300 ユフリンの湯船にて
ニコゴンダンジョンを攻略してユフリンに戻って来た『15の光』は此処でひと休みをして次の目的地を相談しようと思っていた。
ユフリンは温泉で有名な街だ。キル達は宿屋でゆっくり温泉に浸かって身体を休める。
「明日はユフリンギルドで情報を調べて、この辺りのダンジョンを攻略しましょうか?」とキル。
「まあドラゴンの出没情報なんてものは、そうそうないからね。ダンジョン攻略という事になるんだろうね」とグラが答える。
「エンペラードラゴンを狩りたいというのは大変な目標でしたね。最近エンペラードラゴンにこだわることもないのかなあ〜なんて思っているんですよね」とキルは打ち明けた。
「別に良いんじゃないかな。他にこれといってやりたいこともないからね、誰も迷惑だなんて思っていないし、何か目標を定めておいた方が動きが取りやすくて良いと思うよ」
グラはにこやかに笑った。
「ワシもそう思うぞ。エンペラードラゴンの魔石が勇者や賢者のジョブスクロールを作るために必要なんじゃろう」ロムもエンペラードラゴン狩りに賛成だ。
ホドも黙って頷いた。
「ただワシが思うに全員で動くのはちと効率が悪いかもしれんな。3班に分かれてそれぞれが何処かのダンジョンを攻略しても良いかもしれん」とロムが言った。
「確かに3班に分かれてもダンジョン攻略に支障はないかもしれないよね」グラもロムの意見に賛成のようだ。
確かにエンシェントドラゴン2頭が相手ならどの班でも討伐できるだろう。ザックリ考えて同等レベルの戦力のものが2対4〜5で戦う事になるのだから危なげなく勝てるのではないかと考えても良さそうに思う。それに3班に分かれて動いた方がそれぞれの討伐経験値が早く稼げる事になるし、エンペラードラゴンに出会うのも早くなるに違いない。ただエンペラードラゴンの強さが未知数なので対エンペラードラゴン戦に関しては結果が予想できないとも考えられるのだ。
「エンペラードラゴンて、どの位強いんでしょうね?」キルがグラ達を見回した。
「それはわからないけれどもなあ?」グラが言った。
「ワシにもわからんが、普通のエンシェントドラゴン4頭分の戦力なら互角に戦えるはずという事じゃな」とロムが言った。
「ですが、最悪我々の最大火力がエンペラードラゴンにダメージを与えられないという場合もあり得ると思うんですですよね……」とキルが不安をのぞかせる。
ロムが腕を組んでしばらく考えてから言った。
「じゃが、その時は何人いても勝てないじゃろう」
その言葉はみんなの考えてもいなかった事だったが、確かにそうなるに違いないと思えるものでもあった。魔王を討伐する時など少数精鋭の勇者パーティーで戦いに望むのは、ダメージを与えられないものが何人いても戦力にならずに被害だけが増えるからだ。だからせいぜい4〜5人の最強戦力で魔王討伐に当たるのが常套手段なのだった。
「確かにそうですね……では、エンペラードラゴンがいるかいないかしっかり確かめて、その強さを十分に調べてから戦うようにするしかないですね。強そうだったら早めに逃げ出して全員で対策を立てましょう。どのくらい討伐経験値を稼いでから戦いに臨むか?とかをよく考える必要が出てくる訳ですから」とキルは言った。
「そういう事だね。まあ、逃げられなかった時は最悪の事態を想定しなくてはならない訳だけれど……それは大人数で行っても同じだろうからね」とグラも言った。
女湯から「キャッキャ!キャッキャ!」という声が響いた。
キルもグラも女湯の方を見て気楽で良いなあ……と思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます