225 魔王の軍団
緑山泊 天然の要害に守られた別世界。
そこには訳ありな者達が集まっていた。
キル達が身を寄せてもう3ヵ月、春の足音が近づいていた。
「トリンドル近くの大草原でミノタロスの大量発生が起きているそうですよ。皆さんどう思われますか?」不死身のゾルタンが緑山泊の幹部達を集めて意見を求めた。
「その話は以前にもあったなあ?」ドラゴンロードのペケが首を捻った。
「確かに、その話を聞くのは2度目だ。」「「確かに」」
トクダゼ3兄弟が頷いた。
「1度目のミノタロス大量発生を解決したのは俺たちのクランだ。原因は地中に埋められた魔石柱だった。」
グラが当事者で事情通あることを説明する。
「「「魔石柱!!」」」
驚きの声が上がる。
「キル君、魔石柱のカケラはまだ持っているかな?」
「はい。今出して見せますね」
キルはストレージから魔石柱のカケラを出して見せる。
カケラと言ってもまだかなり多量に残っている。
「これでも一部なんですけれどもね」
ストレージの中にはまだたくさんのカケラが入っていた。
ジルベルトがカケラを調べながら呟いた。
「こんな物が地中に………」
「その時は魔石柱を取り出してミノタロスを殲滅して問題は解決したはずだったのだがね」とグラ。
「何者がこんな物を……」
ジルベルトは顎に手を当てて考え込んでいる。
「その魔石柱を埋めた者はわかったのですか?」とゾルタン。
「いえ、そこまではわからなかった。手掛かりもなかったしね。少なくとも普通の人間にはできそうもないことだと思ったよ」とグラが言った。
「人族ではないと?」ゾルタンが聞き返した。
「わからないな」グラは首を横に振る。
「誰がそんな物を埋めたのかは置いておいて、現状ミノタロスが増え続けて手に負えないようだぜ」とゼット。
「そうですね、此処は緑山泊の出番でしょうか?皆さんどう思われます?」
ゾルタンが皆んなに意見を求めた。
「ベルゲン王国に解決能力は無いと?」ピンチュンが聞き返す。
「そうは言いませんが彼らに任せていては被害が大きくなるでしょうから」とゾルタン。
「『15の光』にまかせたらどうだい、一度解決してるんだろう」将軍崩れのアルベルトがグラを見る。
「それが良いでしょう。彼らなら上手くやれそうだ」とジルベルト。
「もし、魔王の軍団の仕業だとすると………」ソンタクが呟いた。
「「「魔王??」」」
「いや、なんでもない」
「魔王の軍団……ね、そんな物が本当に有るのか?」ドラゴンロードが笑った。
「ある。」不死身のゾルタンが断言した。
200年を生きるゾルタンが言うのだから本当なのだろう。
みんなの顔が凍りつく。
「心配は入りませんよ。彼らにとって人間界などは興味の外にありますから、ただ気まぐれにちょっかいを出してくるくらいな物です」
ゾルタンが静かに言って笑顔を見せる。
意味深な笑顔だ。
「グラさん達、ミノタロスを退治に行ってもらえますか?」
ゾルタンの問いにグラがキル達に目配せしてから答えた。
「はい。お任せください」
ゼペックとクッキーを緑山泊において、キル達はミノタロス討伐に出かけることになった。
久しぶりの出動にメンバー達は喜んでいるようだった。
皆んな腕を持て余していたのだろう。
ドラゴンロードが魔王の軍団に興味を持ったのだろう。
「魔王の軍団って、どんのものなんだ?知ってたら教えてくれよ!」
大教皇になり損なったソンタクが口を開く。
「教会に残された古い書籍のなかに悪魔の軍団について書かれた物がいくつか有る。
グリモアールの類だな。それによれば、悪魔の棲家、地獄は3柱の大悪魔が支配していて6柱の大悪魔がそれに従っている。その6柱はそれぞれ3柱の大悪魔計18柱を腹心として従えているがその腹心の大悪魔は20〜30の悪魔の軍団を従えていると記されている」
「ふ、ふーーん」ドラゴンロードが額からあせをかいている。
ソンタクは続けた。
「支配している3柱はルシファー、ベルゼビュート、アスタロト。6柱がルキフゲ、サタナキア、アガリアレプト、フルーレティ、サルガタナス、ネビロスと言う。」
「初めの3柱の名は聞いたことがあるな」とドラゴンロードが言った。
「今言った奴らが人間界に来たら人間は滅ぶだろう、だが来ても次の6柱くらいまでだ。その手下1人が従える軍団だけでも人族には敵わないに違いない」
ソンタクがうつむいた。
「大丈夫です。彼らにとって人族など玩具に過ぎないのですから、軍団が動くことなどありえません」ゾルタンが気休めを言った。
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