296 キル、ホームに帰る
「ただいま〜」
キルはホームでゼペック、クリス、ケーナに迎えられた。
「キルさん、やっと帰ってきたのう。今度は少しゆっくりしなされ」
ゼペックが相変わらずの悪人顔で言う。キルには何処となく優しい顔に見えるから不思議だ。
「先輩、遅かったっすね。意外に大変なミッションだったっすか?」
「お帰りなさいませ。お疲れ様でした」
いつも通りの2人を見てキルは安心する。
「俺のいない間変わった事はなかったかい?」
「グラさんとロムさんがギルドで方々の噂話を集めて来てたっすけど、ドラゴンが出たとかはないようっす」
「グラさんとロムさんは今もギルドで飲んでいるのではないかしら。サラさんはクッキーちゃん達を連れて買い出しに行ってますわ。ホドさんが護衛です」
「皆んなは街に出ているんだね」
「そうっすね、ユミカは裏庭で訓練してるっすけど」
「ユミカらしいなあ」とキルは笑った。
「無事に帰って来て良かったのう。まあキルさんがどうこうなるとも思えんがの。任務は成功したのかえ?」
「はい。無事キューリー将軍とナイル将軍を脱獄させて緑山泊に届けて来ましたよ」
「なるほど、それで時間がかかったっすね」
「緑山泊まで往復したら時間はかかりますわね」
「あ!キルさん、帰ってたんであるか。待っていたであるよ」
ユミカが汗を拭きながら裏庭から戻って来た。
「遅くなって心配をかけたね」
「そうであるな、ただ怪我とかの心配はしていないであるがな。なぜ遅いのかとは気になっておったぞ」頬を赤らめてユミカが答えた。汗に濡れた服を着替えるためにユミカは自室に戻って行く。いくぶん服が透けてしまっている事が気になったのかもしれない。
「キル先輩がいない間に自分達は良いお休みをいただけたっす。そろそろまた何処かのダンジョンとかドラゴンのいそうな場所に出かけたいところっすけど、先輩は少し休みたいっすよね?」
ケーナは少し待ち疲れたのか早く戦いに出かけたいようだった。
「別に休まなくても大丈夫だぞ。ただ少しロマリアの方がきな臭い雰囲気だったんだ。また何か起きそうだなと気になってはいる」
「まあ、またロマリアが攻めて来そうですの?」クリスが心配そうにキルに詰め寄る。
「そういうことではなさそうなんだけれどね、ただ何かあったら直ぐに駆けつけられそうな場所のダンジョンに潜ろうかとは思うよ。玉露山ダンジョンなら緑山泊に近いから第1候補かな」
「何かあったらって、何がありそうなんすか?」ケーナが訝しげにキルを見た。
「いやね、途中ホーランという街で兵士を募集していたのでね、何か起こるといやだなと思っただけさ」
「まあ、そんな事がありましたの。その兵は何をするために集められていたのですか?」
クリスも心配そうだ。
「そこまでは調べないうちにホーランを離れてしまったのでな、わからないんだ……」
「ほ!ほ!ほ!他の街でも兵士の募集はしておったのかえ?キルさん。集めておったのなら攻めてくるやもしれんがのう。そうでなければ大した事にはならんじゃろうのう」ゼペックが悪い顔で笑う。
「他の街のことはわからないんですけれど、兵士を集めているとは聞いてないですね」
「緑山泊の者達はその情報を持っておったかえ?」
「はい。知っていたようです」
「ならきっと大丈夫じゃろう。彼らに任せておけば大丈夫じゃ」
「そうっすね。きっと緑山泊で対処できる範囲っすよ。そうでなかったら今頃迎えが来てるっす」
「まあそうなんだろうね。ゾルタン様も大丈夫だと言ってましたから〜」
そう言いながらもキルは心配のようだ。
「みんなが戻って来たらこれからの計画を立てましょう。良い考えがきっと出ると思いますよ」
クリスが心配そうなキルを安心させようとした。
サキ達が帰って来て、その後グラ達も帰ってきた。そしてキルはみんなと相談して2日後に玉露山ダンジョンに潜ることを決め、その後ロマリア方面のドラゴンを探しに行くことに決まったのだった。
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