282 ミノタダンジョン 5

フロアボスのエンシェントドラゴンを倒して次のフロアに進むキル達だ。


扉を潜り第8階層に入るとそこはまた壁に囲まれた通路の続くダンジョンだった。

だが例によって魔物の気配は感じられない。ダンジョンコアがこの階層に有るに違いないと誰もが予想した。


「此処は安全そうだから此処で野営しよう」グラが言った。


「そうじゃな、時間的にも休みを入れる頃合いじゃ」


『15の光』は此処で一眠りをする。当然だが見張りは手を抜かず交代でおこなった。


目を覚ますと奥に向かって歩き出す。この階層にも宝箱はあるかもしれない。


暫く一本道を進むと扉があって中にダンジョンコアを発見した。部屋の隅に宝の箱が二つ置いてある。


「この前は一つミミックでしたね」

キルが近づき確かめた。


「これは問題ない宝の箱ですね、今開けてみます」


キルは宝の箱を開けると中からマジックバッグを取り出した。


「マジックバッグはいくつあっても良いですね」


マジックバッグをグラに渡す。


「これは俺が装備しても良いのか?」


「良いじゃろう、しっかり荷物持ちをするのじゃぞ!」

ロムがグラをからかった。


「もう一つの宝箱はやっぱりミミックですね」キルは忌々しいものを見るように眉間に皺を寄せる。


ユミカがミミックに進みより拳を構えた。


「ハーーー!」


渾身の一撃をミミックにお見舞いするユミカ。

ミミックが一撃で煙となって魔石が残った。


ユミカは何事もなかったような顔で魔石を拾うとキルにその魔石を渡した。

少しスッキリした顔をしていた。


「このダンジョンは此処までだね、早くサキの所まで戻ろうか。きっと待ち疲れているだろうからね」グラが踵を返して第7階層を目指して歩き出す。


第7階層のフロアボスは復活していたので全員で総攻撃して瞬殺した。

そしてキル達は帰りの道を一気に第3階層まで急ぎ戻る。


サキの所まで戻った頃には野営の時間になっていた。


「あら、早かったわね。お帰りなさい、意外と浅かったのかしら?このダンジョン」


「ああ、第8階層にダンジョンコアがあったよ」グラが答えた。


「まあまあの深さかしら……最深部のフロアボスはなんだったの?」


「エンシェントドラゴンだったよ。残念だが此処にもエンペラードラゴンはいなかった」


「そう、そう簡単には見つからないわよね。お疲れ様」


2人の会話を聞く『ガルーダの角』の3人はまさかの内容に唖然とする。

たった2日で第8階層まで往復したというのだ。

それもエンシェントドラゴンを倒してだと言う。


「あ、あの、ダンジョンコアは破壊したんですか?」ミキが聞きダムとクムがグラを見つめる。


「いや。ダンジョンコアは破壊していないよ。破壊すると魔物を狩ることができなくなるだろう。そうしたら皆んなが迷惑するんじゃないかって事で、俺たちはダンジョンコアは破壊しない事に決めてるんだ」


グラの答えを聞いてホッと胸を撫でおろすミキ。ダンジョンが死んでしまってはまた別のダンジョンに移動しなくてはならない。それは大きな負担を伴う場合もあるのだ。


ダムとクムが信じられないと言う顔で互いを見つめ合っている。

ダンジョンコアを破壊してダンジョンを攻略することは、このダンジョンの歴史に名前を刻むたいへん名誉な事だからだ。


そんな偉業を成し遂げられるのにみすみすやらずに帰って来るなんて2人には信じられない事だ。

多分他の誰に聞いてもそう答えるだろう……と2人は思う。


「あの、ダンジョンコアって壊すの難しいんですか?」


「いや、別に反撃してこないし……難しいことはないと思うけど」


勿体無いな〜と思う2人だった。


「1泊した後で地上に戻るからそのつもりでね、クムさんは地上まで歩けそうかな?」


「歩けなくても俺が背負いますから大丈夫です」とダムがいった。


「大丈夫だ、体の傷は治っているしだいぶ栄養も取って体力もだいぶ回復してますよ」

クムは歩けると主張した。


「うん、その様子なら、どうやら大丈夫そうだね。良かったよ」


グラは穏やかな表情で2人を見る。

良い人みたいだな…助けられて良かった。

地上まではそれほど大変ではないだろう……クムの様子を見てグラはそう判断した。


「此処は一日中明るいけれど一晩寝るつもりで休みをとってください。明日は歩きますよ」

グラはそう言うと眠るために2人の側を離れるのだった。

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