244 たまの休日
「キルさん、久しぶりに街でお買い物とかしませんか?皆んな喜ぶと思うんですが、どう?」クリスがキルに寄ってきて笑顔を見せる。相変わらず可愛い。
クリスも皆んなも14歳になっている。
「そうだね、ルクスブルグの街にでも行ってみるかい?」
キルの提案に少女達も嬉しそうに騒ぎ出した。
「自分服を買いたいっす」
「私も買いたいなあ〜」「うん。うん」
「それは良いであるな!」
「身体も〜大きくなったから〜、新しい〜服も必要〜よね〜」
「マリカは胸が大きくなったからね!」
モレノがハッキリと確信をつく。
ルキアがモレノを睨んだ。
「良いわね!私も服は見に行きたいわ。」
サキも話に加わる。
「街に行くなら美味いものでも食べようかな!」
「そうじゃのう」
ゼペックとグラ達は食い気が勝っているらしい。
「そう言えば久しぶりですものね!美味しいものを食べてレパートリーを増やさなきゃ!」クッキーは料理研究の足しにするつもりらしい。
「そうと決まれば善は急げね!ルクスブルグまで一っ飛びしましょうか」
『15の光』久しぶりのお出かけに出発だ。
街の前までフライで飛んで街の中には歩きで移動。
いつもながら15人での行動は周囲の目を引く。
女子10人は女性服その他の女子用のお店に入る。男子禁制の品の店にも入るため別行動だ。
キル達は男用の服を見て回る。集合場所はとある喫茶店に決めておく。
男達はさして服が欲しいわけでもないが数着を買っておいた。
そして早々に喫茶店で一休みのはずがグラ達は昼間から酒場に入ってしまった。
ゼペック爺さんも一緒だ。
仕方なくキルだけ待ち合わせの喫茶店で時間を潰す。
「おや!やっぱりゴテじゃないか?久しぶりだねえ」
声の方を向くと声の主はあのゴリアテだった。
「あ!ゴリアテさん!」
「よ!元気にしてたかい?」ニッコリ笑うゴリアテ。
「この前はお世話になりました」
「今は緑山泊にいるのかい?」
「はい。あれから少しあってその後はずっと緑山泊にいるんですよ。」
キルは照れながら言った。
「この前の王国軍との戦いじゃあ敵味方に分かれちまったからねえ!アチキは気が気じゃあ無かったよ。まあお互い無事で何よりだけどさあ」
ゴリアテは相変わらずビキニアーマーを着用している。そしてムキムキだ。
「本当にそうですね。良かったです。でもゴリアテさんなら大丈夫でしょうけどね」
「そうでもないさ、運が悪けりゃ死んでいたねえ。ルクスブルグの軍はほとんど戦わなかったからこうしていられるけどねえ。まあそれもベルクレスト様のおかげさあね」
ゴリアテが苦笑いをする。
「そう言えばガングルがベルゲンシャイン王子だったとは知らなかったよ!今は王様か。世の中わからんもんだ!」
「そうでしたね。俺も知りませんでしたよ」
「ただものじゃないとは思っていたけれどもなあ!もしかしてお前も王族か?」
笑いながらゴリアテがキルにき聞く。
「いえいえ、俺はただの平民の子ですよ。カリナ村というところで生まれました」
「だろうな、田舎者の匂いがするものなあ!」
「え!本当ですか?」
自分の匂いを嗅ぐキル。
「嘘に決まってるだろう!そういうところが田舎者なんだよ!」
ゴリアテが笑った。
「もう〜、からかわないでくださいよ〜」
キルも笑った。
「ガングルが大恩赦をしたおかげでゴテ達の罪も許されたんだろう?前よりよく喋る様になった気がする」
確かに初めてゴリアテ達にあった頃は少し距離をとって接していた様な気がする。
一歩引いて自分のことをできるだけ知られない様にしていた。
それは自分が追われているのを知っていたから。
足取りを隠そうとしていたからだ。
「ゴリアテさん、俺の名前はゴテじゃなくてキルと言います。もう誰にも追われていないので本当の名前を公言しても大丈夫です。ベルゲンシャイン陛下のおかげですね」
「そうか、ゴテの本当の名前はキルというのか、まあ、聞いてはいたけれど。キルという冒険者が牢破りをして逃げているってのはねえ」
「そうですか」
「それとロマリアの裏ヤオカ流200人を皆殺しにした15人組がその牢破りの一行だということもねえ」
「それも知っているんですね」
実際は3人でやったことなんだけれどもね。
「けっこう噂ってのはすぐに広まるものさねえ」
ゴリアテが笑う。
キルも笑うしか無かった。
「お、仲間が来た様だな、それじゃあアチキは行くぜ!じゃあな!」
向こうからやってくるクリス達を見つけゴリアテは去って行った。
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