313 ザロメニア城塞の攻防 2

「なんの! ドオリャア!」


コリンエステルの大剣がうなりを上げる。

「ブーン!」


「フン!」

キングナバロが受け止めた。


「どりゃ、どりゃ、どりゃ、どりゃ!」

コリンエステルが連続して剣撃を繰り出すもキングナバロは余裕の顔で弾き返した。


馬上のキングナバロは反撃に転じ右手の長槍でアーツを発動した。

「神馬滅槍! とりゃー!」


「グワー!」

コリンエステルの胸に神速の突きが襲い掛かりその旨を貫く。そしてそのまま馬上に放り投げた。地面に落ちていき耐えるコリンエステル。それを見た獣人達が逃げ出した。

「副将、を打ち取ったぞ!」

「コリン様が討ち取られた〜! 逃げろ〜」

崩れ立つ獣人軍。キングナバロとその軍がが追撃を再開する。ケインドラグマ軍を追い詰めるキングナバロ軍。その時キングナバロ軍はケインドラグマ軍を追いかけて、大きく北へ張り出していた。


グラムヒューイット軍とケインドラグマ軍の距離が開くことによって、ケインドラグマ軍を追いかけるキングナバロ軍側面に大きなスペースが生じた。ピートキャストはその隙を見逃さない。


「キングナバロ軍の横っ腹に突っ込むぞ!」

一万のピートキャスト軍がポッカリ開いた間隙からキングナバロ軍の横っ腹に突っ込んだ。


「ドカーン!」

大音響と共にキングナバロ軍が分断される。


「どりゃー!」

「うわー! グワー!」

「殺せー!」


怒号が飛び交い血飛沫が飛び散る。


ケインドラグマはこの戦況の変化を見逃さなかった。

「止まれ! 此処から押し返すぞ! ピートキャスト軍が突っ込んで敵は混乱しているぞー! 戦え! 行くぞ!」


ケインドラグマが軍を立て直し、反転してキングナバロ軍に襲いかろうとする。後続の軍を気にしていたキングナバロはもう後続の兵達を気にしている余裕は無い。分断されたキングナバロ達はピートキャスト軍とケインドラグマ軍の間に挟まれ絶対絶命のピンチである。


「左に旋回しながら後続の軍と合流するぞ!」

キングナバロはケインドラグマ軍を左にそれながら削って行った。そのまま旋回してピートキャスト軍の最後尾を削り、グラムヒューイット軍の左翼を後方から削りながら、分断された自軍の後続との合流を目指す。少々無理のある戦法だが仕方がない。


騎神キングナバロは、その機動力と突破力をフルに使ってこの無理な戦いに挑んだ。どちらの軍も後方から削って行くためそれが最上の離脱方法かもしれなかった。強力な武将と正面から戦うことの無い道が最も楽な道である。だがその大きな移動の間に残された自軍の後続部隊がどれほどの損害を被ってしまうのだろうか。一刻も早く合流して指揮系統を復活させなければならない。キングナバロは全速力で敵にぶつかっていく。


「恐るな! 敵を叩き潰せ!」


キングナバロは、先頭に立ち獣人達を蹴散らしながら自軍の兵を叱咤激励し続ける。

ケインドラグマの軍を削りとってピートキャスト軍の後ろを削りにかかる。



ザロメニア城塞内の盾王ビッグベンがキングナバロ軍のピンチと見るや、一万の兵で北門から城を出てケインドラグマの軍に襲いかかった。

「ナバロ軍を救え! 獣人どもを殺し尽くせ!」


方向転換をしていたケインドラグマ軍はまたしても背後から新手のビッグベン軍に襲われた。


キングナバロ軍はピートキャスト軍を抜けてグラムヒューイット軍の左後方を食い破り、残された自軍後続部隊と合流した。そして攻撃しているピートキャスト軍に突っ込んで行った。


ピートキャスト軍の攻撃のために合流を果たしたキングナバロ軍の総数は一万に減っていた。

そして尚且つピートキャスト軍とケインドラグマ軍の二つの軍から攻められている。

厳しい。キング軍の勢いは完全に止まってし待っていた。


ただ救いはビッグベン軍によってケインドラグマの軍が後方から攻め込まれて混乱しだしてきた事である。ケインドラグマ軍は一人残った副官ヘキサグラムの両手剣使い、ネビルドリア達が盾王ビッグベン軍に対抗し、ケインドラグマは騎神キングナバロに向かった。二手に分かれて戦う為その攻撃圧力は半分以下に弱まったのだ。


それでもキングナバロ軍は厳しい状況にある事に違いはない。

そして拳王バットウの軍もグラムヒューイット軍に押され気味であり、ケインドラグマ軍の背後をついたビッグベン軍はネビルドリアの一団に押さえ込まれていた。


このままキングナバロ軍が敗走することになれば、全軍が大打撃を受けることになりそうだった。


ザロメニア城塞を守っている弓聖リンメイ軍は再び東門を攻め始めたケントギルガメス軍の対応に追われている。更なる援軍を場外に投入する余裕は全くなかった。


この状態が続けばキングナバロ軍が敗走して均衡が崩れ、人族軍が破れることになることは目に見えていた。

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