? わからなかったのか?」
「あら守ってくれたのはエリスちゃん達だったわよ。グラ達はサボってたわ〜」
「イヤイヤ、エリスちゃん達が安心して戦えたのは僕らがサキ達を守ってたからだろう」
「そんな事あるかしら〜」
「まあまあ、そういう事でいいじゃないですか」
キルが苦笑しながら二人のじゃれあいの間に入って押し留めるのだった。
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