275 ベルゲンブルグ
王都に移動して宿を取り王都観光を始めるキル達。
王都に来た事があるのはクリスとグラ達5人だけだ。クリスは父に連れられて王宮や貴族の屋敷を訪れたくらいで馬車の中から街並みを見た事があるという程度の認識しかない。
「これが王都ベルゲンブルグですか?」
キルは王都の城壁を見上げて感心する。
エリスがピンク色の瞳を輝かせて微笑んだ。
「大きいですね〜」「うん。うん」
「ロマリアのローリエも大きかったけどベルゲンブルグも負けない位大きい街だね」
「うん」いつものように言葉少ないルキアが銀色の髪をなびかせる。
「何か〜美味しい〜もの〜食べたいねー」
「そうであるな」
「王都には高級なお店がたくさんあるわよ!」
「サキさんのおすすめはありますか?」クリスが尋ねる。
「そうね〜、まだあれば良いんだけれど……雰囲気の良いディナーショーを楽しみながら美味しい食事を楽しむ事ができる店があったわ」
「良いっすね!自分ディナーショーって見た事ないっす。是非そこで食べたいっす」
「予約制じゃないのか?確か昔、来た時もそうだった気がするけど」
グラが眉根を寄せる。
「あら、別にそこにこだわらなくても良いわよね」
「「はい」」
「そもそもあの店が今あるかもわからないし……」
「そうっすよね」
宿から繁華街の方に向かいながら周囲の気になる店に足を止める。
少女達は服やアクセサリーなどの小物を見つけては足を止める。
流石に王都の品揃えは多岐に渡り少女達は嬉しそうに商品の品定めを楽しんでいる。
昼食を食べながらグラ達は飲酒を楽しむ。
グラ達3人を店に残し、少女達はサラを中心に食後はまたショッピングに出かけた。
キルはサラ達の付き添いだ。
夕食に良さそうな高級レストランの予約も見つける事ができた。
ダンジョン用の食べ物も多量に買ってストレージに収納しておく。ストレージ内では時間が止まっているのでストレージにしまっておけば、あったか食材はあったかいまま食べれるのだ。
キルは蝋皮紙を2万枚ほど幾つかの店舗で調達した。もう神級ストレージ職人なのでこれ以上無理にスクロールを作る必要はないが紋様辞典の中身を作って検証するのも楽しみの一つなのだ。おかげで様々なスキルやアーツを身に付けるが覚えきれないのでその後使われないスキルやアーツがたくさんできている。
ただ『15の光』のメンバーに役立ちそうなスキルはスキルスクロールを渡している。
費用はもう気にしない。メンバーが強くなるのは全員にとって恩恵のある事だし全員金に困っていない為細かい事は気にしなくなっていたのだ。
その為メンバーはたくさんの魔法やアーツを身につける事ができるようになった。ただ使う魔法やアーツは有効だと思う限られたものになってしまう。それは効果の強いものと弱いものでは強いものを選んでしまう為弱いものは使われなくなってしまうからだ。
王都では武器や防具も品揃えが豊富だ。
なのでキルは武器屋や防具屋も見てみたかった。
「俺は武器や防具も見てみたいんだけれど」
「良いわよ、キル君には見せられないものも買いたいしい1人で行って来て」
俺に見せられない買い物………キルが考えているとサキがキルの耳元で囁く。
「下着とかは見せられないでしょう」
「は、はい。そうですね、俺行ってきます」
キルは顔を赤らめてその場を離れるのだった。
キルは1人で武器やに入った。
貴族御用達の大きな武器屋だ。
各地から選りすぐりの逸品を集めている。
剣、槍、盾、弓と矢、魔法の杖、どれも素晴らしい名工の作品が奥の方に飾られている。
近くで触れられそうな場所には一般的な良品が各種取り揃えてある。
キルはそれらに目もくれず奥の傑作の前に進んだ。
「お客様、お目が高い。こちらは最高級の品が飾られているコーナーで御座います」
店員は丁寧な口調で応対するのだが明らかにキルの懐具合を怪しんでいる表情だ。
キルは構わず飾られた逸品を眺めた。キルは剣、槍、盾は持っているが弓矢と魔法の杖は持っていない。
「あの弓はいくらですか?矢は何本有りますか?」
「弓は5000万カーネル、矢は20本で100万カーネルでございます。どちらも最高級の品となっております」
ここで貴族に対してなら手に取って見るように勧めるところだろうが、店員は薦めない。
キルはストレージから金塊を取り出して台の上に置いた。
「持ってみても良いかな?」
店員は1億の金塊を見て手揉みを始める。
「勿論でございます。ささ、どうぞお試しください」
キルは最高級の弓の弦を引いてその感触を確かめた。
そして矢をつがえて狙いを定める。
「うーーーん。悪くないね」
「そちらは弓も矢もミスリル製となっており魔力も込めやすくなっております。いかがでしょう?」
「いただくよ。あとはその杖も見て良いかな?」
一瞬不審な表情をした店員だったがすぐに答える。
「勿論でございます」
キルは杖を手に取り魔力の通りを確かめる。
その大きな杖の先には大きな赤い魔石が付いていた。
「レッドドラゴンの魔石かな……」呟くキル。
「その通りでございます。流石一目でおわかりになるとは素晴らしい。このような杖はお持ちなのですか?」
「いえ、杖は持っていないので欲しいかなと思いまして」
「さようでございますか、ありがとうございます。この杖でしたらば魔法の威力を2倍にできると言われております。当店でもなかなか入手困難な逸品でして、1億ほどしてしまうのですが………」
店員が額に汗をかきながら手揉みをしていた。
キルは金塊をもう一つ取り出して積み上げた。
「じゃあ、この杖もいただくよ」
「ありがとうございます」
店員は満面の笑顔だ。
「剣などにご興味はございませんか?」
どうやら店員はキルのことを武器コレクターか何かだと思ったようだ。
普通弓と魔法の杖の2つを使える者はいないのだ。
「大丈夫。剣は予備も持っているので」
キルは買い物を切り上げて店を出るのだった。
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