267 エンシェントドラゴン1

「熔岩の熱が暑すぎますね。あそこに見えるのが火山の火口につながる穴です。一旦火口を通って外に出ましょう。ドラゴンを外に誘き出してから戦うのです」


「そうだな、あそこでは何もしなくても少しづつ体力が削られていきそうだからね」

グラがキルの意見に賛同した。


「フライで飛んで火口から外に出るのね。」


「はい。殿は俺がやります。そしてあのドラゴンをおびき出して外まで連れていきますよ」


「よし、皆んな俺について来てくれ、フライで飛んで外に出るぞ。キルは殿で上手くドラゴンをあしらってくれ」

グラが真剣に皆んなに指示を出した。


「行くぞ!」


グラの掛け声で皆んながフライで飛行を始める。

火口に向かってドラゴンの横を通り抜けていく。


ドラゴンは目を覚まして起きあがった。

突然の侵入者に驚いたような顔をした後でドラゴンブレスの体制に入った。


キルはドラゴンブレスから皆んなを守るように空中で立ちはだかる。


「拡大シールド!」


キルは盾アーツで広範囲のエネルギー防御シールドを展開した。


ドラゴンブレスがキルのシールドを襲い弾き返される。


ドラゴンは翼を大きく広げ飛行の準備に入っていた。逃げるキル達を追いかけるつもりだ。


キルはドラゴンが追いかけてくるのを見ながら逃げていく。


火山の火口から外に飛び出してドラゴンが追ってくるのを待ち構えるメンバー達。

キルが火口から飛び出すと後を追ってドラゴンも飛び出して来た。


待ち構えていたメンバーがドラゴンの後ろから追いかける形になった。


ドラゴンの飛行速度は決して速くはない。後方からの遠距離攻撃がドラゴンを襲う。

12人の一斉攻撃を受けドラゴンが墜落した。


『ズドドーン』ドラゴンは地響きをたてて地面に突っ込む。

ドラゴンは羽にかなりの攻撃を受けて飛行困難になっているようだった。


ドラゴンの周りを飛び交うメンバー達を見ながらドラゴンが大きな声で鳴いた。

「ギャオーース!ギャオ、ギャオーース!」


そしてドラゴンが魔法攻撃を始めた。

ドラゴンの周囲の岩を念動力でメンバー達に抜けて飛ばし出したのだ。

一度に数十の岩礫が全方向に放たれる。


メンバー達は飛びながらその岩礫を回避した。


ドラゴンは当たりそうもない攻撃を続けるのをやめてもう一度飛行を試みるが上手くいかなかった。


その時キルは遠方から近づく飛行物体を感じ取る。


「何か飛んできます。もう1匹ドラゴンがいたのかも?」

キルはメンバーに警告を発した。


そう、このドラゴンは番いだったのだ。一回り大きなエンシェントドラゴンが通り過ぎる。その衝撃波にキル達は飛行バランスを崩された。


エンシェントドラゴンは大きく旋回してキルに向かって来た。キルを最強の相手と見てとったのかもしれない。


ドラゴンの爪がキルを襲う。キルは盾で受けるがその威力に地面まで叩き落とされた。


岩を弾き飛ばしながら地面にめり込むキル。シールドで身体を覆っていたために見た目ほどのダメージはない。


キルはえぐれた地面から身を起こすと盾をしまって剣を握った。

そして高速で飛び上がりドラゴンに一撃を入れる。


キルの横にはらった一閃をドラゴンは右手で受け止めようとしてその4本の指が宙に飛んだ。


「グワーーー!」ドラゴンが叫び声を上げた。


その時ドラゴンの右後方にいたクリスの爆烈魔法が炸裂した。


爆発に身をこがしバランスを崩すエンシェントドラゴン。


キルの次の剣撃を避けるためドラゴンは左手でキルに攻撃を加えた。

ドラゴンの爪がキルを襲ったがキルは剣で受け止めた。


もう1匹のドラゴンがドラゴンブレスをキルに向けて放つ。

キルは高速で飛行してそのブレスを危うく躱した。


だがこのブレスがこのドラゴンの最後の一撃だった。

グラ、サキ、ホド、ケーナの攻撃を受け今またエリスとユリアに斬りつかられているドラゴンはもう虫の息だ。


そしてユミカの一撃が決まりドラゴンが地に身を沈める。


これほどの攻撃を受け続け、ドラゴンといえども、もう立ち上がる事はできないはずだ。だがまだ立とうとして震えていた。


もう1匹のドラゴンがそのドラゴンを守るように覆い被さった。

そして威嚇するように周囲を睨み回す。


2頭のエンシェントドラゴンは番いである。1匹がもう1匹を守ろうとする。そして魔法を発動したのか2匹のドラゴンが光に包まれた。回復魔法を使ったのだ。それも高位の回復魔法。さっき切り飛ばした指も元に戻っていた。そして倒れていたドラゴンもまた立ち上がったのだ。


「オイオイ、マジかよ」キルが驚きを口にする。


「エンシェントドラゴンだから魔法をつかても不思議はないが、高位の回復魔法を使うとは厄介だな」グラも眉根を寄せた。


「羽も治ってまた飛びそうね」サキが警戒を促した。


これでまた仕切り直しということだろうか、嫌な予感がキルの脳裏をよぎった。

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