235 対緑山泊討伐軍 5

キル達『15の光』の13人が帰還すると緑光山軍では歓喜に包まれた。

立ち上るキノコ雲を見た兵達が勝利を確信していたのだ。

事はそう簡単ではないのだけれど。


「ご苦労様でした」

ゾルタンがキル達をねぎらった。


その後緑光山軍は次の作戦に移った。


「明朝再度上空からの爆撃と共に全軍で敵本陣を突く。

初めに今日同様上空からの爆撃を始め爆撃で混乱しているところにウェンツ率いる騎馬隊200を先頭に突っ込む。

続いて歩兵部隊も後を追う。

爆撃隊が敵の上空から爆撃を敵最深部にまで行い十分に相手を混乱させたのちウェンリー、ボルタークの捕獲作戦に移行してもらう。

ウェンリーにはグラ、ホド、ロムの3人で、ボルタークにはキル、エリス、ユリア、ユミカ、ルキア、モレノの6人で必ず生きた状態で捉えて欲しい。

クリス、ケーナ、マリカ、サキの4人は爆撃を続行してくれ。

全軍は敵軍を突っ切ったのち紅月山を攻めている5000の後方に陣を引く。

以上だ。良いな!」


ジルベルトが作戦を一気に告げた。


「「「ハイ!!」」」




    *  *  *



明朝作戦は発動された。


キル達13人はフライで高高度に駆け上る。


王国直轄軍は2度目の爆撃を体験したのだった。


王国兵は初回の経験もあり初めから逃げ腰だった。


民兵や冒険者の傭兵は命をかけるほどの忠誠心はまったくない。

爆撃音を聞いたその時から後方の兵までが持ち場を離れて離散し始めていた。


爆撃の続く中、「戻れ!戦え!」職業軍人の王国兵が叫ぶが逃げる兵の流れは変えられない。


そこにウェンツ率いる騎兵200が突っ込んできた。


騎兵200に対して組織だって反撃する部隊はない。

逃げ惑う敵兵を切り裂いていく騎兵200。

その後方から歩兵隊2800が雪崩れ込む。


もう王国直轄軍は四散する人の波以外のものではなかった。


押し止まった騎士達が打たれていく。


その中で気を吐く2人の男がいた。ウェンリーとボルタークだ。

そこだけが緑山泊軍を撃退している。

一騎当千の強者に一般兵では相手が務まらない。


上空からこの2人はすぐに識別ができた。

グラ達がウェンリーの、キル達がボルタークの捕獲を命じられている。


ウェンリーを取り囲むようにグラ達3人が地上に降り立つ。


ウェンリーはすぐにグラ達3人が神級レベルにあることに気づく。


3対1ではぶが悪すぎる。

1対1で互角の相手達を3人相手にしなくてはならないとは……


「降伏してくれるとありがたいんだがね」グラが剣を向ける。


「国王はこの敗戦の罪を問わないと考えているのか?2万の軍を率いながらこの大敗じゃ。君は王国内での地位を失い牢に繋がれるじゃろう。」

盾を構えるロム。


「確かにあの王ならそうするかもしれないな。しかしまだ別働隊が残っている」

ウェンリーも剣を構えて間合いを測った。


「逃さないよ」とグラ。


ホドが一気に間合いを詰め上段から切り込んだ。


ウェンリーは剣でホドの剣を受け止めた。


ホドが受け止められた剣でウェンリーの剣を押し込んでいく。


「クッ」ウェンリーはサッと引いてホドから距離をとった。


すかさずグラが斬りかかる。


「ガキーン、ガキーン、ガキーン」

グラの剣撃をウェンリーが受け止める。

そしてウェンリーは後方に飛び退いた。


「シールドバッシュ!」

ロムの攻撃を剣で受け止めながらもウェンリーは弾き飛ばされた。

飛ばされた先にはホドが待っている。


「キーン!ガキン、ガキン」

ホドの剣撃を剣で躱わす。


今度はグラが斬りかかる。

「兜割!」


「ガキーーン!」

大こな音がしてウェンリーの剣が折れて飛んだ。


「もう降参したらどうだ?」グラが降伏を促した。


「あんたはもう俺たちと同じ運命じゃ!」


「それはどういう事だ!」ウェンリーがロムの言葉に食いつく。


「今、紅月山を守っているアルベルトは元スタインブルクの将軍だったのじゃがロマリア王国との戦いに負けてその責任を取らされて牢獄行きじゃった。それを救い出したのが緑山泊じゃ。」


「俺もそうなると!」


「わかっておるのじゃろう?」


「ここで切るのも嫌だし、囚われたこいつを助けるのも二度手間なような気がするな」

グラが剣を引いた。


「フッ!……負けたよ。どうとでもしろ」

ウェンリーが折れた剣を捨てる。


「捕虜になるという事で良いんだな、ならついてこい」

グラが笑い、ウェンリーが頷いた。

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