205 アルバス公爵ハーメルン 4

アルバスの街ではハーメルンの手のものがキル達が戻ってくるのを待っていた。


一週間が過ぎキル達が戻らないことに怒りを隠せないハーメルンだ。

「奴ら、まだ帰ってこないのか?ザパス、見かけたという報告はないのか?」


「はい。旦那様、あのもの達を見かけたという報告は上がって来ておりませんな」


「フン!つまらんな、市中に出て何か物色してこようかの。グフフフフ」

下卑た笑いをを漏らすハーメルン。


「奴らは諦めるのですか?」


「いや。つなぎよ、つなぎ。共をせよ。ザパス」


「はは!新しいおもちゃを探すということですね」

ザパスはハーメルンの後についていく。



アルバスの街を10人の兵士とザパスを引き連れて歩くハーメルン。


領主の一団が街を練り歩くと街の住人は怯える様に身を隠すものも見受けられた。

ハーメルンが町の住人に恐れられる存在であることがうかがえる。


「グフフフフ……その店に入るぞ!」

ハーメルンがザパスに指示をする。


「ハ!」


オープンテラスの喫茶店にハーメルンとザパスが入っていく。

10人の兵士は店の出入り口の前で直立して待機を始めた。


店の奥から店主が揉みてをしながらハーメルンにおべっかを使う。

「これはこれは御領主様。よくぞお立ち寄り下さいました。」


「うむ。喉が渇いておる。茶をもて!」


「はい。ただいまお持ちします。」店主が二つ返事で茶を作りに奥の厨房に戻って行った。


喫茶店には若いカップルが1組座っていた。


ハーメルンはそのカップルに目を付けていた様だ。

「グフフフフ……(なかなか良い女だな)」


ハーメルンはガタリと音を立てて椅子から立ち上がった。

「おい女、お前今笑ったな!このワシを馬鹿にして笑ったな!!」


ハーメルンが女の手を掴んで引き摺り出した。


「私は笑ってなんかいません!何かの間違いです!」

女は無実だと訴えた。もちろん彼女は無実だ。


「うるさい。誤魔化しても無駄だ!私を侮辱した罪で連行する。」


女の彼氏と思われる男がハーメルンに歩み寄って彼女の無実を訴えた。

「彼女はあなたの事を笑った訳ではないのです。きっと………グハ!」


男はハーメルンによって問答無用に切られて倒れた。

「お前は(リアジュウ)死ね!」


女の顔色が真っ青になった。店主は奥で腰を抜かして震えている。


「来い!」

ハーメルンが無理やり女を店の外に連れ出した。


「ザパス、この女を、グフフ、連れて行け」


「はい。この無礼な女は罪を償わせないと行けませんね」

ザパスが女を連行する。


「いくぞ!」

ハーメルンは獲物をとらえた獣の様に満足そうな顔をした。



「なるほど、あんたがアルバス公爵ハーメルンさんかい?ヒデーやり口だなあ!」


ハーメルンが声の方を向き直るとそこには2人の男が立っていた。


「無礼なやつだ!お前は誰だ?」


「俺は『暴れ竜』のドラゴンロード、悪事を見たらどーしても許せねー男よ。お前その女をどーするつもりだ。嫌らしい顔をしやがって!」

ドラゴンロード(ぺケ)が大声でハーメルンをなじった。

ドラゴンロード(ペケ)の横に立っているのは槍を手にしたピンチュンだ。


「無礼なやつだ、殺せ、」

ハーメルンが10人の兵士に命じた。


直立していた兵士たちがペケとピンチュンに斬りかかった。


「問答無用だなあ?10人くらいで俺達をやれるとでも思ってるのか?」


ピンチュンとペケがあっという間に10人を気絶させた。


「ザパス、やれ!!」


ザパスのパンチがペケを襲う。

ペケがザパスのパンチを受け止めて後ずさった。


「コイツは私に任せろ!」

ピンチュンがザパスに槍を向けた。


ザパスはピンチュンに拳を向ける。


特級槍使い対特級拳闘士の戦いだ。

だが戦いはピンチュンが圧倒した。


「お前の相手は俺だ、ハーメルン。」

ペケがハーメルンを捕まえて殴り始める。


「グエ!痛い!」

「オラ!!逃すかよ!」

「グホ!やめて、許して!」

「オラオラ!どうしたあ〜」

「バキバキ!やめて下さい。お願い。金をやる、金をやるから!」

「ふざけるんじゃねーぞ」


ピンチュンとザパスの戦いが横で続いていたがピンチュンの無限突きでザパスが命を落とした。


「ボコ、ボキ!おねが…グキ、う…たす…」

「バキバキ、ボコ」


ハーメルンの身体が力を失い命の火が消えた。ペケがハーメルンを殴り殺したのだ。


「急いで逃げるぞ、ピンチュウ!」

ペケがハーメルンの身体を投げ捨てピンチュウに逃走を指示する。


2人は走ってその場を離れて行った。


警官達がやってきた時には2人の姿は消え失せていた。

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