223 裏ヤオカ流 

裏ヤオカ流、長男のヤオキとその門弟一派がそう呼ばれている。


裏ヤオカ流はヤオカ流よりも強いなどと言うものもいるが、裏の仕事(暗殺)をしている事を知るものは当事者以外はごく僅かしか居ない。


そして『15の光』がそのターゲットになってしまったのは当たり前の成り行きだった。


「ヤオタ、お前の仇は必ず俺がとってやるからな!」

兄ヤオキが涙を流した。弟子達もその姿を見、言葉を聞いている。


裏ヤオカ流が暗殺のために動き出したのだった。




コロシアムでの決闘は王都中で評判になった。

そのために身辺に王の手のものが現れるようになっていた。


「これはいかんな〜」

「思ったより有名になってしまったわね」

「早めに王都を離れるのじゃ」

グラ、サキ、ロムが危険回避が必要だと言い出した。


ホドも頷く。


『15の光』は王都を出てロマリア王国王家の手から逃れようとするのだった。


まずは南に向かう事にする。目的地はファションの聖地ファラルゴだ。

ファラルゴもローリエを取り囲むの衛星都市の一つだ。


キル達一行はファラルゴに着くと周囲を警戒しながら服を見るために大店の商会を見てまわった。


少女達もサキもこの時は危険を忘れて服をにみいっていた。


「何か来ますね!」

キルがグラに声をかける。


「うむ。かなりの数だな。」


「一戦交えることになりそうじゃな」

ロムも話に加わった。


ホドも剣に手をかけている。


「凄い殺意が伝わってきますね。これは王家の手のものではないですね」

キルが異常を伝えた。


「ロムは此処を守ってくれ、俺達3人は打って出よう」

グラの言葉にキルとホドが頷く。


店を出た3人を200人の裏ヤオカの剣士達が取り囲んだ。


「ヤオタの仇はとらせてもらうぞ!!」

ヤオキが叫ぶ。


3人は手加減無用だということを悟った。


3人は強化系のバフをかけまくる。キルはグラとホドにもバフをかけた。


手に持つミスリルの剣がMPを流されて光を増した。


「イケ!!」ヤオキの掛け声のもと200人の裏ヤオカの剣士達が3人に斬りかかった。


早さ重視の裏ヤオカ流の剣士達を3人は一刀のもとに斬り伏せていく。


ヤオタはキルを最強の敵と見てとって、高速の剣で攻撃を開始した。

キルがその剣を受け止める。


ヒットアンドアウェイの攻撃にキルも高速の移動で答える。

2つの光がぶつかり合い姿も見えずに剣のぶつかる音だけが響き続けた。


「雑魚は俺たちに任せてキルはそいつを切れ!」

グラの声が響く。


2つの閃光が辺り狭しと駆け巡った。

「カシーン!」「バキーン!」「ガツ!」

剣撃の音が続く。


グラとホドは200人の裏ヤオカの剣士達を全て斬り殺していた。

そしてキルとヤオキの戦いの行方を見守る。


「カシーン!」「ガシーン!!」「バキーン!」「ズバ!!」


ドシャット血の雨が飛び散った。


2人の動きが止まりキルとヤオキが姿を現した。


キルが剣を振って剣についた血をはらう。


ヤオキがばたりと倒れ込んだ。


「見事だ。キル」

グラがキルを褒め称えた。

ホドも頷く。


辺りは200人の死体で血の海になっていた。


「もう終わった〜?」

軽い声でサキが店から顔を出す。

まるで何事もなかったかのような平常心だ。


「買い物もいっぱいできたし、それじゃあ逃げますよ〜!!」

女達は皆たくさんの買い物を抱えスタスタと歩き始めた。

馬車の中で品定めやファションショーが行われるに違いない。

モレノがキル達に笑顔を向けた。


キルとグラとホドは呆気に取られて顔を見合わせる。


「ほら、行くぞ」ロムが3人に声をかけた。


3人は笑って女達とゼペック爺さんの後を追った。


急いで馬車に乗り警察が追いつく前にファラルゴの街をでる。


キルは馬車を最速で東に走らせるのだった。


これだけの事件を起こしたらもうロマリア中で指名手配されるのは目に見えている。

安住の地は緑山泊以外には思い当たらなかった。


犯罪者の別天地、緑山泊。


「緑山泊に行きましょう!」


キルは明るくそう言った。


「それしかあるまい。」ロムも同意する。


「仕方ないわね〜、とりあえず緑山泊に行きましょうか」

サキも納得だ。


「この先には第2騎士団の本拠地があるバンナの街がある。騎士団に気づかれないように横をすり抜けていこう。」

グラが言った。


「わかりました。第2騎士団が動き出す前にできるだけ早く抜けていきましょう」

キルは馬車馬にヒールをかけながら夜通し馬車を走らせたのだった。

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