231 対緑山泊討伐軍 1

ベルゲン王国はまた緑山泊の討伐に乗り出していた。


現在の緑山泊にはおよそ4500人の戦闘要員が居る。

緑光山3000人、紅月山1000人、元黄燐山500(現緑光山)だ。


元黄燐山の500人は黄燐山の砦は壊されてしまったので今は緑光山に合流していた。


今までと違い4500の緑山泊に対して国は2万の兵を集めて殲滅する大動員をかけていた。そのために国中の貴族からも、冒険者からも中級以上で兵を集めたのだった。


まるで一国が一国を攻め取るかのような陣容といえた。


今までの兵の数とは一桁違っていたのだ。

冒険者に対しても強制依頼が発動されて基本中級以上の冒険者は参戦が求められている。

もちろん参戦しない冒険者も多数存在するし罰則もたいした事はないのだが3回以上強制依頼に参加しない場合は冒険者資格を失う。


全軍の構成は国軍(歩兵)、騎士団軍(騎兵)の職業軍人と徴兵された民兵、金で雇われた冒険者軍からなっている。


この中では職業軍人が最も強くついで冒険者、民兵は当然だが弱い。


各貴族領の兵の構成も同じだ。


王国直轄軍1万と幾多の貴族軍の2500〜800が集まって合計約1万の合わせて2万の軍で攻め寄せる構えだ。


緑山泊始まって以来の存亡の危機だった。



「王国は本気で緑山泊をつぶしに来てますね。」幹部全員が集まる中でソンタクが言った。もちろんこの場にはグラやキル達もいる。


『15の光』の13人は緑山泊でも最高戦力の一つだ。神級5人と王級8人がここまでダンジョンで研鑽を積んできた成果だった。


数十万のミノタロスを打ち滅ぼした彼らが参戦すれば王国軍を殲滅させることなど造作もない事だ。まして今はその時より数段強くなっている。


「兵の数が問題ではないですね。王国四天王剣神ボルタークが全軍の大将だという事が問題です。」ジルベルトが額に手を当てながら言った。


「騎神ウェンリーも副将として参戦しているようですしね」ゾルタンが付け加える。


「まずはこの2人を捕える事が肝心なわけですが、これがなかなか難しそうです。とは言え民兵や冒険者はできるだけ殺したくはないですしね」とジルベルト。


「拳闘王ナックルと王級魔術師のスリザリンは今回国境視察のために参加していないのが救いだな。」とウェンツ。


「この際、王国を滅ぼしてしまいましょうか?」

イタズラっぽく微笑むゾルタン。


幹部全員がゾルタンを見つめる。


「ガングルさん、あなたの本当の名前も素性もジルベルトとソンタクは知っているのですよ。もちろん私も。」


今度は幹部全員の視線がガングルに向いた。


ガングルが眉間に皺を寄せる。


「まあ、良いですしょう。ボルタークを捕らえたら、味方につけるのはあなたの役割ですよ」ゾルタンがふふふと笑った。


どうやらボルタークとガングルにはなんらかの因縁があるらしい。


「ボルタークを捕えるのはキル君に頼むのが1番良いだろう」

ジルベルトが言った。ジルベルトが言ったという事は決定と言って良い。


「わかりました。その役目俺が引き受けます」


「ありがとうキル君。それではまず先鋒として紅月山1000の指揮をアルベルト将軍とバックドカン、ソンタクとロメオに任せる。」


「うむ!」


「緑光山の守りに500を残しゼットに指揮を任せる。非戦闘員を守ってくれ」


「わかった」

ゼットが頷いた。


「残りの3000は全員で紅月山の後詰とする。臨機応変に指揮を出すからそのつもりで」

ジルベルトの言葉に全員が頷いた。


「『十五の光』の13人は上空から爆撃してもらう事もあるのでそのつもりでな!」


「「「はい」」」


「クリープは敵軍の位置情報を逐一伝えてくれ、これが一番重要だぞ!」


「任されよ!」


「それではみんな頼んだぞ。全員出撃!」

ジルベルトの指揮の元、緑山泊軍が出撃した。


一方王国軍は王国じゅうからの兵の集合に時間がかかっていた。


そのため王直轄軍1万と貴族軍5000が集結地点のルクスブルグの南西クリツバール平原に留まり残りの5000が集まるのを待っていた。


この中にはルクスブルグの冒険者群の中にあのゴリアテと『谷間の百合』がいた。

そしてこれから集まるはずの5000の中にはクリスの父親であるルビーノガルツ侯爵軍1200もいたのだった。

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