209 買い出し
宗教国家スタインブルクからの追手を退けて今までより安全になった『15の光』だ。
ベルゲン王国のパリスにいた頃キルに接触してきたのは王国と教会の2つ。
その2つからの追手を撃退したことはこれから彼等からの追跡や攻撃が減るかあるいはなくなる可能性も考えられる。
少なくとも次なる追手が現れるまでには時間的猶予があるはずだ。
王国や教会が受けた戦力的損失は馬鹿にできないほど大きいはずだ。
これ以降も戦力的損失を出し続ける選択を彼らがするということは不合理に思える。
もっともこちらの戦力を過小評価している愚か者ならダラダラと追手をよこすかもしれない。王族や貴族の中には強欲で愚かな者がかなりいるのも事実だから先のことはわからないということか。
「キル君聞いたかい?」
「え、なにをですか?」
「新しいアルバス公爵に息子のハンカル様がなったらしい。まだ4歳だとさ」
「そうなんですか?それってどういうことなんですか?」
「つまりは別の誰かが権力を握ってるってことかな」
グラが腕を組んで難しい顔をする。
「別の誰かって?」
キルもよく分からずに質問を続けた。
「そこまで俺にも分からないんだ。そのうち色々聞こえてくると思うけど」
「あら、私聞いたわよ」
サキが2人の話に加わってきた。
「ハンカル様4歳は王都にお住まいで此処には政務官のリットン様が赴任されてこの地を治めるそうだわ。つまりアルバス領は実質的には国王直轄地のようなものになったってことね」
キルはまだピンときていない。それがどういうことなのかイメージできないのだ。
まあいいか………こういう時キルはいつも(まあいいか)で済ましてしまうのだった。
ロムも話に加わってきた。
「そのリットン様じゃが、昨日アルバスに入って政務を始められたそうじゃ。善政を敷いてくれれば良いのじゃがな」
クッキーがやってきてキルに耳打ちする。
「あの、この前ダンジョンに1月潜っていたじゃないですか?今度もそのくらい潜るんでしたら食材を買ってストレージに収納しておいてもらわないと…」
「あ、そうだね、買い出し…しに行った方が良いのかな?」
キルが尋ねると、クッキーはコクンと頷いた。
「じゃあ、今日は一緒に食材の買い出しに行こうね。肉はモーモウくらいなら狩っておくけれど?何頭くらい狩っておけば良いかな」
クッキーは少し考えてから答えた。
「皆さんたくさん食べますから20頭くらい狩ってもらえると助かります」
「わかった。じゃあ、一っ飛びしてモーモウ20頭狩ってくるから、その後ギルドによってその足で買い出しに行くってことで、準備しておいてね」
「午前中にモーモウのほうお願いしますのでお昼を食べたらお買い物ってことでお願いします」とクッキー。
「わかった。それじゃあ午後買い物ね」
キルはモーモウ狩りに出かけようとする。
横で聞いていたエリスとユリアがキルを囲んだ。
「私達もモーモウ狩りにご一緒して良いですか?」「うん。うん」
「別に良いけど」
3人は宿屋を出るとフライで飛んだ。
モーモウのいる草原で飛行しながらモーモウ狩りを始める。
エリスとユリアが剣を抜き斬撃を飛ばしてモーモウを狩る。
キルは倒したモーモウをストレージに収納した。
飛びながらの狩りはすぐに目標数のモーモウを狩り終えてギルドまで一っ飛びする。
まるでドライブ気分で狩りを終えた。
ギルドで解体と肉以外の部分の買取をお願いして、肉は後で引き取りにくる約束で宿屋に戻った。
クッキーが昼飯を作り終えていたので昼飯を食べたら買い出しだ。
「美味しいね、この料理。なんだい?」
「モーモウ肉の生姜焼きですね。この前生姜と醤油などを手に入れたので作ってみたんですけれどお口にあってよかったです」
「美味しい〜」「うん。うん」
エリスとユリアも生姜焼きが気に入ったようだ。
「買い出しで色々手に入れば料理のレパートリーが増えますよ」
クッキーがニッコリ笑う。
「そいつは楽しみだな。それじゃあ買い出しに出かけよう」
キルとクッキーは街に買い出しに出かけた。
「パン屋で焼きたてのパンを大量買いしてストレージに入れておきましょう。あとパン粉を作るための冷えたパンも買っておいてっと、それから揚げ物用の調理道具一式は金物屋、できたら調味料も買い足したいです」
クッキーはテキパキと買い物を進め、キルはストレージに収納する係だ。
「あー、お米が売ってますよ。買っていきましょう。となるとあとはお釜を手に入れることですね」
キルはよく分からなかったがクッキーの買うものをストレージに収めるだけだ。
帰りにギルドでモーモウ肉を受け取り宿屋に帰った。
これでまた1月ダンジョンに潜っても美味しい食事にありつけそうだ。
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