295 ミッションクリア

久しぶりにベッドで熟睡したキルは気持ちの良い目覚めを迎えた。

朝食は取らずに5人は宿屋を出る。


「それでは此処から緑山泊を目指しましょうか?」


「昨日の話が少し気になるが、一旦は緑山泊に急いだ方が良いだろう。早くゾルタン様達に合わせたいしな」とアルベルト。


ゾルタンという名前を聞いてキューリーとナイルが顔色を変える。

「ゾルタンというのは、あの不死身のゾルタンですか?」

「まさか本当に生きているとは」


「本物のゾルタン様だ。200年以上若い姿のままのな」


「ゾルタンに会えるだけで緑山泊に行く意味がある」

「うむ」


「ゾルタン様な……様をつけろ」ドラゴンロードが2人に注意をした。


「すまん」「わかった」


「とにかく一旦は緑山泊に戻りましょう」早く任務を終わりにしたいという思いもあるがキルには早くルビーノガルツに戻りたいという思いもある。


「うむ。ホーランの募兵の事、ゾルタン様に伝えておかなくてはな。きっと我らより深い考えで対処してくださるだろう」


「そうだな、俺もアルベルトの言う事に一理あると思うが、問題はタイミングだな。今此処でやらにゃあならん事が有るかもしれんし、ないかもしれん」

ドラゴンロードが暴れたそうにもっともらしい事を言う。


「兵士が集まるのに時間がかかるだろうし、その後も準備に時間はかかるだろう。2日後には俺たちは緑山泊に着ける。問題は無かろう」


「そうですね。それでは急ぎ戻りましょうか」


「仕方ねーな」


「私も早く伝説のゾルタン様にお会いしたいですね」


「俺もだよ」ナイルがキューリーと同じ気持ちだと言った。


「それじゃあ、飛ぶぞ!」


アルベルトの掛け声で5は緑山泊に向かって飛び始めるのだった。



5人は途中野営をして2日目の昼には緑山泊に到着した。緑山泊で救出作戦の成功とホーランの情報を伝える。


「ゾルタン様、2人の救出、無事完了致しました」


「ご苦労でしたね。アルベルトさん。いつも助かるよ。ドラゴンロードとキル君もね」

ゾルタンはアルベルト達にそう言うとキューリーとナイルを見つめた。


「キューリー将軍にナイル将軍、無理やり緑山泊にお連れしてすまなかった。あのままでは悲惨な末路を迎えそうでしたのでね」


キューリーがかしこまって答えた。

「助け出していただいた事、感謝しております。これからは、ゾルタン様の元で働かせていただければと考えております」


ナイルも頭を下げる。


「それはありがたい申し出ですね。緑山泊でゆっくりしていってくださいね。君達を仲間として歓迎いたしますよ」


ゾルタンはそう言うとジルベルトに視線を送る。


「私はジルベルトと言う。後で緑山泊の首脳陣達に紹介しよう。歓迎の宴会を催す。君達の部屋に案内するから付いて来てくれ」

ジルベルトが2人を連れて部屋を出ていった。


アルベルトがゾルタンにもう一つの報告をする。

「ゾルタン様、帰還途中ホーランの街に立ち寄ったのですが、そのギルドで領主が兵を募っておりました。ご存知でしょうか?」


「ああ、その話は聞いていますよ。その後の動きも連絡が来るでしょう。心配しないで大丈夫ですよ」


「ゾルタン様、募兵の目的は『マウスボーイ』なんで?」とドラゴンロード。


「それはまだ動いていないのではっきりした事はわかりませんが、予想としてはその通りです。ホーラン子爵は何度か『マウスボーイ』に入られていますしね。きっと予告か密告でもあったのかもしれませんよ」

ゾルタンが面白そうに話した。


キルもアルベルトもなるほどと思ってから安心したのだった。


「それでは私はこれで帰らせていただきます。ホームの皆んなも心配していると思いますので」

キルが別れを告げるとソンタクが残念そうに言った。


「確かに君の仲間が心配しているだろうからね、引き止めたいがそう言うわけにも行かなそうだな」


「はい。予定ではスタインブルクから直帰するつもりでしたので……」


「ありがとうキル君。何か困った事があったら緑山泊はいつでも力になるよ」ゾルタンが優しい顔で言った。


「ありがとうございます」それでは此処にいない皆さんによろしくお伝えください。


キルは挨拶を済ませるとルビーノガルツに飛ぶのだった。

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