293 策士?アルベルト

ドラゴンロードが大立ち回りをした事に4人は頭を抱えていた。

キューリーとナイルは脱獄犯として追われる身であり、まだ此処まで手が回っていないとしても目立って目撃者の記憶に残る事は足取りを追われ易くなるという事だ。


「緑山泊まで急ごう。どうせ真っ先に疑われるのは緑山泊が絡んでいるという事だろうしな。此処で目撃されたのは、その考えの根拠ができただけの事さ」

アルベルトが3人に小声で言った。


「あまり印象が残らない内にここを去りましょう」キルもこれはまずいと思っている。


4人は代金を多めに置いて席を立った。

ドラゴンロードを置き去りにして4人はそそくさと店から出ていく。


気が付いたドラゴンロードが驚いて急いで後を追った。


「おいおい、待ってくれよ!ひでーじゃねーか!」


ドラゴンロードに追いつかれる前に4人はフライで飛び始めた。

ドラゴンロードも追いかけて空に昇る。


「なんだよ!ちょまてよ!」


「馬鹿野郎、目立つマネをするんじゃない。油断も隙もないやつだな。分かってるのか。俺達は追われる身だぞ、手掛かりを残すような真似をするんじゃない!」アルベルトがドラゴンロードをしかりつけた。


「ああ、そうだったな。すまねえ、すまねえ、気が付かなかったぜ。でもよお、ここまでくれば大丈夫って言ってたじゃねーか?」


「それは、普通にしていたらという事であんなに暴れたら手掛かりを残して緑山泊が疑われるだろう」


「なるほどなあ~、緑山泊が疑われるのはよくねーよな。悪かったたよ」

飛びながら頭をかくドラゴンロードだった。


「あれえ〜、キル、ルビーノガルツに帰るんじゃなかったのかよ?」


「お前が問題を起こしそうだからまだ付いてきてもらったんだよ。俺が頼んでな」

アルベルトがドラゴンロードを睨んだ。


ドラゴンロードは、また気まずそうに頭を掻いた。


「すまねえな、面倒かけちまって……キル」


「いえ、こうなったら緑山泊までお供しますよ。皆さんにもお会いしたいですしね」


「このスピードだと緑山泊まではまだ2日は飛ばないと着けなさそうですから何処かで宿を取りますか?」


「いや、直線的に緑山泊に戻ると足取りを追われて緑山泊だとバレる恐れがある。一回ロマリア方向に膨れて宿を取るとしよう。右に方向を変えるぞ」


アルベルトの指示に従った5人は方向転換して西に向かって飛びだした。


「ロマリアに向かったと思わせるって事は、犯人はロマリアの者だと思わせるって事ですよね?」

キルがアルベルトに質問した。


「まあ、そう思ってくれれば助かるんだが、そう簡単にはいかないだろうな、緑山泊に向かう疑いを幾分減らせれば良しってところだろう」とアルベルト。


「アルベルトさんって、意外と策士なんですね!」キルがアルベルトを褒める。


「それは褒められたって思って良いのかな?」


「そうです。いい意味で凄いなあと思って策士って言いました」策士って悪いイメージもあったりするのかなあ?と思うキルだった。


「そうかい!たいして凄くもないと思うけどね。普通に誰もが考える程度のことだよ」

アルベルトは褒められたことで嬉しいらしく照れ笑いをしていた。


この元将軍、もしかしたらチョロいかもしれないと思うキルだった。

キューリーとナイルも苦笑する。


5人は西に向かって飛び続けた。夕方まで飛び続けてロマリア領内の街を見つけて潜入した。そして宿屋をとった。


「たぶんここはロマリアのホーランという街だと思う。ここの領主も良い噂は聞かない奴だな」

アルベルトは意外と情報通なのかもしれない。


「ドラゴンロード!ここの領主をみつけても手を出すんじゃないぞ!今は2人の安全が第一なんだからな」


「わかってるよ!さっきは悪かったって。だけどここでは暴れても良いんじゃないのか?わざわざ道をそれてロマリアの者が犯人だと思わせるためにこっちに来たんだし」


「そうか〜、そうかもしれんが…いや、ドラゴンロード、お前が暴れたいだけだろう!いいか、お前が暴れなくてもスタインベルクの奴らはちゃんと手がかりを見つけるんだよ!そんなあからさまな手掛かりを残したらかえって怪しまれるというものだ」


「へ〜、そういうもんですかい?わかったぜ!大人しくしてるからよ」

ドラゴンロードは渋々納得するのだった。

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