224 緑山泊へ
バンナに街に着いたのは夜8時、休む事なく街を突っ切る。
右の方には第2騎士団の本拠地があるはずだ。
騎士達にまだ動きはない。
さっさと街を抜けるキル一行。
アルバスに向けて馬車を走らせる。
夜の3時まで馬車を走らせてアルバスとの中間地点で野営をした。
人里離れた森のそばである。流石に馬を休ませる必要があったのだ。
「アルバスにも手が回ってますかね?」
「たぶんアルバスの方が危ないかもしれないな。ただ、たいした戦力はないだろうからその気になれば押し通るのは簡単だと思う」とグラ。
そうは言っても手荒な真似はしたくない。
翌日10時に出発して夕方アルバスに入った。
アルバスの警察に慌ただしい動きは見られない。
良かった。この隙に物資を調達して次の街を目指そう。
キルの足元に矢文が突き刺さる。クリープさんの矢文に違いない。
キルは矢から手紙を外して目を通した。
「第2騎士団がこっちに移動しているそうです」
キルの報告にグラとロムが眉をひそめる。
「第2騎士団とはやり合いたくないな」
「やりあえば、戦争のようになってしまうじゃろうな!」
それはキルも願い下げだ。
「急いで出発しましょう。」
物資の調達をする時間を削ってそのまま馬車を出す。
隣の街はドグリだ。
夜通し馬車を走らせるキル。
森を抜け草原を通りドグリの街へ、ドグリは小さな街だ。
今馬車を引いている馬はこの町で手に入れた馬だ。
その馬屋に行って新しい馬を調達して今までの馬を売りに出した。
また馬車を走らせるためだ。疲れていない馬と取り替えた形になったわけだ。
食事を取り、そして続けて馬車移動、テクア、そしてノルンを目指した。
第2騎士団に追いつかれてはならない。
御者をホドに変わってもらい少し馬車内で仮眠をとった。
ずっと馬車に揺られ続けているためみんな少し疲れている。
来る時はフライで一っ飛びだったが馬車だとけっこう時間がかかる。
テクアを抜けてノルンで宿をとった。
明日のためにキッチリ体を休ませるのだ。
この先にはロマリア王国とベルゲン王国の国境がありそこは空を飛んで抜けて行く予定だ。緑山泊の近くまで長距離飛行しなければならない。
馬は売却し馬車はストレージに収納しておく。
野営の時にも役に立つのだ。
その晩キル達の前にクリープが姿を見せて緑山泊に来るようにと書かれたゾルタンからの手紙を手渡された。待ち合わせ場所も記されている。
明日はその待ち合わせ地点まで飛んでいけば良い。
「緑山泊の方々には本当に世話になってなんと言って感謝したら良いかわからない」
「我々はあなたがたを歓迎します。どうか仲間になって頂きたい。我々は似たような事情を抱えているもの同士、助け合って生きていこうではありませんか」
クリープが物静かに言った。
今ではキル達もお尋ね者なのだった。
「ありがたいお言葉です。こちらからお願いしたい」
グラも神妙な面持ちだ。
「話はまとまりましたね。明日予定の場所でお待ちします」
クリープはそう言うと姿を消した。
「これからは緑山泊に住むことになるのね?」
サキがグラ達を見回す。
「そうなるな」
「じゃな」
「あなた達もそれで良いの?」
サキは今度は少女達を見回した。
「仕方ないっすね、他に住めなさそうっすし」
「そうね……」
「仕方ないわよ」「うん。うん」
「であるな!」
「そーねー」
「良いよ!」
「イイ…」
「じゃのう」
皆んな緑山泊に住むと言う。
「暇を持て余しそうね」
サキがイタズラっぽい顔でキルを見る。
「ほとぼりが冷めればどこに行っても大丈夫ですよきっと」
「空を飛べば国境も出入り自由じゃしな」とロム。
翌日、宿屋を出るとフライを唱えて空を飛んだ。
高く高く下から見ても人とは思われないような高度で国境の上を抜けて行く。
5時間ほど飛ぶと眼下に緑山泊が見えてきた。
高度を落とし約束の場所に着地した。
「なんとか無事に此処まできましたね」
キルはやっと安心できた。此処ならたぶん安全だ。
「やっぱりフライは便利だよね!」
「そうじゃな。エコフライも長距離飛ぶ時はMPの不安が減って良いぞ」
「待ち合わせ場所は此処よねえ」
「少しすれば現れるだろうさ!」
グラのその言葉に合わせたようにクリープが姿を現した。
「緑山泊にようこそ、案内するので私に着いてきてください。」
クリープが先頭に立って皆んなを案内した。
何度も何度も角を曲がり自然の迷路を踏破する。
緑山泊の本殿が目の前に見えた。
「ようこそ緑山泊へ」
不死身のゾルタンがニッコリ笑ってキル達を迎え入れた。
彼の周りには緑山泊の幹部達がいた。
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