242 国王死して
王国第1軍第2軍は後方に上がるキノコ雲を見て行軍を止めた。
第2軍が第3軍救助のために反転するがクリスとサキの爆裂魔法に遮られて第3軍に合流することは許されなかった。
第2軍も魔法による被害を出している中ベルゲンダイン王が討ち取られたとの報告を受ける。
「なんだと!まさかそんなことが。」
第2軍の指揮官王級魔術師スリザリが膝をついて頭を抱えた。
第2軍が救助に向かえないうちに国王が討たれてしまったのだ。
自責の念がスリザリンを襲った。
「おのれ!緑山泊め!してやられたか。初めからこれを狙っていたのか」
反転してきた第1軍の指揮官ナックルがスリザリンの元を訪れた。
「おい、スリザリン。王が討たれたという噂が流れているが本当では有るまいな?」
「確認情報だ。王は討たれた。」
「後方から王を狙っての奇襲攻撃だったのか。あのキノコ雲は俺のところからも見えたぞ」
「あの爆烈魔法に遮られて王を助けに行けなかったのだ。敵は第3軍のみを狙ったのだよ。まんまとやられた!」
苦悩に顔を歪めるスリザリン。
「お前のせいじゃない、気にするな。こんな奇襲はやりたくてもできんぞ!どういう連中なんだ?戦わずに済ませられればその方が良い。王も死んだのなら撤退しようじゃないか」
「ク!悔しいが相手が一枚上手かもしれんな。緑山泊には手を出さん方が良いかもしれん。王都に引き返そう」
「ボルタークとウェンリーには撤退の知らせを送ろう。奴らならなんとか逃げおおせるに違いない。そもそも寡兵の緑山泊が追撃戦を仕掛ける利点はあまりないだろう」
「そうだな、帰る軍に戦いを仕掛けるのは無駄というものだからな」
ナックルとスリザリンの指揮の元王国軍は王都に引き返して行った。
* * *
貴族連合軍幕舎
「大変ですぞ!国王が討ち取られたそうにございます。」
そう言いながら入ってきたのはルビーノガルツ侯爵だ。
「そうらしいな、援軍は王都に引き揚げているそうだ。」そう答えるのはビームルク公爵ベルゲンケルトだった。
「我らの進退も考えねばなるまい」
ルクスブルグ公爵ベルクレストはその横でうつむいている。
「ふー、もう撤退しても良いのではないかな。王が死んだ以上次の王を決めるのが先じゃ」
「さようですなあ。ベルクレスト卿」
「こうなったら緑山泊で保護されているというベルゲンシャインを救い出し王に据えたらどうじゃ!」ベルクレストが提案する。
「そう提案すれば緑山泊軍は我らに攻撃してくる事はなかろう。なにせベルゲンシャインが王になれば緑山泊は安泰じゃからな」
「さようですなあ。ベルクレスト卿」ベルゲンケルトはベルクレストの意見に従っている。
「その交渉とベルゲンシャイン様の引き取りは我々2人が行って参りましょう。」
ボルタークが自ら名乗りを上げた。
もちろん2人というのはウェンリーと一緒にという意味だ。
「そうしてくれると安心だ。頼むぞ。」
ボルタークとウェンリーが頷いた。
そして2人が緑光山軍に向かった。
緑光山に向かった2人は程なくしてベルゲンシャインを連れて戻ってきた。
「お懐かしゅうございます。」
ベルゲンシャインがベルゲンケルトとベルクレストに頭を下げた。
「本当に生きておったとはなあ!信じられぬがその顔は間違いなくベルゲンシャインだ。苦労したのだろうなあ」ベルクレストがベルゲンシャインを見て感激している。
「ベルゲンシャインよ、お前なら次の王に相応しい。ベルゲンダインよりよほど良い王になるだろう」ベルゲンケルトもベルゲンシャインを歓迎した。
「お二人が私の事を応援してくだされば、事はなったも同然です。よろしくお願いいたします」ベルゲンシャインが2人に頭を下げる。
「ワシは元々ベルゲンダインの悪党よりお前の方が王に向いていると思っていたのだ」
「それはワシも同じだ。よく生きていてくれた」
3人は感激の再会を果たしたようである。
ボルタークとウェンリーももらい泣きをしていた。
その後貴族連合軍は王都に向けて行軍を開始した。
王都に行ってベルゲンシャインを王に据えるためであった。
ゴリアテがガングルがベルゲンシャインであると知ったのはこの行軍の途中であった。
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