312 ザロメニア城塞の攻防 1

ジョンソリッドに釘を刺されたケントギルガメスは軍を城塞都市ザロメニアの五百m距離に待機させた。見渡す限りの大平原にたった一つの城塞都市がポツンと立っているだけで有る。太陽はもう西に移動してもう少しすれば空を赤く染め出すに違いまかった。


「まあ良いだろう。城攻めは明日からだな。此処に陣を敷いて飯の支度だ」

ケントギルガメスが副官達に命じた。


「は!」

「わかりました」


二mの巨体で左右に控えていた副官のアベルギブソンとコリンマックスが返事をしてケントギルガメスを見た。


「城塞都市ザロメニアの城壁をグルリと見て回りませんか?何か見つかるかもしれません」

アベルギブソンが口の端を上げる。


「面白そうだな。アベル、兵百を連れて偵察して来い。攻められたら反撃しても良いぞ。飯の支度はお前が戻ってからだ」

ケントギルガメスがニヤリと笑ってコリンマックスに目配せをする。

戦端を開く言い訳作りにするつもりなのだ。


二人もニヤリと笑って動き始めた。ケントギルガメスもザロメニアの城壁を睨んで下顎を撫でるのだった。



ケントギルガメス軍の後ろから追いかけるように到着したケインドラグマの軍はそのままケントギルガメス軍の右に移動して陣を敷き始める。続いてグラムヒューイットの軍もケントギルガメス軍の左に陣を敷きだした。三万の獣人軍が城塞都市ザロメニアの西に一直線の並んだので有る。


アベルギブソンはザロメニアの西門の前で火矢を射かけ始めた。ザロメニア兵が応戦の矢をいて返す。するとアベルギブソンはさっさと矢の射程の外に引き上げた。そしてしばらくするとまた近づいてきて火矢を射かける。すぐに引き上げ今度は北に移動して火矢を射かけ、射返され始めるとすぐに引き上げまた東に移動して射返されるのを待った。続いて南についても同じことを行う。全周にわたって火矢を撃って廻った後アベルギブソンはケントギルガメスの元に戻った。


「一まわりして参りました。ケントギルガメス様。見たところ四つの門が東西南北にあるようですが、西門が一番兵の数が多く配置されており、東門が一番手薄なようでした」

アベルギブソンが分かったことを報告した。


「そうか、では我々は東門の前に陣を敷き直そう。飯の後に移動を開始するぞ」

「は!」


ケントギルガメス軍は食事を終えると夕暮れの中東門の前に移動を開始した。

その頃ピートキャストの軍も到着して城塞の西に陣を張った。ピートキャストの軍からは翌朝城塞都市ザロメニアへの攻撃を開始しても良いと全軍に通達が行われた。


朝日が上り各軍が動き始める。ケントギルガメスの軍は東門に攻撃を開始した。ケインドラグマの軍は西門付近に詰めかけた。梯子を掛け、城壁を登ろうとする獣人軍と追い落とそうと矢や石で迎撃する防衛軍の激しい戦闘が始まった。


西門には盾王ビッグベンとキョクアが、東門には弓聖リンメイとペロロバンが守りについていた。

怒号と絶叫が飛び交う中激しい戦いが続く。


東門の防衛軍はアベルギブソンが予想したものより強力だった。ペロロバンの魔法攻撃も想定外だったが特に強力だったのはリンメイのアーツ『サウザンドアロー』である。ケントギルガメス軍は想像以上に損害を出して早々に後退し軍を北に移動し始めた。


西門付近で戦っていたケインドラグマの軍の南西から騎神キングナバロと剣王バットウの軍が作戦通りに姿を現し、後方から攻撃を加えようとする。


「グラムヒューイットの軍に近づく敵軍の横槍をつかせろ!」

ピートキャストが伝令を飛ばす。


キングナバロ、バットウの両軍に対して、グラムヒューイットの軍が横槍を入れようと動いてきた。


剣王バットウ軍がグラムヒューイット軍に対応するために向きを変える。騎神キングナバロ軍はケインドラグマ軍の後方からそのまま突っ込んで行った。


「ドカーン!」

大音響と共にキングナバロ軍がケインドラグマ軍の後方にぶつかり獣人兵が吹っ飛ばされた。

キングナバロを先頭にケインドラグマ軍に楔を打ち込むように蹴散らしていく。


「北に撤退!」

ケインドラグマが軍を立て直すために怒号を発する。


「やれー!」

騎神キングナバロが大声と共に獣人達の中に分け入った。


「ドドーン!」


剣王バットウ軍とヘプタグラムのグラムヒューイット軍が激突する。


「ワー! ワー!」

「ガキーン! バキーン!」


剣王バットウ軍二万とグラムヒューイット軍一万がガチンコの戦いを始めた。

バットウ軍とグラムヒューイット軍の戦いは一進一退の膠着状態である。


ケインドラグマの軍は北に向かって後退戦をしながら押し込まれていった。

ケインドラグマ軍の右翼を担う副将ヘキサグラムのコリンエステルが騎神キングナバロとぶつかった。大剣を振り上げてキングナバロに斬りかかる。


「お前如きはこのコリン様の剣のサビにしてやるわ! どりゃー!」


「お前如きでは役不足よ! ソリャー!」


「ガチーン!」

キングナバロの槍がコリンエステルの大剣を跳ね上げる。コリンエステルは後方に跳ね飛ばされながらも次の剣撃を繰り出した。

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