291 救出作戦
深夜教皇庁に向かう3人。夜間の警備ともなれば人員も少ないし、その質も高くはない。
キルが索敵で警戒しながら近づけば警備の合間を潜り抜けるのはさほど難しくはなかった。
教皇庁の中に侵入してもそれは同じだ。スリープの魔法が大活躍をした。
邪魔な衛兵には眠ってもらう。キルはステルスの魔法で姿を消し気配を消して障害となる警備兵を眠らせた。ドラゴンロードとアルベルトは眠った警備兵の横をすり抜ける。隠密モードのキルを発見できるほどの猛者は警備兵にはいない。
そして3人は地下三階の牢獄の前までやって来た。
「俺、この人と戦いましたよ」キルはキューリーとナイルを見つけてそう言った。
「おい、おきやがれ!」ドラゴンロードが二人を起こす。牢獄の鍵は眠らせた守衛が身につけていた。
「助けに来たぞ……静かについてこい」アルベルトが二人に言った。
二人は訳がわからず呆然としている。
「俺たちは緑山泊の人間だ。無実の罪で囚われているオメーらを助けに来てやったのよ」
「俺は元将軍のアルベルトだ。俺の事は知っているな。君達と同じように敗戦責任を取らされ投獄された。今は緑山泊に厄介になっているんだがな。どうだ君達も…嫌、それは後で良い、ここにいればいつまでも出られんぞ。とりあえず逃げないか?」
ドラゴンロードと違ってアルベルトは丁寧だ。
キューリーとナイルは顔を見合わせると頷いた。
「助けてもらえますか?」
「助けて下さい」
「ついて来てくれ」アルベルトが二人を解放する。
そしてキルは二人にヒールをかけてボロボロの体を回復させた。
解放された二人がキルを見て気付いた。
「お前は!」
「俺たちはお前に負けてこうなったんだぞ」
二人の怒りがキルに向けられた。
「だからこいつが助けに来てるじゃね〜か」ドラゴンロードが二人を嗜めた。
「勘違いするな、負けたせいでこうなってるんじやない。教皇達がそうしたかったからお前達は牢獄に入れられたんだ。俺もそうだった」
「だいたいよ、負けたのはお前らが弱かったからでコイツのせいじゃね〜!」
キルは黙ったまま済まなそうな顔で聞いていた。
キューリーとナイルは恥ずかしそうな顔になり俯いた。
「その通りだ。あんたは何も悪くない。すまなかった」
「気にしてませんよ。早く逃げましょう」キルが口を開く。
5人は牢から外を目指した。
途中キルは二人の首につけられた首輪に抑制力がある事に気付く。
「その首輪、魔道具ですね!」
「そうだ。これをつけると力が1/10に制限される。抵抗させない為の魔道具だ」キューリーが解説する。
キルが二人の首輪を解錠した。キルは解錠のスキルを持っている。
二人は首をさすりながら力が戻ってくるのを噛み締めるのだった。
寝ている衛兵の横をすり抜けて5人は教皇庁を後にした。そして秘密のアジトを目指す。追ってくる者はいない。皆キルに眠らされてしまっていたのだ。
「こんなに楽に事が進むとは思わなかったぜ。キルのおかげだな。ジルベルトが連れて行けと言う訳だ」ドラゴンロードが笑った。
「その通りだな。キル君のおかげだ」アルベルトも頷く。
「それほどでもありませんよ。俺がいなくてもきっと救出はできたでしょうから」
「いや!あのスリーブて魔法はすげ〜有効だったぜ〜!あれがあればこのまま城門も抜けられるんじゃねーのか?」ドラゴンロードが調子に乗って言った。
「ああ、確かにあの魔法があれば城門の衛兵を眠らせて抜け出せそうだな」
ドラゴンロードはアルベルトも自分の意見に賛成なのを聞いて驚く。
「おいおい、おれは、冗談で言ったんだぜ、本当に大丈夫なのか?」
「いや、かえって今の方がまだ警戒体制が整っていない。城塞を抜けるだけなら今の方が有利だが、問題はその後だな」
「それはどう言う事ですか?」その後とはどう言う事なのかがわからずキルが尋ねる。
「城門を出た後馬がいなければ歩くしかなかろう、それでは追手に追いつかれてしまうではないか」
アルベルトが答えた。
「そうだなあ」ドラゴンロードがなっとくした。
「だから暫くの間アジトで身を潜めるしかないのだ。城門を抜けた後の移動手段があれば今抜けた方が良いのだがなあ」
「フライのスキルスクロールでフライを身につければ空を飛んで移動できますよ」キルは奥の手を提案した。
「持ってるのか?」ドラゴンロードがキルをみた。キルが頷く。
「使わせてくれるか?」アルベルトがキルを見る。
「勿論ですよ」
「よし。それで行こう………うん?……ならここから飛んで逃げられるんじゃねーか?」
「そう………ですね」
ドラゴンロードとキルが顔を見合わせる。城門を通らなくても城塞を越える事ができるのに気づいたのだ。
「ははは、早くそのスクロールってやつで飛んでみようぜ」ドラゴンロードはノリノリだ。
キルは4人にフライを覚えさせると5人はフライを慣らしながら暗い夜空の中を飛んでいくのだった。
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