245 ロマリア軍侵攻

「ゾルタン様、とうとうロマリア軍が動き出した」

ジルベルトが報告する。


「やはり来ましたか」

ゾルタンはにこやかに笑う。


「王都ローリエとその衛星都市ファルゴやドワーデンなどから兵を集めているようだ」


「なるほど、どのくらい集めているのですか?」


「まだ敵軍の規模は不明だがいずれ判明し次第報告するよ。いずれにしても万単位の軍なのは間違いない」

ジルベルトは表情も変えずに続ける。


「中心になる軍が王都周辺の兵という事で行軍ルートはある程度絞れる。地形情報は集めてあるし奇襲しやすい場所を絞る事も可能だ」


「ふふふ…もう少し待てば相手の規模もわかるし対応策も決められるという事でしょうか?」


「そういう事」


「ふふふ……待ちましょう。時が来たら頼みましたよ。ジルベルト」


「はい!」

ジルベルトが頭を下げた。


周りに控える緑山泊の幹部達もゾルタンのジルベルトへの信頼を感じている。




    *  *  *



ロマリア王国五竜大将軍槍王ヘヴンズが2万の兵を率いて王都ローリエを出撃した。


続いて五竜大将軍盾王ビッグベンが2万の兵を集めしだい出撃予定だ。


弓聖リンメイ、剣王バットウ、騎神キングナバロ、3人の五竜大将軍も出陣の様子を見つめている。


「今回はヘヴンズに先を越されたか!」

騎神キングナバロが悔しそうに第一軍を見据えた。


「ククク、今回はヘヴンズとビッグベンに任せようではないか、キングナバロ」

バットウがニヤリと笑いリンメイを見る。

リンメイも頷いた。


今回はこの3人に出陣の命令はなかったらしい。


ローリエ郊外に集められる民兵、冒険者、地方貴族軍を振り分けて一つの軍が2万に編成される。


総勢4万の軍がベルゲン王国侵略に向かう。

ロマリア王国にすれば全軍を派遣しているわけではないのでちょっとした様子見も兼ねての出兵なのだろう。


ベルゲン王国が簡単に侵略できるほど弱体化している様なら追加で軍を派遣するに違いない。そのときは残った3将軍もいずれは出兵するのかもしれない。


ヘヴンズとビッグベンの軍4万は、アルバスに駐留した後ベルゲン王国に侵攻する計画だった。




    *  *  *



緑山泊



「ゾルタン様、とうとうロマリア王国軍がこちらに向かってきている様だ。第1軍がヘヴンズ五竜大将軍の指揮する2万、第2軍がビッグベン五竜大将軍の指揮する2万の総勢4万の軍勢と判明した。」


「ジルベルト、緑山泊はどうすれば良いですか?」

ゾルタンがジルベルトに指示を求めた。


ジルベルトがキル達の方を向いて指示を伝える。

「『15の光』に頼みたい。ドグリとテクアの間でロマリア軍に爆撃を仕掛けてください。あの辺は比較的道が狭くて逃げ場も少ない。敵の3〜4割に損害を与えれば彼らは撤退を始めるはずだ。一方的にそれほどの損害を与えれば、ロマリアはベルゲン王国に攻め込む事をあきらめるだろう」


ゾルタンはニッコリ笑ってキル達を見た。


「わかりました。では早速爆撃に向かいます」


キル達はジルベルトの指示に返事をすると部屋を出てフライでドグリに向かった。



ノルンで一晩宿をとり次の日にはテクアとドグリの間でロマリア軍を発見して爆撃をする予定だった。


「あれだ、見つけたぞ!攻撃開始だ」

キルがいち早く索敵でロマリア軍を発見した。


飛行し続け程なく肉眼でもロマリア軍が確認できる。

射程に入るなり攻撃を開始する『15の光』。


おそらくロマリア軍でキル達を見つけられているものは少数に違いない。

民兵などにはまだ見つけることのできない距離から攻撃は始まった。


キノコ雲が立ち上り万単位の矢が降り注いだ。


キル達は攻撃を続けながらロマリア軍の上空を飛び長い軍列の後方へと向かった。


ロマリア軍の兵はどこから攻撃されているのかもわからないまま逃げ回る者がほとんどだ。


ごく少数の索敵使いがキル達の姿をとらえて指をさす。

それに気づいた遠距離攻撃能力を持つ者は反撃を開始するがその数は少ない。


ましてやその攻撃がキル達に届いたものはほんの僅かでしか無い。


上空からの攻撃にロマリア軍には有効な反撃手段が無かった。

遠距離攻撃を放っても攻撃を一発も当てる事はできなかったからだ。


『15の光』はロマリア軍の上空を数回往復をして爆撃を続けた。

眼下では阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。


言いつけ通り3〜4割の敵兵を討ち取ったと思った時にはロマリア兵は皆散り散りになって逃げていた。


そして『15の光』は飛び去って行く。



「撤退!撤退!」

ヘヴンズとビッグベンから撤退の指示が出てあちこちで撤退の声が響いている。


叩かれるだけ叩かれてロマリア軍は撤退をよぎなくされたのだった。

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