283 ミノタダンジョン 6

十分な睡眠をとった後、『15の光』は地上を目指した。


ダムはクムの横でいつでもサポートできるように気を遣いながら歩いている。

ミキは2人の後ろから2人を見守る。


3人の前後を守るように囲みながらキル達のパーティーは第3階層を進んで行く。上空からハーピーが襲って来ると先頭のキル、殿のグラが剣撃を飛ばして撃ち落とした。

その手際の良さを3人は驚嘆して見ていた。


第2階層に入り相手が変わってもパーティーは無人の野を進むが如く歩き続ける。障害になる魔物が現れればキルが数匹まとめて瞬殺した。

元々コカトリスは群をなして襲って来るタイプではない。ただ魔法攻撃が及ばないように少しキルが先行して進んでいる。


キルは索敵でコカトリスを見つけると間合いを見計らって走り出し遠隔攻撃をして倒し魔石を回収しているうちに皆んなが追いついてくるという段取りになるように行動した。

後ろから来る皆んなはストレス無く歩いているだけで良い。


「第一階層になったら私たちが先頭変わりますよ」「うん。うん」

エリスとユリアがキルのそばに寄ってきて役割を代わると提案してくれる。


第1階層はミノタリスが徘徊している。フロア内に他の冒険者もたくさんいる階層なのでそれほど戦わなくても進んでいけるだろう。第一階層のフロアボスはたまたまいなかったので素直に第一階層に突入して出口を目指す。5〜6階の戦闘を経てパーティーはダンジョンから外に出た。



ダンジョンから外に出ると其処にはダンジョン町と呼んでも良いだろう小さな集落がある。冒険者用の宿屋や武器屋、道具屋、食事処がいくつかあるが決して大きな街では無くどちらかといえば村と言っても良い規模だ。


「此処まで来ればもう大丈夫でしょう、この辺でおわかれですね」

キルは責任を果たしたというような満足げでホッとしたような表情だ。


「ありがとうございました。あなた達は私の命の恩人です。このご恩をどうやって返したら良いかわかりません。我々の力が必要な時はいつでも協力しますので、言ってください」


「クムだけの命の恩人ではありませんよ!俺もミキもあなた達が助けてくれなければ死んでいたに違いない。本当にありがとうございました」


ミキも全身で感謝の気持ちを表していた。

「ありがとう!キル君、いち早く駆けつけてくれたのはキル君だったわね」

ミキはキルに抱きついてキルの頬にキスをした。


少女達の表情がこわばった。


キルは押し付けられたミキの胸の柔らかさに顔を赤らめる。


ミキは少女達の表情に気づいてしまったと思いキルからすぐに離れるのだった。


「それでは俺たちはこの辺で失礼するよ」

グラのその声で『15の光』のメンバーは3人に別れを告げた。




「さて、次はオークデルダンジョンとオークダナダンジョンね!その前に気分転換でその辺の店でも見てまわりましょう!」


「いいっすね〜!露天商ってゴミばっかり売ってるようで時々掘り出し物もあるっすよ!」


「面白そうであるな!では目利き勝負をするである!」


「キル先輩は鑑定士でもあるので審判をしてくださいっす。皆んなこれはという物を一つ買って来るっす。誰が1番買い値の割に良い物を見つけて来たかで勝負っす!」


サキがノリノリでケーナの提案に賛成した。

「面白そうね!皆んな一つだけ買って来るのよ。それをキル君に見せて鑑定してもらいましょう」


キルにとっては迷惑この上無い話だが、キルは女性陣の機嫌が良くなるなら仕方ないかと受け入れた。


グラとロムがニヤニヤしながらサキと少女達の露天商でのやり取りを眺めている。


マリカが古そうな木に彫刻を施された置き物を眺めている。どうやら掘り出し物かもと考えているらしい。直径20cmくらいの丸太を材料にして周りに綺麗な紋様を施された卵のような置き物だ。


「お嬢ちゃん、それは手の込んだ良い彫り物が施されてるだろう?8000カーネルにまけておくぜ、どうだい!」


「そ〜ね〜!これは〜〜、4000カーネル〜くらいかしら〜?」

マリカが値切りに入った。


「お嬢ちゃん、4000は無いだろう。7000でどうだい?」


「別に〜〜、欲しい〜訳〜じゃ〜無い〜の〜よ〜ね!」


「わかった!5000!5000にしてやる。5000にしてやるから買っていけ!」


「そう〜ね〜。どう〜しよう〜か〜し〜ら?」

マリカは考え込む。


「お嬢ちゃんには負けたよ!4000にしてやる。それで良いんだろう?」


マリカは頷いてニコリと笑う。4000カーネルを渡して置き物を受け取った。


マリカは置き物を抱えて踵を返しウキウキしながら引き返す。


「毎度あり!」露天商の親父がにんまりと笑っていた。



別の露天でケーナが訳のわからない変顔の仮面を買っていた。異国の司祭が使う仮面だそうだがいかにも怪しい笑い顔の仮面だ。2000カーネルを渡してケーナは仮面を受け取った。


ユミカは中に宝石が入っているかもしれないという原石を500カーネルで手にいれていた。一山積まれた石の山の中からよりどりみどりで選んでこれぞという石を選んだらしい。


サキは古そうな本を手に入れて得意そうだ。サキはその本の文字はわからないようだ。異国の文字か、古代の文字か?読めない文字の本だから価値があるかもという狙いらしい。


キルは少女達の持って来るガラクタを鑑定している。そして言いづらそうにガラクタだと鑑定結果を告げている。


ケーナにもサキにも「高い買い物でしたね」と告げる。


ユミカには石を割ればわかると言い、ユミカが石を割ると中にはあまり綺麗では無い水晶が出てきた。宝石にはなりそうが無い。500カーネルと言えども捨てたような物である。


マリカが4000カーネルで手に入れた置物をキルに見せる。4000カーネルは結構高かった。これがガラクタなのは痛い。


これもガラクタだろうと誰もが思っていると驚きの鑑定結果が出たのだった。

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