246 円卓会議
ロマリア王国の王都ローリエでは戦いに敗れて戻ってきた第1〜2軍の様子を見てベルゲン王国を侵略する事が簡単ではないことが一目瞭然となっていた。
ロマリア国内での戦闘とは言えこの戦いの相手がベルゲン王国の兵であるとしてベルゲン王国からの侵略だと抗議する事も批判することもできない。
何故なら攻撃をおこなったのは緑山泊の人間でベルゲン王国の兵ではないのだから。
外交ルートで批判をしてもそれは緑山泊によるものでベルゲン王国とは無関係、逆に4万の軍はベルゲン王国を侵略しようとするものではなかったかと批判される結果になった。
勿論軍事訓練であるとうそぶくロマリア王国であったが。
この戦いが原因で両国が戦争状態に突入する事は避けられた。
ロマリア王国はベルゲン王国強しとして侵攻を諦めたし、ベルゲン王国はロマリアに侵攻するほどの軍事力を緑山泊との戦いの後ではまだ持っていなかった。
それにベルゲン王国を狙っていたのはロマリア王国だけではなかったのもベルゲン王国がロマリア王国に攻め込めない理由でもあった。
両国は敵対意識を持ちながらも自粛するしか無かったのだった。
宗教国家スタインブルクも王が交代して弱体化したに違いないベルゲン王国を狙う国の一つであった。
ベルゲンシャインはゾルタンによって宗教国家スタインブルクに警戒するようにアドバイスされていた。
ロマリア王国については緑山泊がおさえに当たるがスタインブルクについてはベルゲン王国が対応をしなければならない。
そしてスタインブルクもベルゲン王国侵略の準備を調えつつあったのだ。
* * *
宗教国家スタインブルクの教都スタインブルクにある聖フェルミネ大聖堂。
その最深部にある神託の間の円卓を8人の男が囲んでいた。
「大教皇スカヌス様、ロマリア王国軍がベルゲン王国に向かう途中で大打撃を受け引き返したそうにございます」
教皇ルミナスは渋い表情で報告した。
大教皇スカヌスも渋い表情でその報告を聞いている。
第1聖騎士団団長リッター将軍は胸で腕を組んでルミナスを睨んでいる。
「ロマリア王国軍を破ったのはベルゲン王国軍ではなく、緑山泊の罪人軍だという話らしいな!」と第2聖騎士団団長キューリー将軍。
「ロマリア王国も大した事はないですな」
教皇ボストンが笑う。
「いや、緑山泊軍にはベルゲン王国軍も破っているし、今回のロマリア軍も4万の大群と聞くぞ」と第3聖騎士団団長ナイル将軍。
「緑山泊とはどれほどの戦力を有しているのでしょうか?恐ろしいですな」
教皇キングスレイが笑う。
「耳を疑うような話だな」第4聖騎士団団長ロジャース将軍もニヤニヤしている。
本当に信じていないようにも取れる表情だ。
「戦いは兵の量より質という事でしょうな。緑山泊には4500程度の人間しかいないと聞きますから」ナイル将軍が分析する。
「まあ、進化ボーナスで進化前と後では10倍近い差がステータス上ではできますからな。初級の民兵10人に対して中級戦闘職が1人で釣り合うという事。実際にはそうはいきませんがな。」キューリー将軍もナイル将軍の意見に同意した。
「という事は聖級である将軍達は1人で初級民兵1万人に匹敵するという事ですかな」
教皇ボストンが驚きの声をあげる。
「実際の軍は中級や上級の兵も混ざりますから1000人に匹敵といったところでしょう。」キューリー将軍が笑う。
「一騎当千という事ですか。なるほど素晴らしい」と教皇キングスレイが感心の声を上げた。
「実際魔王討伐ともなれば少数精鋭でのぞむしかありませんからな、昔から勇者パーティーがそれに向かって来たように、強すぎるものには初級では傷一つつけられない」
ナイル将軍が解説をした。
教皇ルミナスが唸る。
「うーん!つまり緑山泊には魔王なみに強いものがいるという事か?」
「魔王なみかは分かりませんが王級かあるいは神級の者が複数いるのでしょうな」
ナイル将軍が眉をひそめる。
(キル達が緑山泊に落ち着いたのは本当のようだな)
ルミナスはキル達と戦った時のことを思い出していた。
あの時、特級光精霊でさえも瞬殺していたと……
「ベルゲン王国侵攻はいかがいたしますか?スカヌス様?」
スカヌスは顎に手をやり少し考えてから言った。
「緑山泊とベルゲン王国は戦っていたのであろう。計画通り侵攻せよ。」
「「「は!」」」
「計画通りまずはダミアとアムテルを攻略する事でよろしいな」教皇ルミナスが第1聖騎士団団長リッター将軍に確かめる。
「第2聖騎士団はダミア、第3聖騎士団はアムテルに向けて進軍開始。第1、第4聖騎士団は本国に待機ベルゲン王国からの攻撃に備える事とする。」
今まで黙っていたリッターだったが各軍に命令を下した。
スタインブルクのベルゲン王国侵攻が始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます