277 聖槍とドラゴンナックル
翌日第14階層を進む『15の光』だったが魔物の気配が無くその後大きな門と扉に遭遇した。
「やっぱりか!」
みんなが薄々考えていたようだがダンジョンコアが有るようだ。ゴブトレダンジョンにはドラゴン種は居なそうだ。
扉を開けて中を確認するとやはりダンジョンコアが存在する。このフロアが最深部に違いなかった。
「それでは引き返そうか?」とグラ。
「待って、あそこに宝箱が置いてあるわよ」
サキが宝箱を見つけて指差した。
斥候のジョブを持つキルが罠がないことを確かめてから宝箱を開けた。
宝箱が開くと光が宝箱を包みその光が物体化する。
「『聖槍エターナルルクナバード』………聖槍が出てきたみたいですけど?」
キルは槍身に古代の文字のようなものが刻まれている聖槍を掲げ鑑定結果を口にする。
「何だか凄そうな槍だね!俺たちの中で槍がメインウェポンなのはモレノだけだからモレノが使うのが良いのかな?」
グラが皆んなの顔を見回す。
皆んなが頷く中モレノが首を横に振った。
「そんな凄いものもらえないです〜!」
「別に気にすることはないわよ!売ってもお金になるだけなんだから、あなたが使って強くなってくれた方が皆んなのためになるわ!」
サキがハッキリとモレノが槍を使うメリットを伝えた。
「そうっすよ!お金はもういらないじゃないっすか!こういう武器はなかなか手に入らないっすよ。モレノに使って欲しいっすね」
「そう」ルキアが聞き分けが悪いと殴るぞという目でモレノを見る。
「わ、わ…わかった。私が使わせてもらう。ありがとう皆んな。きっと皆んなの役に立つ」
モレノが『聖槍エターナルルクナバード』をキルから受け取った。
槍を見つめるモレノの茶色の瞳は喜びに満ちていた。
「それでは今度こそ引き返そうか?」とグラ。
「待って、向こうにも宝の箱が置いてあるわよ」
サキが向こうを指差す。
「もう一つ有ったのか?気づかなかった」と言いながら不審に感じるキル。
そして罠がないかを確かめた。
「ミミックです!宝箱に化けた魔物です!倒しましょう」
「『聖槍エターナルルクナバード』の威力を見ろ!」
金色の髪を振り乱して一早く反応するモレノ。
聖槍が宝の箱に突き刺さる。
モレノが聖槍にMPを込めるとミミックが苦しみながら光を発して消滅した。
後には小さな魔石が残った。
「えへへ!」得意げに聖槍を見つめるモレノ。
「やっぱり聖槍は凄いものであるな!」
ユミカが憧れる様に緑の瞳で聖槍を見つめた。
グラは周りじゅうを見回し宝箱がもう無いかを確認した。
「それでは今度こそ引き返そうか?」
そう言いながらグラはサキの方を見る。
「引き返しましょう。もう此処には用はないわ!」
全員が扉の外に向かって歩き出した。
「このダンジョンにはドラゴンがいませんでしたね」
「そうじゃな」
「それに1番強かったのがツインヘッドシルバーウルフっすから、拍子抜けっすね」
「ドラゴンが居なくて残念ですわ」
クリスの赤い髪が揺れる。
先頭ではモレノとルキアが露払いしていた。
3日をかけて地上に戻り4日目にライネルにユミカのドラゴンナックルを受けとりに行った。
工房主が得意げにドラゴンナックルを取り出して見せる。
「どうだい!良い出来栄えだろう。着けて具合を調整しよう」
工房主はドラゴンナックルをユミカの手に合わせて微調整を始めた。
「どうだ、これで指もスムーズに動かせるはずだ。その辺の物を持ってみろ!」
ユミカが装着したドラゴンナックルを見て感激をしている。
グー、パーと手を動かして具合を確かめる。
「良いぞ、楽に動くしとても軽いであるな」
「金属の様に曲がりっぱなしって事はないからな、気兼ね無しにぶん殴って大丈夫だぞ」
工房主が腕を胸で組んで偉そうに言った。ドヤ顔だ。
「費用は本当に残ったドラゴンの鱗で良いのですか?」
「ああ、構わないぜ、残った鱗で幾つも加工用の道具を作らせてもらった。これからの仕事が楽になって助かるぜ。ありがとうよ!」
「ドラゴンの鱗って何を使って加工するんですか?」
キルは興味本位に聞いてみた。
「ドラゴンの鱗は基本、ドラゴンの鱗で加工するしか無いな。それも格上か同等のドラゴンの鱗だ。
だから同じドラゴンの鱗を使って加工する事になるのが普通だ」
「レッドドラゴンの鱗ではエンシェントドラゴンの鱗は加工できないという事ですね?」
「ほとんどの場合はな。極端にレベルの高いレッドドラゴンの鱗ならもしかしたら若いエンシェントドラゴンの鱗を加工出来るかもしれないという程度だな」
「なるほど、同じドラゴンの鱗でも個体差があるわけですね。確かにそうですね」
確かにドラゴンのレベルによって同じ種類のドラゴンでも強さに差があるのだから鱗の強度だって違うのだろう。それにどの部分の鱗かによっても違いはあるに違いない。
「良い仕事をしてくれて感謝します。また宜しく頼みます」
キルは工房主に礼を言うと踵を返した。
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