310 四軍集結

「ビッグベン様! 先行していたヘヴンズ軍が壊滅している模様です。ヘヴンズ様は討ち死にしたとのことでございます!」


盾王ビッグベンは信じられないという表情でその報告を聞いた。まさか槍王ヘヴンズほどの将軍が2倍の兵力を用して挑み、全滅討ち死にの憂き目に遭おうとは。


「信じられん。敵は本当に一万の獣人軍なのか?」

ビッグベンは暫く考えた後に号令を発した。


「引き返すぞ。一旦、ザロメニア城塞に頼って防御を固めよう」


ビッグベン軍は草原を迂回してザロメニア城塞を目指すことにした。平地での戦闘では倍の戦力でも負けたという事実が彼にそういう決断をさせてのである。それほどの戦力を獣人軍は持っているのだ。予想を超越する強さと言っていいだろう。


単独では戦わず後に続くロマリア王国軍と合流してから戦わないと、各個撃破されてしまう可能性がある。そろそろ城塞都市ザロメニアに第四軍も到着しているだろうし、ザロメニアに戻る頃には第五軍も到着する頃に違いない。此処は安全策をとって後方に注意しながらザロメニアに戻るのだ。

盾王ビッグベンはそう考えた。


彼は獣人軍の攻撃に注意しながら引き返していった。勿論この決定は即座に弓聖リンメイの軍にも連絡をしリンメイ軍も引き返したのだった。


ピートキャストの軍がビッグベンの軍に挑もうとしなかった事も幸運だったのか二つの軍は城塞都市ザロメニアに無事戻ることができた。そして剣王バットウ、騎神キングナバロの軍と合流を果たしたのである。


この日、ロマリア王国軍は全軍城塞都市ザロメニアの到着したが、槍王ヘヴンズの軍を失った。

その総兵力は十万から八万に減少したのである。(ザロメニア軍5000を除く)


城塞都市ザロメニアに集まったロマリア五竜大将軍達は、まさかの槍王ヘヴンズ軍の全滅を受けて軍議を開いた。


「まずは現状把握してその情報を共有せねばなるまい」

盾王ビッグベンは切り出した。


「確認しておきたいのだが、ヘヴンズ軍は本当に壊滅して、ヘヴンズは死んだのだな?」

騎神キングナバロが信じられないという顔で聞く。


ペロロバンの横にいたキョクアが立ち上がり発言した。

「ヘヴンズ軍の生き残りが数名此処までたどり着いております。その者の話ではヘヴンズ様の死亡は間違いなさそうです。戦いの一部始終を知るために、その者らを此処で話をさせましょう」


そして逃げ延びた敗残兵が三人呼ばれ戦いの一部始終が語られた。


ヘヴンズ軍壊滅の状況を確認し終えて軍議は再開する。


「私は、野戦は不利と考えます。この城塞を利用するのが唯一の道かと」

ビッグベンは状況が思わしくない事を憂えた。


「両軍が鶴翼の陣を敷いて真っ向からぶつかりあったようだが、兵士が1/2の獣人軍に逆に包囲殲滅されるとはかなり個の戦力で差があるようだ」

「両端から兵士が飛ばされていたというところを見ると左右にかなりの猛者がいたという事だな」

「中央でもヘヴンズの『天槍翔来』を砕け散らせるほどの使い手がいるようだし、星5以上が3人はいる軍だったようだぞ」

「その軍並みに軍が後いくつ有るかはわからんが、これは厳しい戦いになるな」


四人の大将軍達が口々に相手の戦力を推定して獣人軍の手強さを再確認する。


「唯の籠城では守りきれまい。半数を遊撃するために城外に陣を敷き砦を築こう。そして掎角の計で迎え撃つ! どうだ?」

「外に出るのは機動力のある騎兵、キングナバロ殿と後一軍ですかな?」

「そうなるな」

「ならば、それがしがご一緒しよう」

騎神キングナバロが掎角の計を提案し、それに剣王バットウが加わると言った。


掎角の計とは、城を攻める敵に対して外部に配置した一軍により後方から攻め立てることにより城との間で挟み撃ちにするというものだ。外に配置した一軍に敵が向かうようなら城から打って出て、この場合もまた敵を挟み撃ちにできる。常に敵の後方からの攻めを主体とした攻めで二軍の連携が重要な作戦で有る。


「となるとこの城塞都市はこの俺とリンメイ殿で死守することになりますな」

盾王ビッグベンがキングナバロを見つめる。

弓聖リンメイも頷いた。


「王都に援軍の要請は出しておこう。この兵力ではおそらく勝ち切る事はできまい。王国の兵をかき集めてでも援軍を送ってもらうのだ」

キングナバロが言った。個の強さに勝る獣人軍十万に対してロマリア王国軍は8万に減っているのだ。これは冷静な判断といえよう。


「兵を集めるにしても時間はかかる。援軍は当てにせずないものと思って慎重に敵を削る事に主眼をおこう」

「うむ」

バットウの意見に皆が頷いた。


「それでは我々は城外のしかるべき場所に陣を敷いて身を隠す事にしよう。ではいこう!バットウ殿」

キングナバロがそう言って立ち上がり歩き始めた。バットウもそれに続くのだった。

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