227 トラドラ防衛戦

「この先の街はトラドラだな、無事ならいいんだが?」

飛びながらグラが呟いた。


キル達は先を急いだ。


「なんだあれは!!」


キルが大声で叫ぶ。


前方の空にあまりにもおぞましい気配を感じ取ったのだ。


グラ達も感じ取ったのらしい。

全員が空中で立ち止まる。


よく見れば小さな黒い影が確認できた。

そのおぞましい気配はすっと消えて行く。


「キル君見えたかい?俺には小さな点としか見えなかったけれど」

グラがキルに聞いた。


「視覚強化のスキルを使って一瞬だけ見えました。

翼を持った犬のような奴でした。

その犬のような奴に何かが乗っていてように思ったのですが、

見えた時には消えていて本当にいたのかどうかわかりません」

キルが見えた内容を伝える。


「翼を持った犬のような魔物。それにしても恐ろしい強さを感じたな」

グラが眉間に皺を寄せる。


「確かにいたはずじゃが、どこに消えたのじゃ?」


「その場で消えましたよね。飛び去った感じではなかったと思います」


「別の世界に移動したのかしら」

とサキ。


「そうかもしれないな」

グラがサキの意見に賛同した。相変わらず厳しい顔をしている。


「どうしますか?逃げた奴らよりミノタロスがトラドラまで達してしまったかが心配ですが?」とキル。


「奴がいつ何処から現れるかわからないが先を急ぐぞ、突然の攻撃には注意しろ」

グラが決断して前に進むことにした。トラドラが心配だ。


先を急ぐとミノタロスの先頭が見える。


「先頭から殲滅してトラドラに行かせるな!」


クリスがファイヤーウォールを唱えてミノタロスの行く手をふさぐ。


ケーナとマリカが範囲攻撃で万単位の矢を降り注がせる。


サキも爆裂魔法を唱える。

「@#¥##-*¥%/*-¥/:エクスプロート」


爆発と共に全てが焼き尽くされクレーター状の穴が残った。


キルは風魔法のサイクロンで一帯のミノタロスを切りきざんだ。


上空からの広域魔法は一度に多くのミノタロスを倒すのには有効な方法だ。


前衛の7人はミノタロスの前に立ち塞がる。

そして押し寄せるミノタロスをバッタバッタと切り倒していった。


上空からの範囲攻撃でミノタロスの絨毯はまばらなミノタロスの行軍に変わりそのミノタロスもグラ達によって殲滅されていった。


だが数十万のミノタロスは後から後からやってくる。

何時間戦っても終わらなかった。


「一時撤退するぞ!」

グラが皆んなが疲れてきているのを察して声をかけた。


「フライで飛んでトラドラを目指す。そこで回復するぞ!」


戦略的撤退。

キル達は全員空へ逃れてトラドラを目指した。

この戦いでミノタロスの数はだいぶ減らせたはずだ。

しかしMP残量や体力の消耗を考えると戦い続けるのはもう限界だ。


トラドラ近くまで飛んでくるとトラドラの前には騎士団と冒険者からなる防衛戦が張られていた。


犯罪者のキル達は彼らと共同で戦うと言うわけにも行かないので後方まで飛び越えてから草原で野営することにする。


回復が済んだらまた前方に出て戦うつもりだ。


「だいぶミノタロスを減らすことができましたので明日にはなんとかできそうでしょうか?」


キルのその問いにグラも同意した。

「明日じゅうにはなんとか掃討したい物だな」


「それにしてもあのおぞましい奴はなんだったんじゃ。あれがこの事件の犯人じゃろうか?」とロム。


「可能性は高いですね」


「あれが悪魔かしら?」

サキが呟いた。


全員が一度にサキを見つめる。


ソンタクが言っていた悪魔の27柱の1人?


「ハハ、まさかね、冗談よ、ジョ、ウ、ダ、ン」


「いや。あのおぞましい強さは悪魔かもしれない」グラがうなった。


「緑山泊に戻ったらソンタクさんに聞いてみましょう」


「それが良かろう」




翌朝キル達はミノタロスを掃討するために再び空を飛んだ。

トラドラの街を飛び越えてミノタロスの群れの先頭に攻めかかった。


中衛と後衛は上空からの範囲攻撃でミノタロスの絨毯に大穴を開けていく。

4時間の交戦の後ミノタロスの数はそうとう減っていた。


「もうそろそろ国軍に任せても大丈夫なのではないか?」

「そうね、あとは数える程だもの、任せちゃって良いんじゃない?」

グラとサキが戦闘の終了を提唱するとホドもロムも頷いた、


大人達の判断に従ってキルと少女達も一息をつく。


「よし、この辺にして、緑山泊に帰るよ!」

グラの号令の元皆んなは緑山泊に向かって飛んで行った。

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