309 槍王ヘヴンズ軍の戦い

「ガキーン! ガキーん!」

「バコーン!」

「ガツーン!」

「殺せー!」

「ガキーン!」

剣撃と怒号が響き渡る。


ヘヴンズ軍と獣人軍は真っ向からぶつかりあった。


数に勝るヘヴンズ軍が圧倒するかに見えた戦況は意外にも拮抗していた。。

獣人軍将軍ピートキャストが不敵な笑いを漏らした。彼は中央後方で戦線には参加せず様子を見ている。

ヘヴンズもニヤリと笑みを漏らしながらやはり中央後方で参戦せずに状況を見ていた。

拮抗している様に思われた戦線に僅かな変化が現れ出した。徐々に中央部でヘヴンズ軍が獣人軍を押し込み始めたのだ。


中央の獣人軍はジリジリと押し込まれ戦線は直線から曲線に変わりつつあった。左右は同じ位置で拮抗し、中央のヘヴンズ軍が前進した為である。戦線中央でヘヴンズ軍が優勢に戦っている様に見えた。ヘヴンズの口の端が上がる。


ピートキャストが不敵な笑いを止め、左右の副官に合図を送った。


「頃合いだな! やれ!」


ピートキャストの指示に従ってジョンソリッドとマイクボンドが戦線に加わった。


「ズガガーン! ゴガーン!」


鶴翼の両端から大音響が響き渡った。人族の兵士が弾き飛ばされる様に飛ばされていた。


「オラオラオラオラ!」

ジョンソリッドが大きな偃月刀を振り回して辺りの兵士を薙ぎ倒している。


「ズガガーン」

「ギャー!」

大音響と悲鳴が飛び交い兵士が吹っ飛ばされ血飛沫が飛ぶ。

「あははは! オラオラオラオラ!」

ジョンソリッドが先頭になってヘヴンズ軍左翼を猛烈な勢いで押し込み出した。


「カッカッカ! オリャオリャオリャ!」

右翼ではマイクボンドが大暴れを始めた。

「ドガガガガーン!ボコーン!」

「グワー! ウゲー!」

マイクボンドは大鎚を振り回して辺りの兵を殴り飛ばす。

「カッカッカ! どうだー!」

マイクボンドが大鎚を片手で大車輪の様に振り回す。周囲の兵士が殴られた飛ばされていった。

「グワー! ヒエー!」

ヘヴンズ軍左翼も総崩れの様相で押し込まれていく。


ヘヴンズは左右の異変に驚愕しながらも現状把握に努めた。

“いかん、このままでは取り囲まれてしまう。なんとか突破方を見つけねば。”

辺りを見回しながら考えた後でヘヴンズは号令を発した。


「俺に続け!中央を突破して敵の後方に出るぞ!」


ヘヴンズは優勢に戦いを進めていた中央軍に中央突破の命令を下し、自らも戦線に身を投じた。

ヘヴンズの近習達と共に彼は最前線へと乗り出していった。


「オーリャー」

ヘヴンズの槍が閃光の輝きを持って獣人達を突き崩していった。

ヘヴンズ中央軍が前進の速度を爆発的に上げ獣人達を押し除けていく。

「オーリャ! オーリャー! アタタタタター!」


ヘヴンズの前方に一際大きな獣人の姿が見えた。

「奴がこの軍の将軍、指揮官か! 奴を倒せば我が軍の勝ちだ!」

「おーー!」

ヘヴンズの掛け声に近習達の歓声があがった。


「フン! ノコノコと注文通りにやって来おって。人族という奴はいつも変わらぬな」

小馬鹿にした口調でそう言い放つとピートキャストは自身の大剣を抜き放つ。

ニヒルな笑いが不敵に映った。


「俺が肩をつけてやる。少しは楽しませてくれよ、人族の将軍よ!」


「ぬかせ! それはこちらのセリフだ!」

ヘヴンズがピートキャストに攻めかかった。


「あたたたたたたー!」

ヘヴンズが高速の連続突きを放つがピートキャストはその突きを全て躱わして余裕の笑いを見せる。


「フン! つまらんな、アーツというのを使ってみせろ!」

ピートキャストがヘヴンズを挑発した。


「余裕を見せるのも今のうちだ。くらえ! 武技! 天槍翔来!」

ヘヴンズのアーツが発動し天空に光のエネルギーが収束する。そしてそれは巨大な槍の矛先へと変貌して落ちてきた。巨大な光の槍がピートキャストを襲った。


「オリャー!」

ピートキャストがその巨大な光の槍を振り下ろした大剣で斬り伏せ粉砕した。

「ビキャーン」

目も眩むような光が広がった。光の槍が砕け散り、四散して消えていく。


「なにー! 天槍翔来を切っただと! 信じられん!」

ヘヴンズの背中に冷や汗が流れる。


「フン! これが貴様の得意技か? つまらぬなあ」

ピートキャストが不敵に笑った。


左右ではジョンソリッドとマイクボンドによってヘヴンズ軍が吹っ飛ばされ減り続けていた。

「ゴガーン! ズガガーン!」

「グワー! ウゲー!」

どんどん押し込まれて左右から囲い込まれる様に陣形がかわっていく。ヘヴンズが突破できなければ、全軍が囲い込まれて殲滅されてしまいそうだ。だがヘヴンズの前にはピートキャストが不敵に笑いながら立ちはだかっていた。


ヘヴンズには目の前のピートキャストを打ち破る以外の道はない。

「武技! 鳳凰烈火槍!」

ヘヴンズがとっておきのアーツを発動した。


連続した槍撃が炎となってピートキャストを襲った。

ピートキャストは大剣を横に一閃してヘヴンズの炎の槍撃を打ち払う。そして一歩踏み出すと大上段から大剣を振るった。


「バキーン!」


大きな金属音が響き渡る。


ピートキャストの大剣の一撃は、受け止めたヘヴンズの槍ごとヘヴンズを斬り伏せていた。

頭から真っ二つに切られてヘヴンズは頭から血を吹き上げて倒れた。


「ヘヴンズ様!」

彼の近習達は絶望の声を上げる。


「殺せー!」ピートキャストの周囲の中央軍が彼らに襲い掛かり殲滅戦がはじまった。左右から囲い込まれてもう人間達の逃げ場は無くなっている。囲まれ、すりつぶされてヘヴンズ軍は全滅した。


「近づいてくる軍がありそうな気配だ。急ぎ陣を敷くぞ!」

「は!」


ピートキャストの命令で獣人軍は一旦此処に陣を敷くのだった。

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