241 ベルゲンダイン親征 2
緑光山軍幕舎
「王国が援軍を派遣した。ベルゲンダインも自ら出陣している。思惑どうりだな」
ジルベルトが口の端を上げて満足そうに幹部を見回した。
ゾルタンがにこやかに笑う。
「これでベルゲン王国の頭をすげ替えられるというものですね」
「さて軍議に入ろうか。今度の作戦も奇襲だ」
ジルベルトが続ける。
「今王国軍は山間の道を三軍に別れ長蛇の列をなして移動中だ。先頭はそろそろ黄燐山あたりに差し掛かる頃だ。我々の目標は第3軍中央付近に居る国王ベルゲンダインの首、それ以外はどうでも良い。」
ジルベルトがニヤリと笑う。
「ウェンツ、ヤンゴン、トクダゼ三兄弟は騎兵200を連れて黄燐山東の山道を抜けて敵第三軍の最後尾をやり過ごしたら後ろから攻めかかれ。『15の光』は黄燐山廃城あたりに潜み、サキ、クリス、は最後尾のウェンツ達が攻め込んだ鬨の声を耳にしたら第3軍の先頭に範囲攻撃を開始して第2軍との分断を図れ!ケーナ、マリカ、は第3軍先頭から矢の雨を降らせ第3軍の殲滅を狙え!キル、グラ、ホド、ロム、エリス、ユリア、ユミカ、ルキア、モレノは第3軍中央に切り込みベルゲンダインの首を取れ!首を取ったらそのまま第3軍を殲滅しながらウェンツ達と合流、間道を使って帰還せよ。」
「「「ハイ!」」」
* * *
『15の光』は空から気づかれないように黄燐山の廃城付近に潜伏した。
ウェンツ達は地元の者以外は知らない黄燐山東の山道を抜けて王国第3軍の通り過ぎるのを待った。
ウェンツ達200の騎兵が第3軍の最後尾から襲いかかる手筈だ。
「ヨシ!かかれ!」
ウェンツの掛け声と共に騎馬隊200が王国軍の最後尾に襲い掛かった。
ウェンツを戦闘にヤンゴン、タクダゼ三兄弟が突っ込んでいく。その後に200の騎馬隊が続いた。
ウェンツ達の攻撃に王国軍の最後尾が混乱した。
「オーリャー!!」ウェンツが王国軍を突き崩していく。
クリスとサキがウェンツ達の鬨の声を聞いて即座に広域魔法を唱える。
第3軍の先頭に爆音が鳴り響きキノコ雲が上がった。
そして次々とキノコ雲が上がり続けた。
そしてケーナとマリカはキノコ雲から逃げ出していく第3軍の兵達に数万の矢の雨を降らせた。地面は矢によって針山のようになりそこにいた兵士はハリネズミになった。
2人の攻撃はまだまだ続く。
そして王国第3軍の中央にキル達9人が突っ込んでいった。
「次元斬!」「鎌鼬!」「無限突き!」「シールドバッシュ!」
「飛竜拳!」「斬鉄剣!」「空間斬り!」「千斬剣!」「穿通牙!」
9人の神級王級冒険者がアーツを使いながら一騎当千の働きで王国兵を薙ぎ倒していく。
「ベルゲンダイン様お逃げ下さい!前から敵が迫っております」
ピカードがベルゲンダインに逃亡を促した。
「う、う、後ろにも敵はおるようじゃぞ!後ろに逃げて良いのか?」
ベルゲンダインも焦っていた。
「とにかく後ろに!前の敵はすぐそこに来ております!」
ピカードに引かれてベルゲンダインも後ろに逃げ出した。
「いたぞ!あれがベルゲンダインだ!」
グラの声がベルゲンダイン発見を知らせる。
「あいつね!」エリスが叫んだ。
「次元斬」
キルの放った次元斬がベルゲンダインの近くの兵を切り飛ばして行った。
「ヒエー!」ベルゲンダインが危なかったと声を上げた。
グラがピカードに斬りかかりピカードはグラの剣を受けて吹っ飛んだ。
ホドも周りの兵を切り伏せてベルゲンダインの近くに寄ってきた。
ユミカが飛竜拳で近くの兵士をまとめて吹っ飛ばす。
キルも流水乱舞で周りの兵を切り倒してベルゲンダインの逃げ道を塞いだ。
ベルゲンダインが覚悟を決めて剣を抜く。
「私とて剣聖王と呼ばれた男、簡単に獲れると思うなよ!」
ベルゲンダインが囲んでいるグラやホドに睨みをきかした。
グラとホドがベルゲンダインを前後から挟み込む。
グラが斬りかかり続いてホドも斬りかかる。
ベルゲンダインが剣で避けササと移動して逃げようとするがその先にはキルがいる。
どこに行っても逃げ場はない。
周りではロムやマリカ、ユリアが兵士をどんどん倒している。
助けが来れるはずもなさそうだ。
ベルゲンダインがキルに斬りかかりキルはその剣撃を弾き飛ばした。
後退りするベルゲンダイン。
グラの剣が横一閃に走りベルゲンダインの脇腹から血飛沫が飛んだ。
「グハ!」
苦痛に顔を歪めながらもグラに剣を向けるベルゲンダイン。
「最後は1対1で相手をしてやるよ。」
グラがキルとホドに手を出すなと目配せをした。
「フン!舐めるなよ!」ベルゲンダインがグラに切りかかった。
グラがベルゲンダインの剣をすり抜けて剣を薙ぐ。
ベルゲンダインの腹から多量の血飛沫が飛んで口からも血を吐いた。
次の瞬間後ろに回ったグラが首を切り落とした。
キルがベルゲンダインの首を拾い高く掲げる。
「敵王ベルゲンダインを討ち取ったぞ!」
グラが勝ち鬨をあげクリスやサキ達が攻撃を続けながらフライで空に上がった。
グラ達はウェンツ達との合流を目指して軍の後方の敵を掃討し始めた。
「ベルゲンダインを討ち取ったぞ!」
何度も勝ち鬨をあげながら敵を斬りウェンツ達と合流すると山道方向に引き上げる。
残された王国兵はヘナヘナと腰を落としキル達を追ってくるものはいなかった。
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